研究課題/領域番号 |
20K19751
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分60030:統計科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
黒瀬 雄大 筑波大学, システム情報系, 助教 (20713910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ベイズ統計学 / 状態空間モデル / 時系列解析 / ボラティリティ / 統計科学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、時系列データ解析で用いられる状態空間モデルで、多変量/高次元の系列を対象とする際に行うベイズ統計的推測を取り扱う。金融時系列データなどは状態空間モデルの枠組みで統計モデリングできるが、近年注目されている多/高次元系列のモデルには多数の観測されない潜在変数やパラメーターを含むため、ベイズ統計的推測を行う必要がある。この推測の性質を研究するとともに、金融時系列データを対象とする状態空間モデルのクラスと推定法を多変量/高次元データを扱いやすい形で拡張/整備し、実証分析への応用も行う。
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研究実績の概要 |
前年度に引き続き、経済/金融データ分析で頻出する非線形状態空間モデルのクラスを多変量/高次元系列データを扱いやすい形で拡張した。 金融資産収益率の時系列データは日次などの離散時間で観測されるが、その分散項(ボラティリティ)は時間変動する等の性質が知られている一方で観測はされない。分散項は実用上も重要であるため、観測時点ごとの収益率について、それに対応する分散項を潜在変数として、時系列データの統計モデルを構成する手法が提案されてきた。本年度は、この分野で代表的な確率的ボラティリティモデルとGARCH(Generalized autoregressive conditional heteroskedasticity)モデルを扱った。これらの手法は広く使われる一方で、多変量/高次元の系列を同時に扱う際には計算負荷が高くなる点がしばしば指摘されている。 また、上記のような時系列データの統計モデルに依存せずに、日中の市場資産取引価格レンジをもとにした収益率の分散項推定手法が提案されてきた。この手法は計算が容易である一方で、データに含まれるノイズが大きく扱いに注意が必要である。 それを踏まえ、上記の時系列モデルを拡張し、一変量の収益率データと日中資産取引価格レンジデータを同時にモデリングする統計手法を、計算負荷を軽減する推定法とともに提案した。株価データを用いての実証分析と併せて、より多くの情報を用いる先行研究で提案された統計モデルとの予測力比較を行ったところ、提案モデルの性能は同等以上であることを示せた。GARCH型モデルについての成果は、国際学術誌Economics Bulletinに採択されるなど、一定の評価を得ている。確率的ボラティリティ型モデルについても学術誌への投稿をしている。加えて、多変量/高次元系列モデルへの拡張も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
経済/金融データ分析でよく用いられる非線形状態空間モデルのクラスを多変量/高次元データ解析を視野に入れて拡張・開発するという目標は達成できている。一方で、多変量/高次元データへの拡張には課題を残している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までに研究した一変量モデルに基づき、主に金融資産収益率データについてその観測されない分散項を中心とした多変量/高次元時系列モデルを検討する。分散項すべてを潜在変数としてモデルに含み尤度関数の評価が難しいため、ベイジアンのアプローチを試みる。マルコフ連鎖モンテカルロ法などによる推定を検討し、潜在変数やモデルパラメーターの確率標本を多数発生させるための効率的な計算手法を開発する必要がある。また、多変量/高次元時系列モデルのベイズ推定理論についての研究も目標とする。引き続き学会や研究集会での情報収集や成果発表、論文誌への投稿を計画している。
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