研究課題
若手研究
機械学習のモデルは,既存のデータとの類似性から未知物質の特性を予測するため,一般には,学習データが存在しない真に革新的な物質の特性が予測できない.しかし,材料研究の究極の目標は,外挿的予測と発見の実現である.転移学習は、あるタスクで学習されたモデルを他のタスクに流用するための解析技術である.人間で例えにすれば,英語が上手い人(英語を学習した)は英語に近いドイツ語も勉強しやすことと同じである.本研究は転移学習の特徴を利用し,物性の関連性を転移させることによって,外挿的予測を実現する研究である.
転移学習は,あるドメインで訓練されたモデルを他のドメインに適用するための機械学習技術で,訓練データが足りないタスクに対してよく使われる訓練手法である.本研究では,転移学習をマテリアルズインフォマティクス(MI)に導入し,材料データ量の少なさ問題の解消と外挿的物性予測の実現を図る.本研究は3年間行い,次の成果を得た:1)大量の訓練済みモデルを有するモデルライブラリー(XenonPy.MDL)を開発した;2)結晶系格子熱伝導率とハイエントロピー合金を巡った研究を展開し,研究成果を論文と国際会議で発表した;3)結晶構造探索の課題に適用し,従来の予測手法の性能を圧倒する予測アルゴリズムを提案した.
学術的意義としては,転移学習の技術はデータ収集に高いコストがかかる材料研究分野において必要不可欠である.本研究で挙げられたハイエントロピー合金の熱力学安定性予測と結晶構造予測の研究成果はその実例であり,小規模な第一原理計算の結果のみで高精度な予測を実現した.転移学習技術の導入は.研究の効率化と新たな技術の実現に向けた重要な一歩となった.社会的意義としては,転移学習の導入により,材料の設計や特性予測の精度と外挿性能が向上し,材料開発のスピードが加速されることが期待できる.これにより,エネルギー効率の高い材料や環境負荷の低い製品の開発が促進され,持続可能な社会の実現に寄与することができる.
すべて 2022 2021 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (5件)
Journal of Physics: Condensed Matter
巻: 34 号: 13 ページ: 135702-135702
10.1088/1361-648x/ac49c9
Advanced Materials
巻: 33 号: 36 ページ: 2102507-2102507
10.1002/adma.202102507
Physical Review Materials
巻: 5 号: 5 ページ: 053801-053801
10.1103/physrevmaterials.5.053801
https://doi.org/10.48550/arXiv.2305.02158
https://xenonpy.readthedocs.io/en/latest/
https://github.com/yoshida-lab/XenonPy
http://xenonpy.readthedocs.io/