研究課題/領域番号 |
20K19942
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分62030:学習支援システム関連
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研究機関 | 東京医療保健大学 (2022) 東京女子医科大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
楠田 佳緒 東京医療保健大学, 医療保健学部, 助教 (00780131)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | RFID / 手術器械 / 器械出し看護師 / 医療安全 / RFIDタグ / 学習支援 / 看護支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、看護技術評価の可視化と定量評価を実現するため、看護教育モデルの構築とモデル因子の最適化を行う。方法として、手術器械トレーサビリティシステム等のマルチデバイスによって手術工程を自動特定し、技術習得へ強く影響する最適因子を導き出すことで看護教育モデルを提案する。本研究成果により、看護技術モデルを評価指標として可視化でき、看護養成校や医療現場において効果的な教育フィードバックが可能となる。
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研究実績の概要 |
治療・診断技術の発展に伴い,医療機関には最先端医療機器が導入されている.一方で,看護業務や看護教育は未だにアナログ情報や経験的裁量に依存している.特に,外科手術の看護技術はその特殊性から熟練看護師による直接指導が行われており,定量評価に基づく教育指導は行われていない.本研究の目的として,看護技術評価の可視化と定量評価を実現するため,看護教育モデルの構築とモデル因子の最適化を行う.方法として,手術器械トレーサビリティシステムや動画像記録装置等のマルチデバイスによって,手術工程を自動特定する.これらの情報から,技術習得に強く影響する最適因子を導き出し,外科手術領域における新しい看護教育モデルを提案する. 本年度の目的として,(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発と看護教育モデルの因子抽出,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした.成果として,(1)では手術器械情報を取得するため,情報取得用アンテナの整合回路基板設計,および,基盤化した整合回路のインピーダンス調整を行った.(2)では,手術器械のリコールが生じたときに正確にトレーサビリティができるアプリケーションを開発し,臨床現場において有効性の評価を行った.操作性評価の結果として,RFIDタグ付き手術器械の1セットの平均登録時間は64 ± 9秒(熟練者)だった.安全性評価の結果では,感染疑いのある手術器械の検索にかかる総平均時間は32秒だった.以上より,感染患者に使用した手術器械の特定を正確かつ短時間に検索できることがわかり,手術器械トレーサビリティにおける本システムの有用性が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目的として,(1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発と看護教育モデルの因子抽出,および,(2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行うこととした. (1) マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発では,手術室内でRFIDタグ付き手術器械の情報を安定して取得するため,整合回路の基盤化を実現した.これまでは整合回路のバラつきも大きかったため,インピーダンス調整に時間がかかっていた.本成果により,整合回路の調整を安定して行えると考えられる.アンテナ部に関しても基盤化を検討したが,磁界の干渉を受けやすいため,現状システムのまま銅線を用いることとした.また,臨床現場の受け入れ態勢が2023年1月ごろに緩和されたため,臨床現場での情報取得において計画よりも遅れが生じた. (2) RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価では,手術器械の安全性に関する評価を実施するため,手術器械の故障や洗浄不足等によるリコールが生じたときに,正確にトレーサビリティを行うアプリケーションを開発し,臨床評価試験を行った.安全性の評価では,本研究で開発した検索システムを用いて,これまでに蓄積したRIFDタグ付き手術器械のログ情報から「感染患者に使用した手術器械を使用した他患者ID」と「感染患者に使用した手術器械が含まれるセットID」を特定する.操作性評価の結果として,RFIDタグ付き手術器械の1セットの平均登録時間は64 ± 9秒(熟練者)だった.安全性評価の結果では,感染疑いのある手術器械の検索にかかる総平均時間は32秒だった.以上より,感染患者に使用した手術器械の特定を正確かつ短時間に検索できることがわかり,手術器械トレーサビリティにおける本システムの有用性が明らかになった.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,マルチデバイスによる手術工程認識システムの開発と,RFIDタグ付き手術器械の安全性やコストに関する有効性評価を行う.本研究では,これまでにマルチデバイスの整合回路等の基盤化を実現したため,今後は銅線アンテナに合わせてインピーダンス調整を実施する.さらに,看護教育モデルの最適化を行うため,臨床現場での情報取得に向けた調整を行う.具体的には,新人看護師と熟練看護師の器械出し作業を取得するため,これまでに蓄積した乳腺外科手術や鼠径ヘルニア手術の器械出しデータを解析し,熟練度の指標となるその特徴量について検討を進める. さらに,器械セットの最適化について改善活動を実施し,手術器械のコスト削減や,再利用の作業負担の評価を行う.2022年度に,セット改善活動後3年間分の蓄積データを取得したため,RFIDタグ付き手術器械のシステムを用いた改善活動の効果を評価する.これらの研究成果をまとめ,学会発表・投稿論文として公表を予定している.
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