研究課題/領域番号 |
20K19959
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
|
研究機関 | 気象庁気象研究所 (2022) 慶應義塾大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
岩田 歩 気象庁気象研究所, 気象予報研究部, 研究官 (30827340)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 氷晶形成 / 表面積 / 野外観測 / エアロゾル・雲相互作用 / 粒子化学成分 / 個別粒子分析 / 気候変動 |
研究開始時の研究の概要 |
地球温暖化に伴う気候変動の影響が顕在化する昨今において、その予測に不確実性を及ぼす大きな要因の一つとして雲中の氷晶形成における理解の遅れが挙げられる。しかしながら、粒子表面形態の情報は連続的かつ浮遊させた状態で正確に測定することが難しい為に、とりわけ実大気粒子における氷晶形成能力の評価に不確実性を及ぼしていると考えられる。本研究では粒子表面形態と氷晶形成の関係性を明らかにする為に、従来の問題点を解決する粒子表面形態測定法と捕集試料の分析、さらには同一粒子における双方の詳細な個別粒子分析を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究課題では実大気粒子の氷晶形成に対する粒子物理化学特性、とりわけ粒子表面積濃度との関連性を明らかにする。本年度は、昨年度までに都市域(横浜市)と遠隔地(石川県珠洲市)において捕集した実大気粒子試料の氷晶核濃度の測定、粒子化学成分(金属成分・水溶性イオン成分・炭素成分)の測定を引き続き行った。さらにそれぞれ氷晶核濃度を測定した試料を加熱処理することで、氷晶核濃度に深く関連が指摘されており、さらに加熱によってその氷晶核能を失活させる生物起源粒子の影響を明らかにすることを試みた。また、測定された粒子化学成分についてはその発生源を分類するために、因子解析を行うことで化学成分結果の明確化を実施した。 2020年10月から2022年2月までのサンプリング期間において、氷晶核濃度の地点ごとの季節的な違いは顕著ではない一方で、都市域で採取された試料は遠隔地に比べて、特に-15~-10℃の温度範囲において高い氷晶核濃度が測定された。また都市域の上記の温度範囲においては加熱処理によっておよそ75%以上の氷晶核が失活した。遠隔地で捕集された氷晶核のおよそ40%が失活するのに対して、地域間の顕著な違いが明らかとなった。 一方、測定された氷晶核濃度と化学成分の相関では、加熱処理後の氷晶核濃度は、-20℃以上の温度範囲においてAl・Si・Feなどの鉱物成分と強い相関関係にある一方で、-15℃以下の加熱処理前の氷晶核濃度は、これらの鉱物成分との相関関係は地点に関わらず弱くなり、多様な成分、発生源と比較的弱い相関を記録した。 これらの結果は、地点間の違いはあるものの、特に都市域の-15℃以上で活性する氷晶核の多くは生物起源粒子の影響が大きいことを示唆し、さらにこれらの生物起源粒子が鉱物粒子と類似して変動している可能性が考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染拡大や代表者の所属変更に伴い、粒子捕集装置のメンテナンスやいくつかの測定において検討の必要性に迫られた。現在は新型コロナウイルス感染拡大防止措置の緩和、異動所属先での測定体制の確立、研究協力者の協力の下での測定環境の維持により、本研究課題遂行に対する問題はおおむね解消されたものの、本年度はそれらの体制構築により課題遂行にやや遅れが生じた。そのため現在までの到達度を「やや遅れている」と判断し、さらに事業期間の延長を申請し、承認された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、特に粒子化学成分との強い相関がみられなかった-15℃以下の温度範囲において、粒子物理特性、とりわけ粒子表面積濃度との関連性について解析および考察を進める。また、測定における正確性の検証やさらなる改良についても検討を続ける。
|