研究実績の概要 |
令和5年度は、アルコキシ基中のアルキル基として分岐アルキル基を導入し没食子酸から2段階の反応により得られる2,3,6,7-テトラアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Gモノマー)を用いた各種ポリエステルの合成と各種物性解析、α-レソルシル酸から2段階の反応により得られる3,7-ジアルコキシ-1,5-ジヒドロキシアントラキノン(Rモノマー)の合成条件最適化および各種ポリエステルの合成条件検討を行った。 Gモノマーを用いた全芳香族ポリエステルでは、これまで結晶構造を形成しない液晶性全芳香族ポリエステルのみが得られたのに対し、分岐アルキル基としてネオペンチル基を導入したGモノマーと4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルから成る全芳香族ポリエステルにおいて結晶構造を有することが示唆された。また、導入する分岐アルキル基の分岐位置が奇数の場合に液晶構造形成の阻害が見られた。これは、アントラキノン上の隣接位において側鎖構造が伸び切り鎖として存在する場合に立体障害を生じる位置での分岐構造導入により、高次構造形成阻害が可能であることが示唆され、非晶性全芳香族ポリエステルの開発可能性が示唆された。 Rモノマーの合成では、Gモノマーの合成と同条件において1,5位水酸基での副反応が見られたが、反応温度を制御することにより副反応抑制を達成し、Rモノマーの合成に成功した。Rモノマーを用いたポリエステルでは、Gモノマーを用いた場合よりハロゲン系溶媒への溶解性が著しく低下したため、界面重合による高分子量体の取得が困難となり、安定して成形可能なポリエステルの取得に至らなかった。このため、Rモノマー中の1,5位水酸基に脱離基としてアセチル基を導入し、脱酢酸反応による重合条件検討を行った。
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