研究課題/領域番号 |
20K20050
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 帝塚山学院大学 |
研究代表者 |
古田 富建 帝塚山学院大学, リベラルアーツ学部, 教授 (40555299)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 恨言説 / 李御寧 / 巫俗 / 文化的ナショナリズム / コロニアリズム / 韓国文化 / 韓国的ナショナリズム / 韓国人論 / 韓国近現代史 / 韓国映画 / 韓国文化論 / 恨 / 言説研究 / 韓国新宗教 |
研究開始時の研究の概要 |
「恨(ハン)」は、韓国の伝統文化理解の上で重要な概念であるが、概念が極めて複雑だ。80年代には「恨は韓国文化を象徴するもの」という意識が韓国民の間で定着したが、現在韓国内では「『恨』は韓国文化を象徴するもの」という認識に陰りが見られる。しかし日本では依然として「韓国人は恨の民族」という見方が続いている。 本研究は「『恨』は創られた言説」という構築主義的立場を継承し、「恨言説がいかなる過程を経て形成され、どのような社会的背景の中で多種多様に変容・浸透したのか」という問いを前提に、植民地解放から2000年までの韓国の文化的ナショナリズム、アイデンティティの一抹を明らかにしていくことを目的とする。
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研究実績の概要 |
「恨(ハン)」は、韓国の伝統文化理解の上で重要な概念であり、80年代には「『恨』は韓国文化を象徴するもの」「民族固有の心性」という意識が韓国人の間で 広く定着したものであり、本研究は「『恨』は創られた言説」という構築主義的立場 を継承し、「恨言説がいかなる過程を経て形成されたのか」という問いの元に、今年度は1本の論文と1本の学会発表を行った。 今年度の研究成果は韓国における恨言説の形成に重要な役割を果たした戦後の文学者李御寧の恨言説を論文としてまとめた。恨が民族的なアイデンティティーとして理解されるようにあったのは、文学者李御寧のエッセイの影響力が大きい。李御寧は70年代に「恨とうらみ」「解しの文化」という2つのエッセイを執筆したが、2つのエッセイの恨のイメージは大きく異なっていた。「恨とうらみ」は日本語で書かれたエッセイで、恨は「解けない情恨」であり高尚なものである。そしてこのイメージは日本社会に定着した。「解しの文化」では韓国で最初に発表されたが、恨は解決すべきであり、韓国社会はそれを解いてきた文化であると述べている。 もう一つは韓国朝鮮文化研究会のシンポジウム「巫俗(シャーマニズム)・迷信再考」において「巫俗的キリスト教再考」という発表をおこなった。発表は恨とも関連が指摘されている民俗宗教「巫俗」の要素を取り込んだ韓国キリスト教の言説史を整理しながら、新しく修正した「儒教と巫俗の二重構造論」を図式的なモデルとして修正しながら用い近現代の韓国キリスト教団体の新しい理解を試みようとした。本発表には恨思想を教義の中に深く取り入れているキリスト教系新宗教の統一教も考察対象となっている。 今年度は今までの恨に関する研究業績を書籍としてまとめる作業も行った。成果物の出版は23年5月を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナという状況が研究課題をこなすためにマイナスとなった。渡韓しながらの資料収集が春休みには実施できたが、約3年間渡韓しての活動が不可能であったため、大幅な遅れが出ている。延長をした今年度は長期休暇に渡韓に行き研究成果を挙げられるように努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
渡韓の資料収集に関しては収拾のめどが立っているが、調査対象の教団のフィールド調査に関しては、社会情勢の変化により厳しい状況となっており、どの程度実施が出来るかがかなり不透明である。フィールド調査が出来ない状況で可能な研究手法やテーマを検討しつつ成果を上げていきたい。
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