研究課題/領域番号 |
20K20053
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 東京外国語大学 (2022-2023) 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 (2020-2021) |
研究代表者 |
片岡 真輝 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (40744040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | フィジー / 民族関係 / 植民地記憶 / 被害者記憶 / トランスナショナル・メモリー / 集合的記憶 / 多人種主義 / 先住民 / インド系フィジー人 / 記憶の政治 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、集合的記憶がフィジーの民族関係をどのように規定してきたのかを明らかにすることを目指す。特に、政治エリートや市民社会などの社会的影響力の大きいアクターがどのような記憶を生産し社会に広めてきたのか、そして、それが民族関係にどのような影響を与えてきたのかを明らかにする。本研究では、フィジーにおける現在の集合的記憶のみならず、集合的記憶が歴史的にいかに変化してきたのかも射程に入れている。記憶が変化してきたプロセスや変化をもたらした当時の社会背景を明らかにすることを通じて、現在の集合的記憶が民族関係に及ぼす影響を歴史的な文脈から理解することが本研究の目的である。
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研究実績の概要 |
国際的な「記憶のレジーム」とフィジーのローカル・レベルでの記憶の表象のされ方の関係についての分析を進めた。これまでの記憶論における先行研究のレビューから、トランスナショナルなレベルで形成される植民地支配や過去の戦争に関する記憶が西洋を中心に構築され、それが非西欧社会に伝播するルートが一般的なグローバル・レベルでの記憶レジームの形成過程であることが分かった。一方、トランスナショナルなレベルで想起される集合的記憶がそのままの形でローカルの記憶として定着することはなく、その国や社会における政治的関心事項や規範によってローカライズされているとも考えられる。そのようなローカル性を考慮した研究が近年増えていることが分かった。 本研究でも、いかに植民地期の歴史がフィジーで表象されるかはフィジー固有の文脈によって理解されるべきであるとの認識のもと、国際的な規範に基づく植民地記憶がフィジーでどのように解釈されてローカライズされているのかを分析した。その結果、フィジーでは、民族関係を改善させる目的で国際的なレベルで形成された植民地記憶が利用されていることが分かった。 また、集合的記憶の中でも特に社会に定着しやすい記憶として被害者としての記憶に着目し、被害者記憶がいかにフィジーの民族関係に影響を及ぼしてきたのかの調査も進めた。具体的には、フィジーで民族共存のためのキー概念になってきた多人種主義という概念について、フィジーの主要民族である先住民系とインド系が持つ固有の被害者記憶がいかに多人種主義概念に影響を及ぼし、今日の民族関係を規定しているのかを調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進んでいる。フィジーの民族関係を民族としての集合的記憶の観点から分析するという本研究テーマに関しては、当初予定していた調査や分析を行うことができている。コロナ禍にぶつかってしまったためにアーカイブ調査など、フィジーで行う予定だった調査が当初よりも遅れているが、二次文献の調査である程度の傾向は掴むことができている。 2023年度には英文ジャーナルに一本の論文が掲載された。また、日本語ジャーナルへの論文の掲載も決定した。研究発表としては、International Political Science Association (IPSA)における研究大会とオンラインで開催したセミナーで発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2023年度が最終年度となっていたが、研究成果のまとめと研究発表の準備のため、一年間の延長をしている。延長の一年間では成果の執筆やそのためのフォローアップ、研究成果の発表、現地への還元を目的とした活動を行う予定である。フォローアップでは、これまでの調査で得られたデータを必要に応じて精緻化したり多角的なデータで補強したりする。そのために、アーカイブ調査や専門家・実務家へのインタビューを行う。成果としては単著の出版に向けた執筆作業を進める。
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