研究課題/領域番号 |
20K20057
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 聡子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (60845585)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 市民参加 / ボランティア / ドイツ現代政治 / 奉仕義務 / 社会的包摂 / ボランティア支援政策 / ドイツ / EU / 就労概念 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ドイツをはじめとするEU諸国において、「市民参加」、すなわち自発性に基づく利益を目的としない活動が、政策として支援されている。特にドイツで発展を遂げた政策領域として、市民参加に従事する者の社会保険や生活費を法律によって保障する「市民参加の制度化」がある。こうした政策は、雇用から仕事へと就労概念を拡張する可能性を有する一方で、雇用を中心に据えた既存の就労概念を強化する可能性も有する。 本研究は、ドイツとEUにおける「市民参加の制度化」を対象に、就労概念の拡張可能性とその要件を明らかにするものである。
|
研究実績の概要 |
本年度は昨年度得られた知見を基礎として、ボランティア支援政策における社会的包摂についてドイツを中心に分析を継続した。ボランティア支援政策を社会的包摂の一環として位置付けることについては超党派的な合意が存在し、争われることは少ない。しかし、自発的な活動を支援するための公的な制度(以下「ボランティア制度」)をめぐる2019年の法改正では、ボランティア支援による社会的包摂がきわめて多義的に解釈されている。従来、若者を対象とするボランティア制度はフルタイムでの活動が原則とされてきたが、この法改正は、育児・介護、障害や健康上の問題、移民・難民の背景をもつ場合などに限り、パートタイムでの参加を認めるものであった。 そこで、(1)先行する事例の存在、(2)「不利な状況にある若者」の包摂をめぐる議論、(3)ボランティアの「承認」を目指すロビー活動の展開、(4)奉仕活動の義務づけに対抗する議論、の4点に分けて、法改正が実現した要因を整理し、さらに、法改正プロセスにおける連邦議会での議論を分析した。 ボランティア支援政策における社会的包摂の理解は多義的であり、政党間でも、場合によっては政党の内部でも一致していない。法改正の目的は、「不利な状況にある若者」が参入しやすくなることにあったが、その効果は限定的であり、多様な関連団体の状況と、参加を希望する若者の双方に配慮しつつ、包摂的に制度を展開するには、連邦法の枠組みだけでは限界がある。ただし、こうした限界があるにせよ、ボランティアの「承認」を求める活動自体に、ボランティア個人の意識と、政治社会的な認識の双方を変化させていく可能性はある。また、全体としてみれば、ボランティア個人に対する経済的支援と社会的地位の保障、という政策の方向性は継続している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「市民参加の制度化」が、雇用から仕事へと就労概念を拡張し、誰もが生活の保障と自尊心を獲得できるような社会的包摂の仕組みとして機能し得るのか、またその要件は何か、を問いに据えている。当初は、ドイツおよびEU加盟国における現地調査を予定していたが、コロナ禍の先行きが見えず、渡航自体が不確実となり、現地調査は実現できなかった。しかし議会資料、政府公表データ、メディア報道、文献資料の収集と分析については順調に進展した。また、研究の成果は、投稿論文と招待講演を通じて発表することができた。したがって全体としては、計画はおおむね順調に進展したと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
調査方法について今後は、感染状況の安定化をみて適宜旅費を使用することも想定しているが、渡航できない可能性もあると考えている。そのため、オンラインでの専門家との面談や研究発表を継続し、併せて現地の方からの協力を得て追加資料を収集し、適宜オンライン・インタビューを実施することにより、研究成果の公刊に向けた準備を進める。
|