研究課題/領域番号 |
20K20087
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80020:観光学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
西川 亮 立教大学, 観光学部, 准教授 (70824829)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 温泉地 / 廃業 / 旅館 / ホテル / 観光 / 廃業旅館 / 空き家 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国の温泉地には、観光需要の低迷により廃業した宿泊施設が廃墟化して残存している。温泉地の空間的魅力の向上や活性化を図るためには、民間企業による旅館再生や、それが望めないような宿泊施設に対する行政や観光関連団体による政策が求められると考えられる。 そこで、本研究では廃業宿泊施設に対する介入がなされている温泉地を対象に、そのプロセスを明らかにすることを目的とする。具体的には、どのような経緯、主体、方法によって、廃業宿泊施設に対応したのかを明らかにする。それによって、廃業宿泊施設問題の解決に向けた方法論や技術的・計画的手法を明らかにする。
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研究実績の概要 |
2022年度は主に次の研究に取り組んだ。 1)帝国データバンク提供の全国の廃業旅館・ホテルリストをもとにその後の建物更新状況や空地化、活用状況を把握した。その結果、廃業旅館が他の経営者によって引き継がれ旅館として再生される事例が多いほか、建築物がそのまま放棄される事例も多いこと、廃業旅館を取り壊して公共空間や新たな商業施設等として利用される事例は全国的に少ないことが明らかになった。この状況を踏まえ、近年観光庁が観光地の廃屋撤去に対する補助メニューを用意していることの意義が認識できた。 2)また、近年、温泉地の廃業旅館や商店街の空き家・空き地再生に取り組んでいる新潟県月岡温泉及び群馬県みなかみ温泉を対象に、地域住民や旅館組合による取り組みの実態を把握した。前者(月岡温泉)については、旅館経営者たちそれぞれが個人的に金銭負担をして合同会社を設立し、空き家の所有者に自ら交渉を行い、1軒1軒を改修、土産店舗や飲食店舗へと再生している事例である。2010年代に始まり、現在まで10軒の空き家再生に成功しているが、今後は各店舗で働くスタッフの確保が困難になる可能性がある。後者(みなかみ温泉)では、廃業旅館よりも以前から商店街の空き家化が問題であった。県や町の打診でリノベーションまちづくりに着手し、現在では住民主体で取り組んでいる。空き家を活用したい人と物件所有者をマッチングさせることで空き家再生軒数が徐々に増えている事例である。みなかみ温泉では、廃業旅館の更新に観光庁補助金を活用している。いずれの温泉地も、地域住民主体で取り組めるのは小規模な空き店舗や空き家再生であり、資金的に大規模な廃業旅館の更新に着手することは不可能である。それについては国等による補助金が不可欠であるという意見で一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度はデータ分析及び現地調査を予定通り実施することができた。ただ、21年度以前にコロナ禍の影響を受けて現地訪問が進まず、全体的にはまだ調査すべき事項が残っているため、最終年度の23年度に充実した調査を実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
22年度までの調査を踏まえ、観光庁による廃屋撤去補助金の有用性が示唆された。そこで、この補助金を受けて廃屋撤去に取り組んだ温泉地を特定し、その実態を明らかにする。その他、各自治体独自の政策として、廃屋対策事業補助金を用意している自治体が少なくない。多くは住宅の取り壊しを目的としたものだが、一部の温泉地を有する自治体では、ペンションや旅館も対象となっている。そこで、この補助金の利用による廃業旅館の再生実態の調査も行う。 これらの調査結果を踏まえて、日本観光研究学会や日本建築学会、日本都市計画学会での論文発表を行う。
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