研究課題/領域番号 |
20K20094
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
張 イヨウ 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (50827730)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 内容分析 / 言説分析 / ジェンダー表象 / ファンタジーの政治性 / 女性の欲望 / フェミニズム / ファンタジー / 欲望の表象 / 理論構築 / 精神分析論 / 欲望 / ボーイズ・ラブ / セクシュアリティ / 男性性 / ポップカルチャー / ホモソーシャリティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ボーイズ・ラブ(BL)の核心をなす男性性をめぐる女性のファンタジーのメカニズムに焦点を当て、BLにおける男性性の表象の系譜を追跡することにより、男性性をめぐるファンタジーが異性愛中心主義のジェンダー構造の中にいかに存在するかという「ファンタジーの存在の論理」を解明する。その上で、さらにファンタジーとジェンダー構造の相互関係から、BLが異性愛中心主義のジェンダー構造にもたらしうる撹乱の可能性を探ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
2022年度は主にBLマンガの内容分析、及び読者の言説分析を行った。マンガの内容分析に関しては、膨大な作品群から多くの支持を得ている人気作品に、読者の好み、及び広く共有されるファンタジーの傾向が反映されると考えるため、一定の時期において普遍的に受容される作品を取り上げ、とりわけファンタジーの構造を表す媒体としての男性キャラクターの身体表現に焦点を当て、BLファンタジーの構造とその系譜を浮き彫りにした。上記の分析結果を2022年6月18日開催の日本マンガ学会第21回大会で、「BLマンガの男性キャラクターの身体描写にみる『男』同士をめぐるファンタジー」というテーマで発表した。 上記を踏まえ、ファンタジーを表す媒体としての男性キャラクターに投影される読者の眼差しを明らかにするために、インターネットでの読者投稿を取り上げ、キャラクターの身体表現をめぐる読者の言説を考察した。上記の調査結果を2022年9月18日開催のカルチュラル・タイフーン2022大会で発表した上で、「身体を語る、身体が語る:男性キャラクターの身体描写にみる『BLファンタジーの存在論』」というタイトルの論文にまとめ、『ジェンダー研究』No.26に投稿した(一次査読結果A判定とB判定、2023年4月時点提出済の修正稿再査読中)。本論文では、精神分析とフェミニズムの論点を基に、BLマンガにおける身体表現の変容と系譜、及び読者の眼差しと欲望を分析することを通じて、BLファンタジーの構造化と理論化を試みた。従来のBL研究において、男同士の親密関係への女性の「妄想」の仕組の分析はあったものの、BLを一種の作品の「ジャンル」として扱い、このジャンルにおいて共有される構造、及びこの構造が現在まで定着した系譜を明らかにし、BLを分析するための理論構築を試みたことは、これまでのBL研究において大きな理論的貢献をもたらしたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度まではBLファンタジーの構造化と理論構築の準備のために、主に精神分析論とフェミニズムの論点を整理してきた。これまでの研究成果を踏まえ、さらに作品分析と読者の言説分析を用いて論証することにより、理論構築と事例分析の両立を試みたのは、本研究課題の大きな前進と言える。マンガの内容分析と読者の言説分析がある程度終了した上で、2022年度末から、漫画家と読者のインタビューを開始している。これまで構築した論点を踏まえ、実際にマンガを作っている/読んでいる人々の生の声を聞くことを通じて、さらに本研究の論点に説得力をもたらすことが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は本研究課題の最終年度のため、当初予定の研究成果の達成を主な目的とする。したがって、漫画家と読者のインタビューを完成させ、これまで構築した理論と融合し、「BLファンタジーの存在論」を理論、テキスト、言説、作り手と受け手の実際の声といった次元を通じて構築することを目指す。また、BLファンタジーの存在論の系譜を浮き彫りにするという当初の研究目的に関しては、とりわけ作品の傾向、および作り手と受け手の眼差しの変容が焦点になるため、漫画家と読者のインタビューにでは、なるべく異なる年齢層の人を対象にインタビュー調査を行う。また、BLというジャンルのこれからのさらなるメディアミックス、グローバルな受容を注視しつつ、BL研究の理論枠組としての「BLファンタジーの存在論」の応用性と射程についての議論も試みたい。
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