研究課題/領域番号 |
20K20101
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鳥山 純子 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (10773864)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ジェンダー / 中東北アフリカ / フェミニズム / 植民地主義 / エジプト / モロッコ / 女性 / 移民 / 文化遺産 / 「1月25日革命」 / 民族誌 / 欲望 / セクシュアリティ / 恋愛 / 不確実性 / 「1月25日革命」以後 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、「ろくでなし」という指標を手掛かりに、2011年に起こったエジプトの「1月25日革命」後の10年に渡る女性に関わる風紀の在り方を整理し、その間の動向を分析する。「ろくでなし」を対象にするとはいえ、本研究は「逸脱研究」ではなく、「ろくでなし」という名指しが行われる状況を考察することで(何が、誰によって、どのような状況で「ろくでなし」とみなされるのか)、人々の通常と異常の線引きを捉える試みである。ただし通常や異常を実体化して描くのではなく、人々が分断線を描く行為に意味を見出し、その行為を支える論理の探求と、多様な言説や、そうした多言説間の関係性を考察することに本研究の主眼がある。
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研究実績の概要 |
2023年には、International Association for Feminist Economicsの年次大会への参加や、モロッコでのフェミニスト・アーティストとの交流を通じて、これまでの研究成果に関する意見交換を行った。なかでもモロッコにおける活動では、エジプトとは異なる形で2011年以降ジェンダー規範の改変が行われてきたこと、またその一方で、国家が積極的にジェンダー規範をナショナリズム形成の一手段として用いてきたことが確認できた。その成果については、母親と息子の強いつながりである「マザコン」をキーワードに、論文、講演会の形での発表を行った。 モロッコを研究対象に含めることによって、エジプトの事例の独自性が一層に際立つと共に、研究の射程が北アフリカに広がることになった。その成果の一つが、それぞれの国家が経験した「植民地」経験の違いであった。 ジェンダー規範を再度「植民地主義」言説の関係から考察することには重要な意味がある。なぜなら、ジェンダーが差異の政治として強く機能する中東北アフリカ地域においては、ジェンダーが未だグローバルスタンダードと固有のアイデンティティを分ける指標になり、政治問題化されているからである。ジェンダーを歴史的文脈に位置付け、中期的な歴史的視座のもとに事象を考察する試みは、19世紀後半から20世紀初頭を対象にこれまでも行われてきた。一方、21世紀の事象に対しては未だ十分ではない。この点において、近年のカルチュラルスタディーズやポピュラーカルチャーの考察とつなげた考察が有効である。 歴史的視座と現代性を失わずにジェンダー的課題とそれに挑む人々について考察する上で、近年再度高まりを見せる植民地主義、あるいは脱植民地主義の議論は欠かすことができない。2023年にはこうした視座から積極的に海外での研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は本研究の最終年度として総括ともいうべき論文の執筆を行う予定であったが、「植民地」経験という新たな視点の必要性が明らかになったため、その分野に関わる基礎的文献にあたり、十分な前提知識を身に着けることに時間を費やした。当初の計画に照らせば総括の作業に入れなかった点では遅れであるが、さらなる議論の射程を得たことで、本研究で扱う議論においては一層の深見と豊かさを手に入れることができた。 もう一つの理由は、カルチュラルスタディーズの専門家であるJanna Houwen氏とのスケジュール調整の関係で、今年度中に氏と十分な研究に関する議論を重ねることが叶わなかったことにある。Houwen氏とは2024年4月に時期を変更し、共同研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、「植民地主義」という新しい文脈のもとに、その批判的検討として現代のジェンダー的事象を扱う論文を執筆する。これは、2020年度から進めてきた本研究の総括に当たるものである。加えて、4月にはオランダのライデン大学よりJanna Houwen氏を招聘し議論を交わす他、国際ジェンダー学会で「脱植民地主義」のパネルを組み、研究成果の発表を行う。
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