研究課題/領域番号 |
20K20102
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
菊池 美名子 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 薬物依存研究部, 研究生 (80769836)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アディクション / ジェンダー / 薬物使用 / リカバリー・カルチャー / 批判的障害学 / インターセクショナリティ / トラウマ / 自傷行為 / 文化的表象 / 回復 / 文化 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、薬物に関連する様々な問題に多大な社会的関心が注がれるようになった。それに伴い、厳罰化ではなく介入による回復支援の必要性が議論されると共に、支援モデルやプログラムの開発・導入と、その評価や研究が急速に進められている。一方、それらのモデルや研究は、男性薬物使用者が主な対象とされ、特に日本では、女性薬物使用者の実態把握や回復支援のための研究は緒についたばかりである。そのため本研究は、アディクションとジェンダーの相互作用の観点から、(1)女性の薬物使用経験の実態を質的研究により明らかにし、(2)それらをふまえた「支援」や「回復」のあり方について学際的検討を行うものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、女性アディクション当事者の経験、とくに回復・再生・変容に関する生きられた経験と、当事者主体の多様な臨床実践、抵抗、問題解決のあり方について明らかにすること、ひいてはアディクション当事者の回復・再生・変容とジェンダー、およびリカバリー・カルチャーとの相互作用について検討しつつ、こうした女性たちの経験を語る言葉を増やすことを目的とする。これまでの研究経緯をふまえ、令和4年度は年間テーマを「アディクションのリカバリー・カルチャー」と定め、特に以下の研究活動を行った。 (1)まず、資料整理補助者と共に、リカバリー・カルチャー研究、および、薬物使用、精神障害、子育ての交差領域について、特に障害学、批判的障害学、クリップ・セオリー、マッド・スタディーズ、フェミニズム理論の学術文献を中心にレビューを行った。また、それらの知見と(2)のインタビュー調査結果とを接合しながら考察を進めた。 (2)令和2年度、令和3年度に引き続き、国内依存症女性民間回復支援施設と連携し、同施設の子育て支援プログラムの参与観察、プログラム利用者・スタッフの非構造化インタビューおよび半構造化インタビューを実施した。半構造化インタビューの内容はすべて逐語録として書き起こされ、質的データ分析ソフトにて全逐語録をコード化し、メインコードとサブコードから成るコーディングシステムを作成した。当該プログラムや当該施設のリカバリー・カルチャーに関するデータを含むコードとセグメントを分析し、全体の文脈と照らし合わせながら帰納的なテーマとパターンを抽出した。 (3)令和2年度、令和3年度に引き続き、女性薬物使用者の被処遇/介入経験に関するインタビュー調査データについて質的分析を行い、英語圏における批判的薬物研究、インターセクショナル・フェミニズム等の理論を援用しつつ考察を行った。国内学術誌に論文を投稿し、採録された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、「研究実績の概要」に記したように、相互に関連する複数の研究調査を柱としている。そのいずれについても、新型コロナウィルス感染症の影響を受けた何らかの計画変更を伴いつつも、順調に進展した。(1)に関しては、令和3年度に引き続いてコロナ禍の影響もあり、オンラインデータベース利用を中心とした先行研究のレビューを実施した。令和2年度から令和3年度の研究活動を通じて、重点的なレビューを要する領域が明らかになり、令和4年度は当該領域について特に英語圏の先行研究を中心としたレビューを実施したが、国内で共有されていない人文社会科学分野の重要な知見を得て整理することができ、実り多いものとなった。 (2)に関しては、国内依存症女性民間回復支援施設の研究協力により、当初の予定を繰り上げて、同施設の子育て支援プログラムを中心に調査を進めた。当該プログラムおよび当該施設のリカバリー・カルチャーに関するインタビュー調査や、調査結果に関して、子をもつ薬物使用者の子育て関連領域やリカバリー・カルチャー研究に関するレビューをふまえた考察も、一部前倒しする形で実施した。 (3)に関しては、投稿論文が採録され、順調に進展した。以上を総合して、現在までの進捗状況は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、主に、国内依存症女性民間回復支援施設の研究協力を得て、追加のインタビュー調査と、引き続き参与観察を実施する予定である。新型コロナウィルス感染症の感染拡大状況を考慮しながら進行し、もしも対面のインタビューが難しい場合にはオンラインでのインタビューに切り替えるなどの対策を講じることとする。そこで得られた結果と、先行研究レビューの結果をもとに、当該施設とその母子支援プログラムのリカバリー・カルチャーについて検討する。令和5年度は最終年度にあたるため、本研究プロジェクトで得られた結果をもとに研究協力者(当事者、関連諸領域の研究者、臨床家、活動家ら)との学際的な理論的討議や事例検討を行い、それらをふまえてアディクション当事者の回復・再生・変容とジェンダー、およびリカバリー・カルチャーとの相互作用について研究成果をとりまとめる。研究成果は報告書として発表するほか、書籍、論文、支援者や一般向けの講演等において発信し、社会に成果を還元していく。
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