研究課題/領域番号 |
20K20121
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90010:デザイン学関連
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研究機関 | 駒澤大学 (2021-2022) 東洋大学 (2020) |
研究代表者 |
青柳 西蔵 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 講師 (20646228)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 場所 / 仮想現実 / 再現 / 教室 / 遠隔授業 / 存在感 / 拡張現実感 / 仮想現実感 / 場所同一性 |
研究開始時の研究の概要 |
故郷やランドマーク等、人にとって固有の意味を持つ空間である「場所」をXR(仮想現実・VRや拡張現実・AR等の総称)によって再現する試みがあるが、これまでは場所の物質的側面である「空間」の再現のみが注力されてきた。本研究は、場所の主観的な意味や社会的活動という人的側面を再現することで、場所を、物理的には異なる他の空間へ移植できるXRシステム「場所アバタ」を開発し、ある場所が元と同じ場所であると感じられる性質、場所同一性の操作可能性を示すことを目的とする。そのために引っ越しの事例を調査し場所移行において場所同一性が保たれる過程を調べ、この知見を活かして場所アバタを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、場所の主観的な意味や社会的活動という人的側面を再現することで、場所を、物理的には異なる他の空間へ移植できるXRシステム、場所アバタを開発し、ある場所が元と同じ場所であると感じられる場所同一性の操作可能性を示すことである。 本年度は、代表者の所属大学の教室を模した仮想環境を作成し、実際にその大学と関わりの深い大学生を実験協力者として、場所同一性要因となるという本研究の仮説を検証した。 まず、仮想環境の教室を後方から黒板を見た視点の静止画を作成した。 次に、教室における主要な社会的活動は授業であることを前提に、(1)授業と関連の深い黒板を削除した画像、(2)授業と関連が中程度の机と椅子を削除した画像、(3)活動と関係のない細部の家具を削除した画像を作成し、実験協力者に閲覧させ、元の部屋を推測させ、その答えの確信度等を訪ねた。その結果、最も確信度が小さいのは(2)の教室を削除した画像であり、予想と完全に一致しなかった。その一方、何も削除していない画像よりも、(3)細部を削除した画像の方が確信度が高かった。このことは、細部まで精密に再現することはある場所の同定にはむしろ阻害要因となり得ることを示唆している。この結果は、HCGシンポジウム2022で発表した結果、優秀インタラクティブ発表賞を受賞した。 ただし、この実験では、実験協力者は、一つ場所の静止画像を加工した同じ場所を示す似たような画像について何度も判定することになった。これが実験結果に影響した可能性がある。そこで、2つの場所を対象とし、自由に物体を移動・回転できる仮想環境システム内で、参加者自身が記憶に基づいて場所を再現する実験を実施することにした。本年度はこのシステム開発までが完了した。 なお、屋外の場所の再現に関する成果として、仮想の手と地図を介して広範囲の地形を知覚できる VR システムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、場所同一性の要因と実現過程の知見を得ることを目的に、住居や職場の引っ越しを通じて場所同一性を維持した経験がある人を募集し、インタビュー調査を実施した。ところが、その後、新型コロナウイルス感染症の流行が深刻化したため、インタビュー調査を途中で中断し、年度の途中に当初の計画に再度戻した。大学での遠隔授業を実施することになった機会を活かして、学校の教室を対象とした場所アバタを開発し、それを実際の遠隔授業において使用することで評価してその有効性を示した。 次年度は、実世界のある場所を他の場所の上に再現にする混合型場所アバタの開発及び実験を実施予定であったが、実験協力者に直接来訪してもらう形式での実験が必要なため、コロナ禍が継続した状況では実施が難しかった。そのため、システム設計及び開発の段階にとどまり、実験実施には至らなかった。 当初の最終年度の本年度は、当初次年度に実施予定であった仮想現実を用いた場所アバタを用いた場所同一性要因を検証する実験を実施し、その結果を学術会議で発表することができた。しかし、当初最終年度に予定していた拡張現実を用いた場所アバタの実験を実施することはできなかったので、これを更に次の年度に実施することにし、研究期間を延長した。 最初の2年は、新型コロナウイルス感染症の流行を受けた計画の遅延や順序変更が生じたが、本年度からは必要な実験を実施できているため、全体とし てはおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本年度の実験を発展させた2つの場所を対象とし、自由に物体を移動・回転できる仮想環境システム内で、参加者自身が記憶に基づいて場所を再現する新たな実験を実施する。これについての研究発表も予定している。 また、当初の予定で最終年度に実施予定だった、1人でのデスク作業を対象とした拡張現実環境を用いて実世界のある場所を他の場所の再現にする混合型場所アバタの評価実験を実施する。 なお、場所アバタの評価や仮説検証のための実験については、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めて、適した方法で実施する。すなわち、できるだけ、実験システムを Webアプリとして実装して遠隔で参加できる実験にする。どうしても実空間の実験が必要な場合には、実験者と実験協力者の口頭でのやりとりを少なくするよう に実験の自動化を進める。
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