研究課題/領域番号 |
20K20145
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岩崎 純衣 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (60866820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 脳磁計(MEG) / メタ認知 / 行動指標 / 自閉症スペクトラム症 / 脳磁計 (MEG) |
研究開始時の研究の概要 |
メタ認知とは自身の認知状態を認識し行動を調節する認知機能のことであり、この認知機能は文章読解の熟達度や数学的問題解決力の向上などに寄与していると考えられている。本研究の目的は、自閉症スペクトラム症(ASD)の幼児がもつメタ認知の認知的・神経的特性を、定型発達児と比較することにより明らかにすることである。ASD児のメタ認知特性を明らかにすることで、ASD児の就学後の学習面における支援ための提言を行うことを目指す。
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研究実績の概要 |
メタ認知とは自身の認知状態を認識し行動を調節する認知機能のことであり、この認知機能は文章読解の熟達度や数学的問題解決力の向上などに寄与していると考えられている。本研究の目的は、自閉症スペクトラム症の幼児 (ASD児) がもつメタ認知の認知的・神経的特性を明らかにすることである。神経活動については小児用に開発された脳磁計 (MEG) を用いて検討する。ASD児のメタ認知特性を明らかにすることで、ASD児への支援や介入方の提言を行うことを目指す。 2020年度から2021年度においては、新型コロナウイルス感染拡大に伴い実験参加者を募ることができず、また2022年度の1年間においては研究代表者の出産前後の休暇および育児休業の取得により研究を中断していた。2023年度は、メタ認知が芽生えるとされる1歳半から2歳半においてMEG計測を行った。実験では、次々に場面が展開する音声つきビデオコンテンツを参加児に連続して2回視聴させた。2024年度に行う予定の分析では、聴覚野に焦点をあて1回目(予期なし)と2回目(予期あり)を比較し脳活動の違いを検討する。さらに複数の心理検査を実施しており、この心理検査のうちASD傾向の有無やメタ認知と関連する項目を抽出し、脳活動と認知・発達スコアとの関係性を検討する予定である。 またメタ認知機能においてモニタリング対象である感覚情報処理に着眼し、ASD児の睡眠との関連性を検討するため、発達検査や生活アンケートを分析、調査した。その結果、ASD児の睡眠の質には触覚感覚特性と強い関連があること、さらにそれぞれの児の認知水準によって関連の仕方に違いがあることが示唆された。本結果はASD児の感覚情報処理に関する知見を提供するだけではなく、ASD児の支援ための提言につながる貴重な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では本研究課題は完了しているはずであったが、2020年度から2021年度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い実験参加者を広く募ることができず、2022年度の1年間においては研究代表者の出産前後の休暇および育児休業の取得により研究を中断していたために、研究をほぼ進めることができなかった。2023年度は、1歳半から2歳半の幼児72名においてMEG計測を行った。さらにそのうち54名においては心理検査も行い、認知および発達指標を取得することができた。発達検査と生活アンケートを分析した研究からは、ASD児の感覚特性と睡眠の関連が明らかとなり、支援につながる貴重な知見を得ることができた。 またメタ認知の発達を考察する際において系統発生的視点からの知見は重要な示唆を与えてくれるが、本研究課題の支援を一部受けて動物(ラット)のメタ認知に関する国際論文を1本刊行した。 研究課題の計画当初に予期していなかった事由が多数発生したものの、2023年度からMEG計測を開始し、アンケート調査からはASD児の感覚特性に関する知見が得られ、着実に研究目的に向けて近づいている。そのため「おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度に行う予定の分析では、聴覚野に焦点をあて1回目(予期なし)と2回目(予期あり)を比較し脳活動の違いを検討する。さらに心理検査(m-chat, ADOS, ベイリーⅢ、日本語マッカーサー、遠城寺式乳幼児分析的発達検査)を実施していることから、この心理検査のうちASD傾向の有無やメタ認知と関連する項目を抽出し、脳活動と認知・発達スコアとの関係性を検討する予定である。 メタ認知機能におけるモニタリング対象の一つである感覚情報処理に着眼し、ASD児の睡眠との関連性を検討したところ、ASD児の睡眠の質には触覚感覚特性と強い関連があること、さらにそれぞれの児の認知水準によって関連の仕方に違いがあるという興味深い示唆が得られた。2024年度は、この研究成果を国際的学術誌に公表する予定である。 これらの知見に基づきASD児への支援や介入方の提言を行うことを目指す。
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