研究課題/領域番号 |
20K20146
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 帝京大学 (2022-2023) 東京大学 (2020-2021) |
研究代表者 |
外谷 弦太 帝京大学, 先端総合研究機構, 研究員 (70847772)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 言語進化 / 再帰的結合 / ニッチ構築 / 物体操作 / 模倣 / 道具製作 / 表象操作 / 運動制御の進化 / 大脳基底核ループ / 手続き的知識 / 宣言的知識 / 大脳-基底核ループ |
研究開始時の研究の概要 |
ヒトは他の動物に見られない、概念を再帰的に結合する能力(以下、再帰的結合能力)を持つ。この再帰的結合能力は物体操作という他の動物と共通する能力に起源をもつとする「運動制御起源説」が有力視されている。本仮説を検証するには、外的な物体操作と内的な概念操作を繋ぐ具体的な進化シナリオを提示する必要がある。 本研究の目的は、計算機シミュレーションを用い、再帰的結合能力の適用対象が外的実体から内的表象へと進化するプロセスと環境条件を解明することである。 本研究は、ヒトに特異な能力に進化的連続性をもつ説明を与えるという特色をもち、その進化シナリオの解明を通して、ヒトの創造性に関する示唆を得るという意義をもつ。
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研究実績の概要 |
ヒトは他の動物に見られない、概念を再帰的に結合し階層構造を生成する能力(以下、再帰的結合能力)を持つ。概念の階層構造はヒトの思考やコミュニケーションに特異的かつ普遍的に見られるため、この再帰的結合能力の進化を問うことでヒトという生物種の本性に迫ることができる。その仮説として有力視されているのが、物体操作という他の動物と共通する能力に起源をもつとする「運動制御起源説」である。本仮説を検証するには、外的な物体操作と内的な概念操作を繋ぐ具体的な進化シナリオを提示する必要がある。 本研究は、(1)計算機シミュレーションによる、外的物体操作と内的概念操作の転移と進化のモデル構築と、(2)動物や人の物体操作・道具製作の分析に基づくモデルの妥当性検討という、2種類のプロセスから構成される。(1)に関してこれまでに、道具の組み合わせ空間の広さと道具製作にかけられる時間の長さが、再帰的結合を進化させやすくすることがわかっている。本年度は、強化学習によって学ばれた空間探索の知識を動的計画法に類似するプランニングに転用するモデルを考案し、内的な概念操作を行えるエージェントとして実装した。また、そのような概念の組み合わせ知識が累積される文化進化モデルへの発展を見据えて、再帰的結合のシミュレーションとは別個に、文化形質が個体の社会的評価に依存して模倣される文化進化シミュレーションを共同研究し学会や論文誌で発表した。(2)動物や人の物体操作・道具製作の分析に関しては、昨年まで勧めていた運動追跡に加えて、VRを用いた道具組み合わせ課題を設計中である。仮想空間であれば、実際に道具の材料を揃えなくとも物理環境における運動疲労や記憶負荷を扱うことができ、加えて怪我の恐れも少ないと考えたためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
進化シミュレーションと強化学習アルゴリズムを用いた物体操作モデルの研究に関してはモデル構築・分析ともに概ね順調に進んでいる。ただし、コロナ禍の影響や共同研究者の長期休業などにより、シミュレーション結果の解釈やモデルの妥当性についての綿密な議論は次年度に持ち越された。延長された研究期間の中で、論文投稿やヒトを対象とした実験の実装・実施を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)については、プランニングを伴う道具製作の計算モデルに関しては論文を執筆中である。加えて、今年度進めることができた文化形質の模倣に関するシミュレーションを活用し、道具やその製作方法に関する文化進化シミュレーションを構築しようと考えている。これにより物体操作から言語進化にいたるまでの全体的なシナリオを構築する。(2)については、仮想空間内での離散的操作を対象として分析する方向で実験設計中である。
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