研究課題/領域番号 |
20K20169
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分90110:生体医工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
重松 大輝 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (50775765)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 分子動力学シミュレーション / 生体膜 / せん断流れ / 不安定性 / 分子動力学法 / リン脂質二重膜 / 破断 / 張力 / うねり / 微小孔 / 引張 / 血液脳関門 / 非平衡 |
研究開始時の研究の概要 |
外傷性脳損傷は,頭部に外部から機械的衝撃が作用した際に起こる障害で,様々な脳機能障害を引き起こす.外傷性脳損傷では,機械的衝撃が細胞や細胞間の接続関係に損傷を与えることは知られているが,損傷に至るまでと損傷から発症に至るまでに何が起こっているかは未だ明らかになっていない.本研究では,分子動力学シミュレーションを用いることで,細胞まで伝わってきた力学的な負荷が分子スケールでどのように細胞の“損傷”につながるかを明らかにする.特に,細胞膜の損傷と脳血管の内皮細胞間の密な接続の損傷に着目し,それらの力学的負荷による分子レベルでの構造変化,そして物質透過性といったマクロな物性値の変化を明らかにする.
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研究成果の概要 |
頭部に衝撃が加わった際に脳実質内の間質液に非生理的な流れが生じる.この流れが細胞膜に与える影響を分子レベルで明らかにするために,せん断流れ下でのリン脂質二重膜の分子動力学シミュレーションを行った.その結果,一定以上のせん断速度の下では,膜の構造が不安定になり,膜破断に至ることが分かった.この分子レベルでの不安定現象を引き起こす臨界のせん断速度の大きさは線形安定性解析から予想できることを示した.また,一定以下のせん断速度の下では,膜に負の張力が発生し,膜が圧縮されることが分かった.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究は,せん断流れがリン脂質二重膜に与える分子レベルでの影響を構造・力学的な面から明らかにし,理論モデルと比較することで理論的な予想の限界を示し,補間を行った点で学術的な意義がある.これらの成果は力学的負荷による生体膜の損傷というモデル化が難しかった部分について基礎的な知見を与えるもので,今後の膜損傷予測モデルの基盤になると期待される.また,近年の細胞工学技術の発展により,細胞単体や細胞組織を工学的に操作する必要性が増している.本研究で明らかにした力学的負荷と膜の関係は,外傷性脳損傷だけでなく,細胞操作時に細胞に与えられる負荷の許容範囲を力学的根拠に基づいて定める助けになりうる.
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