研究課題/領域番号 |
20K20297
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補助金の研究課題番号 |
17H06242 (2017-2019)
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 (2020) 補助金 (2017-2019) |
研究分野 |
生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石井 則行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (10261174)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2019年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2018年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
2017年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | エキソソーム / エクソソーム / 生体分子 / 細胞外小胞 / ナノコロイド / 透過型電子顕微鏡 / 動的光散乱 / 細胞外膜小胞 / 膜小胞 / エキソソーム/エクソソーム / 電子顕微鏡解析 / 電子顕微鏡 / 生物物理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、非侵襲高感度がん早期診断や薬物デリバリー技術開発から注目されているエキソソーム等の細胞外膜小胞のバイオ特性を、生物物理学、物理化学的視点からナノスケールレベルで解明する。エキソソームは細胞が放出する膜小胞の一種であり、血液や尿、唾液、脳脊髄液等の体液中に安定に存在している。病態細胞に特異的な核酸や蛋白質を高濃度に内包しているため、重篤疾患の早期発見バイオマーカーや新規治療法として、膜小胞の臨床応用への期待が高まっている。独自に開発した「生物物理学的解析に適した膜小胞の調製方法」(PCT/JP2017/013999)を基盤技術として活用し、エキソソームの生物物理化学特性を解明する。
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研究実績の概要 |
細胞が分泌する膜小胞の一種で、細胞内や細胞間の情報伝達を担うエキソソーム/エクソソームは、今やあらゆる分野で注目されている。血液、唾液、尿等の体液中に存在し、非侵襲的に検体を採取でき、有用な情報に富む。がん細胞が分泌するエクソソームには、がん促進因子が含まれる一方、癌細胞以外からのエクソソームにはがん抑制因子が含まれる場合があり、がん治療に役立てる研究が進行している。また、タンパク質やRNAを内包し、細胞の再生や修復を促進可能なため、再生医療分野での活用が進んでいる。細胞間送達機能を薬物送達に利用すれば、薬剤の標的細胞への送達を促進し薬物治療が可能になる。また、化粧品や健康食品、生物学的な研究分野で応用研究が加速している。植物では、成長やストレス応答に関わる情報を含んでおり、植物の育成や病害虫への抵抗力向上に期待されている。しかし、生体由来のエクソソームは多様であり、分離精製法の確立、構造・機能解析の技術面で課題が残されている。 エクソソームの分画・調製において、私たちは医学・生物学分野において考慮されていなかった物理化学的ポイントを指摘し、細胞外膜小胞(エクソソーム等)のインタクトな状態での分画・調製法を開発した。また、クライオ電顕法による形態・構造解明を進めるには、それに適した試料調製技術の開発が必要であった。ホーリーグリッドにより支持膜のない中空に観察対象を保持する際、フィッシュネット効果のために、小さな膜小胞の殆どはろ紙によって吸収されてしまうという課題に直面した。この問題を克服するために、撹拌式限外ろ過分離により、膜小胞を大量に調製することを繰り返したところ、膜小胞が開裂して壊れてしまうことが、電顕法による直接観察から明らかとなった。今後、実験データや有用な知見を見直し、より効果的かつ安定したエクソソームの分画・調製法が確立されることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞外小胞(エクソソーム等)を生体ナノコロイド粒子として捉えられたことは幸運であった。エクソソームは、ナノサイズのヘテロな複雑系であり、培養上清からの収量は細胞の状態に影響されるため、分離調製方法の最適化が必要であった。緩衝液の種類によっても吸着されるため、各調製ステップで動的光散乱法による粒子径分布や電顕法による実像評価から、経験的に有益なノウハウ等が蓄積できた。 近年、細胞内の会合状態等に生物学的相分離の概念が導入され、新たな地平が切り開かれている。エクソソームには、多様なタンパク質、核酸、脂質、糖鎖等が内包されているが、どのような様式で積み込まれているのか、エクソソーム単体での構造解明が課題となる。クライオ電顕法(さらに先導的な液中透過電顕観察)に適した分離調製方法の最適化を進め、解決すべき事項を整理することができた。分画調製ではショ糖密度勾配超遠心分離法が、最も信頼性が高く、ショ糖共存下でそのまま生化学分析や、室温での電顕解析(負染色法)に使用可能であった。ところが、クライオ電顕法では、ショ糖が数%以上存在するとコントラストが得られず、高次の形状・構造情報が描出できないことが分かった。また、現行のクライオ電顕法では、ホーリーグリッドを使用し、観察対象を支持膜のない中空部分、非晶質の氷中にトラップ(急速凍結)するため、余分な溶液を濾紙片で吸い取る際に、小さなサイズの膜小胞が失われてしまうことが分かった(フィッシュネット効果)。さらに、撹拌式限外ろ過を多用すると、膜小胞の生体膜に物理的応力負荷の影響により形状変化(開裂等)が確認された。 昨今、一部では、より深く分離せずに雑多な膜小胞(EVs)のままで使用することが「定説化」されつつあるが、私たちは公平な立場から研究の動向が偏向することのないよう、独自に蓄積した知見、実験データ等をまとめ、論文等の発表を急ぎたい。
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今後の研究の推進方策 |
エクソソームは有用な生物機能の宝庫であり、それらを正に手に取るような分解能で観察し解明することが究極の目標となる。生細胞がエクソソームを放出する過程を透過型電顕下で十分な解像度で動画記録できるような顕微装置の開発が必要である。その実現のために必要な克服すべき課題を整理する。また、本研究テーマを通して、現在の技術水準の分析技術等を駆使して得られたデータを見直し、エクソソームの特性の理解に役立て、蓄積した有益な知見や実験ノウハウ等を発信していく。 一方、International Society for Extracellular Vesiclesは、2018年にEVs研究のガイドライン改訂版を発表した。ナノサイズのヘテロなメッセンジャーを扱う上で、既存の調製・分析技術では対処は容易ではなく、包括的な理解に至ることが困難であると指摘している。これは、エクソソームの定義付け等への取り組みが黎明期の2017年頃より後退しているように感じられる。 私たちは、既報データを尊重し、認め合う方向で配慮しつつ、研究者間の知識のギャップを理解して、エクソソームの真の共通理解へとつなげられるよう、公平な立場で貢献したいと思っている。このために、EVsの細胞内および細胞間の移動に関する理解において、各国の研究者間で論争の的となっている問題点等について、論点を整理し、主要な問題と克服すべき技術的課題を特定することが必要と考えている。そして、これまでに蓄積した実験データの評価/分析を加速し、提言を行うことで、エクソソーム研究の発展に貢献したいと思う。
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