研究課題/領域番号 |
20K20321
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補助金の研究課題番号 |
18H05300 (2018-2019)
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 (2020) 補助金 (2018-2019) |
審査区分 |
超高齢社会研究
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
荒田 幸信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40360482)
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研究分担者 |
高木 拓明 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10444514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,350千円 (直接経費: 19,500千円、間接経費: 5,850千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2019年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2018年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 線虫 / 老化 / 超長時間撮影 / 時系列解析 / ライフログ / 力学系 / 長時間計測 / 高時間分解計測 / Life-log / 超長時間計測 / 定量 / 寿命 / フラクタル / マイクロ流体デバイス / マイクロデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、顕微定量計測技術、マイクロ流体デバイス技術、画像解析技術を組み合わせ、線虫を個別のマイクロチャンバ内で飼育し、その活動を寿命時間(約一ヶ月間)に渡りビデオ撮影・計測する。さらに、得られた巨大な時系列を、非線形時系列解析及び力学系の理論を基礎に解析することにより、動物の寿命時間を決定するモデル(力学系の方程式)を決定する。この支配方程式を、個体システムの変数を外部から操作により検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、線虫の性成熟から死に至るまでの一生(約一ヶ月間)をビデオ撮影(5fps)し、動画から線虫の行動を計測することで、線虫の一生を支配する力学系システムを解明することである。本年度は、さらに運動軌跡の解析から、線虫の性成熟後の青年期、中年期、老年期を定量的に定義し、線虫の運動が4つの異なる状態で記述できることを明らかにした。さらに、既存のインシュリン受容体の長寿daf-2変異体では若年期がほとんどなく性成熟後すぐに老年期になる早老変異体であること。一方で、インシュリンシグナルの下流で機能するFOXO転写因子の短寿命daf-16変異体では若年期が終わるとすぐに死ぬ文字通り若死変異体であることを見つけた。これらの新しい発見により、インシュリンシグナルが老化ステージの制御のスイッチになっている可能性を見つけた。また、既存のミトコンドリア代謝の長寿clk-1変異体は、若年期、中年期、老年期は野生型とほぼ同じ割合で出現するが、それぞれの期間が長くなっていた。早老長寿daf-2変異体と併せて、線虫の長寿化戦略には少なくとも二つ:早老化により低代謝により長寿化する戦略と、生理的な老化時計の速度を遅くする戦略、があることが明らかになった(投稿準備中)。線虫では全細胞系譜、全ゲノム解読、全神経連絡の解明、など生命現象の基盤となる情報の網羅的な記述により、モデル生物の中で特異的な位置付けで生命科学研究に貢献している。今回の老化ランドスケープの解明により、この網羅的な解析を動物個体の死まで延長できたことの意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、要求性能を満たす録画装置4台を用いて、これまでに4万個体以上の一生計測に成功した。撮影した動画の解析により、線虫の老化が、複数の定常状態を遷移することで進行する状態遷移過程であることを明らかにできた。さらに合計4万個体以上の録画データから、既存の変異体の長寿戦略が少なくとも2つに分類できることを見つけた。これに留まることなく、トランスポゾンによる体細胞ゲノム破壊の可能性に注目し、解析を行うため、バイオインフォマティックス解析を行い、トランスポゾンの移動を仲介する145酵素遺伝子を同定した(論文査読中)。計測装置のスループットが高いことから、1万個体以上を用いて厳密な統計解析を行った結果、145個の遺伝子の内、rtz_LINE-5とtpz-150のRNAiにより寿命が20%程度伸びることを見つけた。トランスポゾンが動物個体の寿命を制御する新しい知見を得ることに成功した(投稿準備中)。
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今後の研究の推進方策 |
行動時系列データから、老化過程に少なくとも4つの状態があることが明らかになった。将来的には、トランスクリプトーム解析、エピゲノム解析、メタボローム解析を用いて、老化過程に存在する全状態を同定し、さらに状態遷移の全ての経路を明らかにする準びが整ったといえる。全状態と全遷移経路を明らかにすることで、線虫の老化を支配する力学系の出力の全貌が明らかになることになる。本課題で成功した計測装置を基礎にさらに装置の改良を重ね、老化ランドスケープの全貌を明らかにする。
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