研究課題/領域番号 |
20K20345
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補助金の研究課題番号 |
18H05326 (2018-2019)
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 (2020) 補助金 (2018-2019) |
審査区分 |
中区分15:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
江澤 元 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (60321585)
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研究分担者 |
松尾 宏 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (90192749)
藤井 剛 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (30709598)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2019年度: 9,880千円 (直接経費: 7,600千円、間接経費: 2,280千円)
2018年度: 10,530千円 (直接経費: 8,100千円、間接経費: 2,430千円)
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キーワード | 光子計数 / テラヘルツ / 宇宙物理観測 / 超伝導検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
光子計数技術を応用し「光子統計」という概念を宇宙物理観測手法に導入する。具体的には、天体からの光子数の揺らぎに着目し、量子光学の分野で普遍的に用いられている手法を宇宙物理学や天文学の観測に応用する。本研究ではテラヘルツ帯に着目し、低リークの超伝導SIS検出器や高速の極低温読み出し回路等を開発して光子計数技術を確立する。これにより天体からの輻射機構や物理状態を高精度で同定する新たな手法を開拓する。
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研究実績の概要 |
光子統計の概念を宇宙物理観測手法に導入することを目指して、高速の超伝導検出器を用いた高速のテラヘルツ光子計数システムを構築している。本年度は前年度に引き続き、主として極低温環境および極低温読み出し回路の開発を推進し、その成果を国際会議や国内学会にて発表した。 本研究では、これまで開発を進めてきた超伝導SIS検出器を0.8 Kの極低温に冷却し、数pAの超低リークの光子検出器として動作させる。このために、パルスチューブ冷凍機とヘリウム4吸着冷凍器を組み合わせたクライオスタットの極低温環境を構築している。本年度は0.8 K冷却系を実装し、自動制御やリモート計測環境を活用した制御システムを構築した。これを用いて制御パラメータの最適化を進め、0.4 Wと比較的能力の小さいパルスチューブ冷凍機のとの組み合わせでも、吸着冷凍器による安定した0.8 K冷却を可能にした。続いて2台の吸着冷凍器を連携させることで、長時間の極低温冷却環境が実現できることを示した。このほか、光学実験にむけて、検出器素子の改良検討、光学系や読み出し回路の設計開発も推進している。光学系については、基本原理に即した物理計算に基づいてクライオスタット内外の全体構成を設計するとともに、それに基づいて光学素子の製作も進めている。これまでにクライオスタットの真空窓や赤外カットフィルターなどを製作し、反射防止コーティングも施した。超伝導検出器出力を低雑音広帯域増幅器へ接続するにはインピーダンス変換が必要となる。本研究ではこれを2段構成の電解効果トランジスタのソースフォロワ回路で実装、0.8 Kおよび4 Kの各ステージへ分割配置する構成とすることで、0.8 Kステージへの熱負荷を低減する設計とした。初段の電界効果トランジスタの特性が読出雑音と帯域を制限するが、今後の光学実験に用いることのできる性能を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的な経済の不安定の影響をうけ、様々な資材の調達価格が高騰するなど入手に難が発生している。このため、極低温部品などをできるだけ自作に切り替えるなど、コスト削減に努める必要があった。また特殊な部材を用いる部分の設計も、R&Dによる再製作を極力減らすために、従来より入念に多角的な設計検討を進めることとなった。本研究前半部分も遅延し、補助金が研究計画後半部に繰り越された事情もあり、研究計画全体の進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
パルスチューブ冷凍機と吸着冷凍器を用いた極低温冷却系の基本的な動作は確認できた。今後は既に構築したシステムを駆使して、冷却性能の最適化をさらに進める。性能向上を目指して超伝導SIS検出器の設計改良、それに基づいて検出器を製作、評価したうえでシステムに組み込む。また光学設計を完了して実際に光学系を最終系にするとともに、読み出し回路を確立させて光子計数システムを完成させる。供給不安定や物価高騰のなか、自作や設計の最適化によりコストの低減の努力をしつつ、すでに構築した自動・遠隔制御系を駆使して性能評価の効率化をより加速する。最終的に光子統計を用いた精密測定手法の確立を目指す。
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