研究課題/領域番号 |
20K20416
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補助金の研究課題番号 |
19H05484 (2019)
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 (2020) 補助金 (2019) |
審査区分 |
中区分6:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
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研究分担者 |
広瀬 健太郎 新潟県立大学, 国際地域学部, 准教授 (90764738)
芝井 清久 統計数理研究所, データ科学研究系, 特任助教 (90768467)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2020年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2019年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 核兵器 / 抑止 / 核廃絶 / 核軍縮 / ゲーム理論 / 科学技術 / 核抑止 / 科学技術革新 / 安全保障 / 抑止理論 / 技術革命 |
研究開始時の研究の概要 |
核兵器は誰もが廃絶したいと思う一方で、核兵器を実際になくすことは簡単ではありません。例えば我が国は毎年国連で「核兵器廃絶決議案」を提出する一方で「核兵器禁止条約」には反対の立場をとっています。これは日本だけではなく各国に共有するジレンマです。核廃絶という夢と現実に存在する核の脅威から守る必要に直面した時、安全保障を確保せざるを得ない現実主義が核なき世界という平和主義に優先してしまうのです。なぜ現実主義と平和主義は両立できないのか。それは核の脅威には核兵器を使った政策しか持ち合わせていないからです。この研究は核兵器を使わずに従来のように安全を確保できる新しい核戦略をゲーム理論を使って考案します。
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研究実績の概要 |
当初の計画どおり、研究代表者である栗崎が2021年度8月からスタンフォード大学に長期滞在し本格的な研究が稼働を始めた。CISACでは、核兵器をめぐる研究者(政治学、歴史学、工学、実務経験者、技術者)が多数在籍し日々の意見交換や毎週のセミ ナーを通じて、多様な角度からの核兵器をめぐる諸問題を中心とした国際安全保障問題について議論をする機会に恵まれている。こうした中で当初の研究課題で あった「核兵器による報復攻撃に基づかない核抑止戦略」に関する理論モデルの開発に着手し、その中核となるアイディアを論文("Leadership Targeting in Nuclear Deterrence Theory: Its Ethics and Strategy")としてまとめ2022冬にスタンフォード大学で開催されたRevisiting Nuclear Ethicsと題された研究会議で報告した。その後の進展は遅れ、ここで検証しようとしている抑止戦略についての理論的な特徴の解析的な記述に加えて、技術的および過去そして現在の核保有国の核政策との比較検討といった予備的な作業に想定よりも多くの工数を要しているためである。基本的なアイディアは、昨今の科学技術の進展(精緻誘導・リモートセンシング・低火力などの革命)などと称される一連の軍事技術が、核兵器に依存しな い核抑止戦略を実現可能のものとし、従来の核戦略に伴う非人道性(大量破壊や放射能や無差別攻撃)を回避できる一方で、しかしながら従来の核戦略が達成した 政治・軍事目標を技術的には達成できることを確認しつつ、従来の核抑止戦略と同等のロバストネスとクレディビリティーを達成する数学的構造を持つこと示す ものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、当初の計画通りスタンフォード大学での研究をスタートさせ、また内部での審査を通り1年間延長し、2年間の長期滞在が許可されたこと、ス タンフォード大学における研究環境により核抑止や核軍縮についての理論的な側面のみならず実務および科学技術の双方の側面で飛躍的に情報を処理することが できていること、そして具体的な成果としての核兵器に依存しない核抑止戦略についての理論研究の方向性と具体的に解決すべき課題そのものを定義できたこと。しかし、このような好材料とは裏腹に、上記で述べた通り予備的段階の具体的な作業が膨大になっており、作業量に比べて外形的に評価可能な成果として形になっていない。
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今後の研究の推進方策 |
この研究課題の一丁目一番地である「核兵器に依存しない核抑止戦略」の理論モデルを成功裡に完結し、政治学の査読誌に投稿することを今年度の第一の目標としている。第二は、中核となるLeadership Punishment Strategyに関する理論には、解決すべき周辺的課題が複数あり、それらの分析を同時に進める必要がある。特に、(1)No First Use Policy の文脈でLeadership PunishmentがCounterforce First Strikeとして用いられないことでその信憑性を向上させること、(2)Counterforce RetaliationとCountervalue Retaliationとをスパイラルの可能性と、安定性の二つの観点から比較し、前者はPowellが1989年論文で指摘したような後に続くCountervalue retaliationの脅しの信憑性を高めるものの、Countervalue retaliationから帰結するMADが崩れる場合、スパイラルおよび安定性の二つとも瓦解することを示し、(3)また従来のMADに基づく核抑止戦略はfirst strikeがcountervalueであることを暗に想定していたものの、昨今の脅威はcounterforceの比重が高まっている。これを考慮し、first strikeがcounterforce であった場合とcountervalueの場合とで、Leadership punishment戦略の有効性を比較検討することで、「核兵器に依存しない核抑止戦略」を実現する際の問題を明らかにする。
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