研究課題/領域番号 |
20K20518
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分10:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
百瀬 容美子 常葉大学, 教育学部, 教授 (20612724)
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研究分担者 |
小圷 昭仁 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群), 総合教育学群, 准教授 (20545777)
藤木 晶子 北星学園大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (00650607)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 先天全盲 / イメージ / 運動学習 / ブラインドサッカー / 運動イメージ |
研究開始時の研究の概要 |
研究代表者は,国内外初となるナショナル水準の先天全盲選手の運動イメージ生成様態を解明し,その知見に基づく運動イメージ生成評価尺度を提出した.併せて,アスリートにも初学者にも事例的効果を示す運動指導法を作成した.研究対象者数が極めて稀少な中で進めたこれまでの研究過程で,先天全盲児者の運動学習に寄与する運動イメージ生成スキル形成の促進要因は,人生上の視覚経験の有無だけでなく,運動学習経験,イメージの感覚モダリティの活用,認知的柔軟さでないかという仮説を得た.本研究では,これらの仮説検証課題に全国規模で取り組み,先天全盲を対象とした運動学習理論の構築の一助となる知見提出を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,先天全盲選手の運動イメージ生成スキルに関する全国調査にチャレンジし,その調査結果に基づいた運動イメージ生成指導法を提出することである。 この目的達成のために2023年度には国内外初となるブラインドサッカー選手を対象とした一般化に向けた量的調査を終了するに至った。根拠は,国内外での学会発表および研究生成果の公表を経て,因子構造とその解釈,理論体系を吟味し評価を得ることに成功したからである。具体的には,50名の量的データ収集から因子構造を確認した結果,俯瞰イメージ,主観イメージ,会場イメージが抽出された。継続した一連の調査結果と吟味,評価を総合的解釈すると,視覚なしにサッカー競技を行うためには,俯瞰すること,聴覚情報を含む主観動作を把握すること,動作の起点となる会場内にある物体情報の3要素が認知的な要だと考えられた。この知見については,2023 European College of Sport Scienceでの国際公表,日本スポーツ心理学会第50回大会での国内公表を行い,国内外での成果の妥当性と普遍性を支持する評価を得た。 さらには,先天全盲児者から得た知見を踏まえて開発したイメージ生成指導法が教科横断型学習に効果を示すこと(2022年度に得た知見)だけでなく,2023年度には英語圏でも有効だと推測できる評価を得た。これは,Center on Disability Studies, UH Manoa Presents, Partner Seminarsでsimple,versatility,inclusionという評価を得たことが根拠である。こうした障害の有無を問わず汎用可能だという評価を受け,インクルーシブ教育,教科横断型学習,母国語の壁を超える心理指導法へと展開できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,(1)本研究における全国調査の部分にあたる量的調査を終了した。研究計画時には100名を超えるデータ収集を予定していたが,実際には我が国における視覚障害を有するブラインドサッカー選手数は少なかった。国内ブラインドサッカー競技では晴眼者も参加可能なためか,各チームには晴眼者を含めた人的構成になっていた。こうした現状を踏まえ,ブラインドサッカー選手とチームへの過度な負担を避けつつ,データの一般化につなげるという両面を鑑みて,50名のデータ収集を持って分析することにした。この知見については,上述の通り,2023 European College of Sport Scienceでの国際公表,日本スポーツ心理学会第50回大会での国内公表を行い,国内外での成果の妥当性と普遍性を支持する評価を得た。 そして(2)指導法の開発に関しては,(1)の全国調査と並行して,ブラインドサッカー選手のイメージ生成様態の実態に応じて開発を進めた。2023年度には,開発した指導法を国内外でプレゼンテーションし,その評価を得ることに成功した。具体的には,国外ではCenter on Disability Studies, UH Manoa Presents, Partner Seminarsであり,国内では現職教員および教職養成大学院生を対象としたセミナー,大学生を対象とした授業である。結果として,本指導法が障害の有無を問わず汎用可能だという評価を受け,インクルーシブ教育,教科横断型学習,母国語の壁を超えて展開できる可能性が示唆された。 ただし,実践研究者と現職教員とでは,指導法の実践上の困難さの認識には差が生じていため,今後の課題となった。また英語圏であるPerthの障害支援施設への公表を試みたところ理念理解は得れらたが現地導入には至らず,導入時の留意点が浮き彫りにされた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,(1)全国調査の結果を論文化する。並行して,(2)イメージ生成指導法の体系化として丁寧な説明を明記すること,介入実践の効果検証データを整理すること,及び本指導法の理論的根拠を整理することを目指す。(2)に関して,具体的には,指導法の開発にあたり2023年度まで得た重要知見である姿勢制御を取り上げた効果測定を試みる計画である。そして,現場への導入にあたっての留意点を整理する。このようなプロセスは,日本臨床動作学会,日本特殊教育学会,日本イメージ心理学会等で最終吟味する予定である。また,国際評価を得るためには,40th Annual Pacific Rim International Conference on Disability and Diversityでの公表も予定している。さらに,研究組織で駆使して国内および海外情報を得て,本研究の位置づけと価値を確認する。
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