研究課題
挑戦的研究(開拓)
X線は高い透過力を有するため、バルクに埋もれた微細構造を非破壊で可視化するプローブとして有用であり、近年、放射光の高輝度X線を活用したX線顕微法が様々な学術領域で利用されている。しかしながら、ナノスケールでの微細構造が時々刻々変化する様子を動画として捉えるX線顕微法は未だ確立されておらず、時間分解能を大幅に向上させるブレークスルーが必要であった。本研究では、未踏であるシングルナノメートルの空間分解能と数秒の時間分解能を併せ持つ放射光動画撮像法を第三世代放射光施設SPring-8で実証し、次世代放射光施設における動画撮像の革新へと繋げる。
令和4年度は、以下の2つの項目を中心に実施した。①シングルショットコヒーレント回折イメージングによる金コロイド粒子の動画撮像の実証大型放射光施設SPring-8において、三角形開口を導入したシングルショットコヒーレント回折イメージング(シングルショットCDI)による液中の金コロイド粒子のブラウン運動のイメージングを行った。直径150nmの金コロイド粒子が分散した溶液を窒化ケイ素メンブレンチップで挟みアラルダイトで接着することで封入し、試料とした。5keVに単色化された放射光X線を1辺の長さ10μmの三角形開口によって切り出し、フレネルゾーンプレートにより2分の1に縮小し、試料に照射した。そして、二次元画像検出器によって1秒露光で2000枚の回折データを連続的に収集した。回折強度パターンに位相回復計算を実行し、像再生を行った結果、金コロイド粒子がブラウン運動する様子を捉えることに成功した。②シングルショットCDI用試料加熱装置の開発シングルショットCDIによる動画撮像の応用研究に向けて、試料加熱装置の開発を行った。具体的には、MEMSマイクロヒータを搭載した窒化ケイ素メンブレンに電流を印可する加熱機構を開発した。リハーサルチャンバー内での加熱試験を行った結果、数マイクロメートルの領域を約1000℃まで加熱できることを確認した。これまでの研究により、シングルショットCDIによる動画撮像法が実証され、応用研究に向けた研究開発が行われた。今後、本手法の更なる高分解能化ならびに様々な実試料観察への応用展開が期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (3件)
光学
巻: 51 ページ: 272-272
Optics Express
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http://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/takahashi-y/html/index.html