研究課題/領域番号 |
20K20539
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分22:土木工学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野田 祐樹 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (30784748)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,220千円 (直接経費: 19,400千円、間接経費: 5,820千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
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キーワード | 振動 / 生体模倣 / 帯電 / コンクリート構造物 / 社会実装 / 金属ナノワイヤ |
研究開始時の研究の概要 |
多くのコンクリート構造物は施工から50年以上が経過し、崩落や倒壊などの対策が急務である。そのためには劣化の進捗状況を振動センサで常時モニタリングする必要があるが、既存のセンサではコストや感度の面で困難である。一方で生体の優れた聴覚構造を模倣することで高感度で低コストな振動センサを作製可能である。本研究の目的は、聴覚を司る蝸牛殻をモデルとした振動センサを作製し、これを建築物や交通インフラにおけるコンクリート構造物の劣化を診断するための振動センサとして社会実装を行うことである。作製、実装および劣化判定まで行うことで、重篤な事故を事前に把握、予防できる未来の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
振動センサを橋の橋脚やトンネルを始めとする交通インフラ構造物に設置し診断を常時行なうことで、日々進行する内部の劣化の過程をモニタリングできる。 そのためには低コスト、高精度、耐環境性能の高い振動センサが求められているが、これらの要素を兼ね備えた振動センサは実現が難しい。本研究の目的は聴覚を司る蝸牛殻をモデルとした振動センサを作製し、これを建築物や交通インフラにおけるコンクリート構造物の劣化を診断するための振動センサとして社会実装を行うことである。 本年度は、昨年度目標に掲げたチャージアンプの開発と振動センサ感度向上のための新たな電極構造の開発を実施した。 チャージアンプについては具体的には0.1Hzから10,000Hzの帯域で増幅が可能なアンプの開発に成功した。これは3チャネルの同時計測に対応でき、XYZの3次元空間の信号増幅処理に対応できる仕様とした。 振動センサの課題の一つである素子の内部抵抗の低減に取組んだ。昨年度開発した金属ナノワイヤは100%の引張ひずみに対して規格化抵抗が5%以下に抑制できるが、金属としての伝導度は一般的なバルクと比較して2桁以上悪化していることがシート抵抗計測により明らかとなった。これは電極間を伝達する自由電子がワイヤからワイヤへホッピング伝導する際に局所的な抵抗を受ける為であると推察される。そこで伸縮性を有しながらバルク金属並の伝導度を実現する為の新たなプロセスを開発した。具体的にはワイヤーワイヤ間をナノレベルで溶接する手法を開発した。これによりシート抵抗を約70%低減できることを確認した。今後プロセスの最適化を更に進めることでよりバルクの電気伝導度に近い伸縮性電極を開発し、振動センサの電極として実装する。 最終的に得られた知見を統合し、建築物や交通インフラにおけるコンクリート構造物の劣化を診断するための振動センサを完成させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度目標に掲げたチャージアンプの開発と振動センサ感度向上のための新たな電極構造の開発を実施した。 チャージアンプについては具体的には0.1Hzから10,000Hzの帯域で増幅が可能なアンプの開発に成功した。これは地震のような長周期振動からコンクリート内部のマイクロサイズのクラックを検知可能な短周期振動まで、幅広い帯域の振動を検知できることを意味する。これは3チャネルの同時計測に対応でき、XYZの3次元空間の信号増幅処理に対応できる仕様とした。 振動センサの課題の一つである素子の内部抵抗の低減に取組んだ。即ち出力インピーダンスを下げることで微弱な信号を高感度に計測することが可能になるため、内部抵抗低減は重要なプロセスである。昨年度開発した金属ナノワイヤは100%の引張ひずみに対して規格化抵抗が5%以下に抑制できるため、伸縮性のある電極材料として活用できる可能性を提案した。しかしながら金属としての伝導度は一般的なバルクと比較して2桁以上悪化していることがシート抵抗計測により明らかとなった。これは電極間を伝達する自由電子がワイヤからワイヤへホッピング伝導する際に局所的な抵抗を受ける為であると推察される。実際これら伸縮性金属ナノワイヤで能動素子の有機トランジスタを作製した結果、伸縮性に伴う機械的変形に強い素子であるものの、特性指標の一つである移動度が2桁低い結果となった。これは電極の電気伝導度がバルクより著しく低いことが原因と推察される。そこで伸縮性を有しながらバルク金属並の伝導度を実現する為の新たなプロセスを開発した。具体的にはワイヤーワイヤ間をナノレベルで溶接する手法を開発した。これによりシート抵抗を約70%低減できることを確認した。今後はプロセスの最適化を更に進めることでよりバルクの電気伝導度に近い伸縮性電極を開発し、振動センサの電極として実装する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度で開発したプロセスを最適化し、より低いシート抵抗を有する金属ナノワイヤ伸縮電極を作製すると共にこれを用いた振動センサを開発する。特に改めて有限要素法を用いたシミュレーションと作製プロセスを検討することで生体模倣型の振動センサの開発と物性評価に取り組む。さらに屋外における実証試験に備えた取り組みを行なうため、センサの温度に対する特性変化を評価する必要がある。例えば-10度から+40度の温度領域における圧電定数等の物性変化を計測する。最終的に得られた知見を統合し、建築物や交通インフラにおけるコンクリート構造物の劣化を診断するための振動センサを完成させる。
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