研究課題/領域番号 |
20K20542
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分24:航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小紫 公也 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90242825)
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研究分担者 |
中野 正勝 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 教授 (90315169)
松井 信 静岡大学, 工学部, 准教授 (90547100)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
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キーワード | エネルギー全般 / レーザー / プラズマ / 航空宇宙工学 |
研究開始時の研究の概要 |
月面における水の存在の検証と利用のために長期月面滞在が活発に議論されている.そこで、月面に大量に存在するアルミナをレーザーで直接還元し、月面基地用建築資材と生命活動に必要な酸素を獲得することを想定し、還元剤不要なレーザーを熱源とする新たなアルミ製錬法を開発することを目的とする.太陽励起レーザーを使用すれば無限に降り注ぐ太陽光エネルギーを直接利用でき、さらにエネルギー効率が高まれば 、地球上でも①二酸化炭素フリーなアルミ製錬技術として、更には②再生可能エネルギーを輸送・携帯可能な燃料に変換するエネルギーサイクル技術として、あるいは温暖化ガスを発生しない航空機・船舶用燃料としても期待できる.
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研究実績の概要 |
(1)レーザー加熱によるアルミナロッドの還元:CWレーザーでアルミナロッド前面をスキャンすることによってロッド表面の広い領域でアルミが析出するようになり、1分間でのアルミ総析出質量が2ミリグラムを上回った。水素雰囲気下とアルゴン雰囲気下で比較すると、アルミの析出形態が大きく異なり、特に水素雰囲気下では水蒸気の抜けた気泡の付近に高面積密度でアルミ粒が析出したが、アルミの総析出質量に大きな差はなかった。水素雰囲気下ではアルミナロッド内部にも気孔とアルミ析出が生じたため、アルミを取り出しにくく、幾らか計測漏れしている。単位照射エネルギーあたりのアルミ析出質量は、先行研究でのマグネシウム還元やパルスレーザーを用いたアルミ還元におけるアブレーションプルームからのアルミ回収量に比べてまだ小さく、加熱条件の最適化の余地が大きく残されている。 (2)レーザーアブレーションプルームからのアルミ回収:アルミ回収板付近での水素添加により回収量増加を試みた。水素透過性のあるパラジウム箔背面からの水素供給やプルーム側面からの水素ジェット吹付などを試みたが、水素による冷却効果が卓越してアルミの再酸化が起こり、回収量増加には至らなかった。 (3)レーザーアブレーションによる粉体アルミナの還元:水素雰囲気下で粉体アルミナを予加熱することにより、予加熱なしの場合と比較してアブレーションプルーム温度は500度上昇し、プルーム内での還元率は最大33%上昇、回収板への付着質量は2.6倍に増加した。しかしアルミ酸素比は大きく変化しなかった。水素による冷却効果が疑われる。 (4)アルミ堆積メカニズムの数値シミュレーション:分子動力学計算で得られた堆積層の中のアルミ酸素比分布を調べると、堆積層表面でAl-O結合を形成するように堆積層内部からの酸素の移動があり、高温による拡散速度の増加で顕著になることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミナロッド表面でのアルミ析出量は、スキャニングにより数十マイクログラムからミリグラムのオーダーに飛躍的に増加したことは特筆される。また分子動力学シミュレーションアブレーションによって、プルーム堆積層内での酸素の拡散の様子が明らかとなり、今後実験結果の理解が進むものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
(1)レーザー加熱によるアルミナロッドの還元:主としてレーザー強度の最適化、すなわちアルミナロッド表面温度をアルミナの融点と沸点(アブレーション温度)の間で、アルミ析出量についての最適温度を見つけ、アブレーションにより持ち去られる熱や質量を低減して、単位レーザー照射エネルギーあたりのアルミ析出量の増加を見込む。そのために (2)レーザーアブレーションプルームからのアルミ回収:水素吹付によりアルミ回収板温度が低下しないよう、加熱機構の付加などの工夫を行う。 (3)レーザーアブレーションによる粉体アルミナの還元:単位エネルギーあたりのアルミ回収量を増やすため、アルミ回収量が起こるレーザー強度閾値をどこまで下げられるかにチャレンジをする。 (4)アルミ堆積メカニズムの数値シミュレーション:計算でアルミ堆積が進むとイオン結合のみでは堆積層が形成できない状況になり、それ以上計算ができなくなる点を改良する。
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