研究課題/領域番号 |
20K20550
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分28:ナノマイクロ科学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
平野 愛弓 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80339241)
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研究分担者 |
但木 大介 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (30794226)
馬 騰 東北大学, 材料科学高等研究所, 助教 (10734543)
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
小宮 麻希 東北大学, 電気通信研究所, 特任助教 (00826274)
火原 彰秀 東京工業大学, 理学院, 教授 (30312995)
福山 真央 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (40754429)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
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キーワード | 膜タンパク質機能解析 / 脂質二分子膜 / Lateral bias / 微細加工技術 |
研究開始時の研究の概要 |
電界効果トランジスタにおけるゲート電圧をLateral biasとして導入した脂質二分子膜系を形成し,この膜系に基づく新しい膜タンパク質機能解析場を創出する.既に予備知見として,Lateral biasによってイオンチャネルの開口が誘導される現象を見出しており,本研究では,この作動原理の解明を行うとともに,従来の膜電位のみでは解析困難であった高速不活性化チャネルや機械刺激作動性チャネルの機能解析場・薬物スクリーニング系として展開する.本研究のLateral bias系は,イオンチャネルのみならず様々な膜タンパク質の研究や膜科学における新潮流を生み出す解析手法となる.
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研究実績の概要 |
昨年度までに,イオンチャネルやフラーレン誘導体含有膜が示す膜貫通電流がLateral biasによって増大する現象を見出してきた.従来から,イオンチャネル等の膜タンパク質の機能計測は,膜貫通電位を固定してチャネル電流を記録する電圧固定法によって行われてきたが,新たにLateral biasを導入できれば,膜タンパク質の機能計測に新機軸を創出できる.2023年度は,Lateral biasの作用機構を調べるため,種々のイメージング観測系を用いてLateral biasの効果を定量し,その作用機構の概要を明らかにした(投稿準備中).一方,Lateral biasによる単一チャネル電流の変調作用を定量化することは困難であった.チャネル電流が~pAと小さく,ノイズ電流との識別が難しかったためである.そこで,低S/Nの時系列データを2状態に分類する適応的解析方法(AI2)を開発し,ロバストなチャネル電流解析法として提案した(Biophys. J., 2023).これにより,Lateral biasのチャネル電流変調作用の定量化にも成功した.また,ウェルアレイ型のマイクロ流体デバイスを用いた平面リン脂質二分子膜の形成にも成功し,これを準弾性レーザー散乱(QELS)法によって計測することができた.さらに,得られたピークを自動解析するための多変量解析法を確立した.派生研究としては,空気中でも安定な脂質二分子膜系としてZn-フタロシアニン(ZnPC)含有脂質二分子膜構造を金電極表面上に形成し,ZnPC-金間のFRET特性について評価した(ACS Appl. Nano Mater., 印刷中).この他,イオンチャネルがその信号伝達において中心的機能を担う神経系を対象に,培養神経細胞回路の構造-機能の相関性について検討した(Sci. Adv., 2023; PNAS, 2023.).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主テーマであるLateral biasという新概念について,初期のデモンストレーション(ACS Omega, 2019; Faraday Discuss., 2022)を経て,今年度は種々の脂質二分子膜観測系の構築により,その作用機構の概要を明らかにしてきた.特に,Lateral biasの印加による種々の膜物性の変化に関する知見を集積して整理しており,現在,その成果を纏めているところである.また,派生研究として,空気中でも安定な脂質二分子膜系の構築や培養神経回路の構築と機能評価についても論文として公表しており,当初の予定通り,概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き,Lateral biasの実証とその機構解明を進めるとともに,その生理学的意義付けや新規膜タンパク質機能解析場としての発展性についても検討する.また,Lateral biasの汎用性を高めるため,長寿命の電極内蔵型チップの作製プロセスを確立する.さらに,最終年度として,これまでに得られた成果(フラーレン誘導体系,ZnPC系,イオンチャネル系,およびLateral biasの作用機構)について総括する.
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