研究課題/領域番号 |
20K20561
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分34:無機・錯体化学、分析化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
浅井 雅人 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究主幹 (20343931)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
2021年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2020年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | 超重元素 / イオン化エネルギー / 吸着エンタルピー / 荷電変換 / タリウム / ガスクロマトグラフィー / フレロビウム / 元素周期律 |
研究開始時の研究の概要 |
周期表第7周期の末端に位置する112~118番元素では、強い相対論効果とスピン軌道相互作用の影響で、化学結合に関与する7p1/2軌道と7p3/2軌道のエネルギーが大きく変化し、軽い元素では決して見られない超重元素特有の化学結合の発現が期待される。これらの特異な電子配置と化学特性を、112~116番元素のイオン化エネルギー測定と吸着エンタルピー測定から実験的に明らかにし、新たな周期律の構築を目指す。生成量が少なく半減期が極めて短い超重元素に適用できる新しい実験手法を開発し、最初の実証実験として104番元素Rfの第一イオン化エネルギー測定を実施し、Rfのイオン化エネルギーを初めて決定する。
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研究実績の概要 |
周期表第7周期の末端に位置する112~118番元素では、強い相対論効果とスピン軌道相互作用の影響で、化学結合に関与する価電子軌道のエネルギーが大きく変化し、軽い元素では決して見られない超重元素特有の化学結合の発現が期待される。本研究は、これらの特異な電子配置と化学特性を112~116番元素のイオン化エネルギー測定と吸着エンタルピー測定から実験的に明らかにすることを目的とする。そのため、生成量が少なく半減期が極めて短い112~116番元素に適用可能な新しい実験手法の開発を行う。 令和5年度は、前年度までに実施したイオンビーム荷電変換実験の成果を基に新しいイオンビーム荷電変換装置の設計・製作を進め、真空ポンプなど一部の装置の購入を行った。吸着エンタルピー測定実験に関しては、スイス・ポールシェラー研究所(PSI)との共同研究で、113番元素の同族元素Tlのガスクロマトグラフィー実験を実施した。その結果、Tlはカラム表面との反応性が強く、結果がカラムの表面状態に強く依存すること、またTlのカラム表面への吸着温度がかなり高いことを明らかにした。この結果は、113番元素のクロマトグラフィー実験においても高い温度条件で実験する必要があることを意味し、そのため高温環境下で動作する検出器の開発が必要であることを改めて認識させた。これについては、スイスPSIや中国・近代物理学研究所(IMP)において基礎研究が進んでおり、11月に開催された第7回「超アクチノイド元素の化学と物理」国際会議に出席した際PSI及びIMPの研究者と情報交換を行い、有用な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では令和3年度にイオンビーム荷電変換装置の製作、令和4年度に荷電変換法によるイオン化エネルギー測定法の開発試験の実施、令和4~5年度に吸着エンタルピー測定用クロマトグラフィー・測定装置の製作、令和5年度に超重元素ビーム引き出し電極を製作する計画であった。イオンビーム荷電変換装置に関しては、既存の実験装置を利用して先行して荷電変換試験を実施しており、短寿命核ビームを用いた価数分布測定に成功し、価数分布のイオン化エネルギー依存性に関するデータの取得にも成功した。また、Es-254標的を使用することで重アクチノイド元素の低速イオンビーム生成にも成功した。一方で、超重元素のイオン化エネルギー測定に適用できるイオンビーム荷電変換装置の製作については、上記の荷電変換試験の結果を検討しつつ改めて設計等を再検討しているため、製作が遅れている。 超重元素の吸着エンタルピー測定については、ドイツ重イオン研究所(GSI)との共同研究で実施した成果として114番元素Flのガスクロマトグラフィー実験の論文を出版し、Flが極めて揮発性の高い金属元素であることを明らかにした。この成果は本研究の目的である112~116番元素の特異な電子配置と化学特性の解明に繋がる直接的な成果であり、大きな進展である。また113番元素の同族元素であるTlを用いてクロマトグラフィー実験を実施し、カラム表面における化学反応や吸着温度に関して実験データを取得し、新たに製作するクロマトグラフィー・測定装置の再設計に関して有用な情報を入手できた。一方で、新しいクロマトグラフィー・測定装置の製作については、それらの情報を基に再検討する必要性が生じたことから製作が遅れている。 荷電変換測定やFl, Tlの吸着エンタルピー測定などの重要な成果は出ているが、実験装置の製作が遅れているため、全体として研究はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、これまでの実績及び検討を踏まえてイオンビーム荷電変換装置の製作及び開発を進め、超重元素と同族のHg, Tl, Pb, Bi, Po, Rn等の低速短寿命核ビームを用いたイオンビーム荷電変換試験を実施し、原理実証を行う。また吸着エンタルピー測定のためのクロマトグラフィー・測定装置の開発と超重元素ビーム引き出し電極の製作については、113番元素の吸着エンタルピー測定に適用するためのRFイオンガイド式超重元素ビーム引き出し電極の開発実験と同族元素Tlのクロマトグラフィー実験を、スイスPSIと共同で実施する。クロマトグラフィー・測定装置に使用する検出器については、高温環境下で動作させる必要があることからSiC製の検出器を開発する必要があり、中国IMPで開発中の検出器の入手を検討している。今年度これらの開発を実施し、超重元素のイオン化エネルギー、吸着エンタルピー測定実験の準備を完了する。 更にこれらの開発実験に必要な、短寿命同位体ビーム生成法の開発、超重元素測定用検出器の開発、超重元素の生成や測定に必要な核反応機構や崩壊様式等に関する研究、イオン化エネルギー及び吸着エンタルピー測定に関する関連研究も継続して実施する。
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