研究課題/領域番号 |
20K20563
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分35:高分子、有機材料およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 亮 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (80256495)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 11,700千円 (直接経費: 9,000千円、間接経費: 2,700千円)
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キーワード | ポリマーブラシ / 機能性高分子 / 材料表面 / 機能性好悪分子 / スマートサーフェス / 時空間制御 / 細胞培養システム / 分化制御 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、申請者が精力的に研究を続けていた「自励振動ポリマー」を電極材料として用いることで「マイクロメートルの空間解像度」および「秒オーダーの時間解像度」で力学的特性を自在に制御可能なスマートサーフェスを新たに開発する。第一に、自励振動ポリマーをバルク電極上に担持し、電気的な表面特性の制御を達成する。第二に、このシステムを微小電極アレイ上に構築することで、マイクロメートルオーダーで表面特性を制御可能なスマートサーフェスを開発する。最終的にはこのスマートサーフェスを利用した細胞培養を行い、時空間的な力学的刺激が細胞に与える影響を詳細に検討する。
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研究実績の概要 |
当研究室でこれまで開発してきた自励振動ゲルは、N-イソプロピルアクリルアミドに、振動反応であるBelousov-Zhabotinsky反応(BZ反応)の触媒のトリスビピリジンルテニウム(Ru(bpy)3+or2+)を共重合した化学構造を持ち、BZ反応の化学エネルギーをゲルの周期的な膨潤収縮振動に変換することができる。これまで、自励振動高分子を利用して様々な自律的挙動を示す高分子溶液やハイドロゲルが創製されてきた。自励振動高分子システムは、作製時に設計された周期的運動を自律的に繰り返すため、実際の生体と比較すると心筋のような器官の模倣と考えられる。一方個体としての生物には、さまざまな器官が有機物の化学エネルギーを消費して働いているが、この働きは脳の電気信号によって制御されている。ここに従来の自励振動高分子システムと個体としての生物の間の隔たりがある。自励振動高分子システムに能動的に自律的運動を制御するプロセスを取り込むことができれば、より個体としての生物に近いスマートアクチュエータを創製することが可能である。自励振動高分子の自律的運動はBZ反応によるルテニウム錯体の酸化還元で駆動されているため、電極によって制御することが可能であると考えられる。そこで本研究では、indium-tin-oxide(ITO)電極表面上に自励振動ポリマーブラシを修飾し、電極反応による自励振動ポリマーブラシの酸化状態の制御を試みた。また、酸化還元による表面物性の変化を測定することで、ポリマーブラシの相転移挙動を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自励振動高分子システムの能動的な制御を目的としており、自励振動高分子システムと電気化学的手法を組み合わせた最初の研究になっている。ITO電極表面にSI-ATRPによって自励振動ポリマーブラシを合成し、電気化学ポテンシャルを印加することでポリマーブラシに担持されたRu(bpy)3を酸化還元した。また、電気化学的な酸化還元と同時に共焦点顕微鏡による蛍光観察を行うことで、ポリマーブラシ全体のRu(bpy)3が可逆的に酸化還元されていることを明らかにした。更に、QCMを用いて電気化学的な酸化還元に伴うポリマーブラシの相転移現象を解析した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の展望としては、BZ反応基質を含む自励振動ゲルや自励振動高分子溶液などに電気化学ポテンシャルを印加することで、これらの化学反応ネットワークを操作することが考えられる。近年、BZ反応の休止期においてBrO3-を電気化学的に還元することで、BZ反応の活性因子であるHBrO2の濃度を上昇させ、電極近傍から遠ざかっていく向きにBZ反応波を伝播させることに成功した研究が報告されている。この知見を利用することで自励振動高分子システムの電気化学的制御が可能になると考えられる。
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