研究課題/領域番号 |
20K20566
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分37:生体分子化学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉村 英哲 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90464205)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2022年度: 7,800千円 (直接経費: 6,000千円、間接経費: 1,800千円)
2021年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2020年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
|
キーワード | バイオイメージング / RNA / 生物発光 / 蛍光 / 顕微鏡 / 生細胞 / 多細胞 / 1細胞解析 / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では申請者独自の生細胞内RNA可視化技術と発光イメージング技術を基盤として、多細胞からなる生体試料を生かしたまま、構成する細胞内の遺伝子発現を経時的に可視化定量追跡する技術の創出を目的とする。具体的には、二分割ルシフェラーゼを用いた標的RNAの発光検出プローブの開発と、生きた生体試料を1細胞解像度で発光イメージングする顕微鏡開発を行う。生体サンプルを非破壊的に解析することで、従来法で同定された遺伝子の時空間プロファイルを解析する。従来法で得られた遺伝子発現情報を利用し、次に求められる遺伝子発現時空間プロファイルの情報を得ることを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、組織・オルガノイド・小動物個体など多数細胞の集合により機能発現している生体試料について、その試料を生かしたまま遺伝子発現の時空間解析を行うイメージング技術群を創出することにある。すなわち「細胞集団内において、個々の細胞における遺伝子発現のどのような時空間的特徴が、標的とする生理現象の発現における核となる細胞の生成や、その後の増殖・伝播に対する必要条件となるか?」という「問い」を設定した。本研究ではこの「問い」に対する答えを得るために必要な、「生きた多細胞試料における遺伝子発現時空間情報の1細胞解像度経時追跡法」という、これまでに全く存在しない技術を創出することを目的としている。この目的を実現するために、本研究では①遺伝子発現産物すなわち内在性RNA可視化定量を実現する生物発光プローブの開発②生体試料長期培養機能を備えた1細胞解像度4D生物発光顕微鏡の構築、の2つの研究を行っている。 ①の生物発光プローブの開発では、前年度に開発した生物発光RNAプローブを用いて生細胞内における内在性標的RNAの可視化検出を実現した。具体的には線維芽細胞及び初代培養神経細胞において標的RNAの局在や経時変化を観察した。また、様々な生理現象におけるRNA動態を観察するため、長時間安定な発光基質を開発した。②の顕微鏡開発では、前年に試したレンズアレイやホログラフィーに加え、テレセントリックレンズを用いた拡大光学系を利用して広視野かつ高解像度な発光・光学観察を実現する工学系の構築を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①のRNAプローブ作成については、前年度に行った生細胞内RNA検出能評価結果を踏まえて、生細胞の細胞機能発現過程における標的RNAの局在経時変化具体的にはβ-actin mRNAを標的として、プローブをマウス線維芽細胞株NIH3T3に導入して観察を行った。その結果、成長因子刺激を入力したNIH3T3細胞内で標的RNAがストレス顆粒を形成し、膜状仮足領域に局在することが観察された。また初代培養神経細胞においても標的RNAの観察を行い、軸索や樹状突起に標的RNAが局在することを観察した。すなわち、本研究で想定していたプローブ性能はいずれも実現し、現在論文執筆を進めているところである。 ②の顕微鏡開発実験については、広視野を高い解像度で観察するためにはレンズによる収差を抑制した光学系を構築する必要がある。そこで本研究ではマシンビジョンなどに用いられるテレセントリック光学系と大型イメージセンサーを有するsCMOSカメラを利用し、光学分解能を超える解像度とサブミリメートルオーダーの視野を実現する光学系を設計した。この性能は本研究開始時において目標としていたものであり、実サンプルの観察を持って本研究の目的は達成できると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
①のRNAプローブ開発については、当初目的は達成したと考えられる。引き続き様々な標的RNAを対象に、生物発光を利用した生細胞内RNA可視化観察法の確立を進める。具体的には機能性RNAの1つであるテロメア反復配列含有RNA (TERRA)を対象に、生物発光観察を行い、細胞周期に応じたTERRAの局在変化の観察を行う。 ②の顕微鏡観察においては、設計したテレセントリック光学系顕微鏡を用いて実サンプルの観察を行う。まずはガラス基板上に結合した蛍光色素や蛍光粒子の観察を行い、視野の中心と辺縁部における分解能や位置精度の評価を行う。また分解能と位置精度が最も高い性能となるような光学系調整法を確立する。続いて培養細胞の観察を行う。カバーガラス状で細胞を培養し、細胞が敷き詰められた状態で顕微鏡観察を行う。その観察結果から、視野中心と辺縁部における画像を評価し、ゆがみなく広視野・高解像度観察が実現するように装置の調整を行う。次に培養細胞に刺激を加え、多細胞間で生じる協調した機能発現について、標的RNAの局在・動態や、関連するタンパク須つの1分子運動などを開発した顕微鏡で観察する。これらの実験を通じて、当初目的である多細胞における生理機能発現機構解明に資する顕微鏡技術を創出する。
|