研究課題/領域番号 |
20K20582
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分43:分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平谷 伊智朗 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40583753)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
26,000千円 (直接経費: 20,000千円、間接経費: 6,000千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2022年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2021年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2020年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
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キーワード | 多次元1細胞全ゲノム解析 / ゲノム増幅法 / scRepli-seq / scHi-C / Dip-C |
研究開始時の研究の概要 |
最近、我々は1細胞全ゲノムDNA複製解析技術であるscRepli-seq法の開発に成功した。独自の基盤技術であるscRepli-seq法の解像度をさらに向上できれば、これまで我々の目に見えていなかったDNA複製制御様式の発見や、局所的な欠失や増幅等のゲノム変異同定の研究に大きなインパクトを及ぼす。また、scRepli-seqを起点とした多次元1細胞全ゲノム解析を実現すれば、DNA複製研究の枠を超えて、ゲノム・染色体研究全般に大きな波及効果をもたらすことが期待できる。そこで、本研究では、scRepli-seqの解像度の飛躍的向上と、これを起点とした多次元1細胞全ゲノム解析の実現を目指す。
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研究実績の概要 |
我々独自の1細胞全ゲノムDNA複製解析技術であるscRepli-seq法を更に発展させるべく、本研究は(1)scRepli-seqの「第二世代化」による解像度の飛躍的向上、(2)scRepli-seqを起点とした多次元1細胞全ゲノム解析の実現、の二つを目的としている。(1)に関して、現在、我々のscRepli-seq法が採用しているのは指数関数的ゲノム増幅法(DOP-PCR)だが、DOP-PCRの工程を変更して線形あるいはそれに類似のゲノム増幅法にするとscRepli-seqの解像度をさらに向上させられると考えている。そこで、最新の線形ゲノム増幅法であるLIANTI(Science, 2017)という手法を採用して試行錯誤を繰り返しているが、未だに我々の手では確立できておらず、現在はLIANTIを一旦中断して、他のいくつかのゲノム増幅法を試している。一方、(2)に関しては大きな進展がいくつかあり、同一細胞からscRepli-seqと1細胞RNA-seq(scRNA-seq)を同時実現出来る1細胞全ゲノム解析技術が出来つつある。これと並行して、1細胞Hi-C解析のプロトコール確立にも取り組んだ。1細胞Hi-Cは工程の途中まで細胞集団を用いて実験を進めるタイプのものが大半だが、文字通り1細胞から開始して質の高いHi-Cデータを得ることに成功した。今後は、いくつかのステップについてさらに条件検討を重ねるとともに、scRNA-seqとの同時実現をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は(1)scRepli-seqの「第二世代化」による解像度の飛躍的向上、(2)scRepli-seqを起点とした多次元1細胞全ゲノム解析の実現、の二つを目的としている。(1)に関して、現在、我々のscRepli-seq法が採用しているのは指数関数的ゲノム増幅法(DOP-PCR; Degenerate oligonucleotide-primed PCR)だが、DOP-PCRの工程を変更して線形あるいはそれに類似のゲノム増幅法にすると目的を達成できると考えている。そこで、線形ゲノム増幅法LIANTI(Science, 2017)を試して試行錯誤を繰り返していたが、上手く行かない部分が複数箇所あり、少なくとも現在までのところ、我々の手ではうまく再現できていない。そこで、現在、他のいくつかのゲノム増幅法を鋭意検討中である。一方、(2)に関しては大きな進展がいくつかあり、同一細胞からscRepli-seqと1細胞RNA-seq(scRNA-seq)を同時実現出来る1細胞全ゲノム解析技術が出来つつあり、現在、詳細を詰めながら鋭意論文にまとめている。これと並行して、1細胞Hi-C(scHi-C)解析のプロトコール確立にも取り組んだ。scHi-Cは工程の途中まで細胞集団を用いて実験を進めるタイプのものが大半だが、文字通り1細胞から開始して質の高いscHi-Cデータを得ることに成功した。今後は、細胞溶解バッファーの組成をいくつか試して、scRNA-seqとの同時実現のためのプロトコールの最適化を図りたいと考えている。(1)については少々手こずっているが、(2)が予想以上に進展しており、両者併せて「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)scRepli-seqの「第二世代化」による解像度の飛躍的向上、については、次年度も引き続き、scRepli-seq法の工程にあるゲノム増幅法を、線形ゲノム増幅法あるいは準線形の手法に変更する試みを続ける。いくつかの候補となる手法を試している。(2)scRepli-seqを起点とした多次元1細胞全ゲノム解析の実現、については、同一細胞からscRepli-seqと1細胞RNA-seq(scRNA-seq)を同時実現することは達成できたので、単独のscRNA-seqとのデータの比較解析を行い、データの品質の確認作業を行う。また、1細胞Hi-C(scHi-C)の条件検討、具体的には途中のゲノムDNA断片化と増幅工程を見直し、最終的なアウトプットであるscHi-Cデータの品質を確認してそのデータ出力の向上(ゲノムカバー率の向上)と最適化(マルチプレックス化に対応したDNAライブラリー収量の安定化)を図る。scHi-CとscRNA-seqの同時実現に関しては、細胞溶解バッファーの組成をいくつか試して、scRNA-seqとの同時実現のためのプロトコールの最適化を図りたい。
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