研究課題/領域番号 |
20K20587
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分45:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 典之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (60436764)
|
研究分担者 |
森 さやか 酪農学園大学, 農食環境学群, 准教授 (70623867)
樋口 広芳 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問教授 (10111486)
島田 泰夫 一般財団法人日本気象協会, 環境影響評価室 主任技師 (70621077)
山内 健生 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (00363036)
浅利 裕伸 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (80761478)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
22,490千円 (直接経費: 17,300千円、間接経費: 5,190千円)
2022年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2021年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2020年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
|
キーワード | 空のニッチ / 空中食物資源 / 飛翔性昆虫 / ハリオアマツバメ / 遠隔追跡 / ドローン / 飛翔生昆虫 / 空中採食 / 空中採食者 / 気象調査 |
研究開始時の研究の概要 |
資源の分布と変化を把握し、生物がそれをどう巧みに利用するかを知ることは生態学の根本課題である。しかし空域での資源利用の研究は手つかずと言える。本研究では、ドローンとレーダーを利用した空中食物資源調査、GPS 装置を利用した資源利用者の移動経路計測をおこない、空域の生態学という開拓的課題を遂行する。空域の食物資源に完全依存した鳥種を対象とし、食物である小型飛翔昆虫の利用のあり方を解明する。「空のニッチ」と定義できる資源利用の解明ともいえる。野外生物学のフィールドは陸域・水域であり続けている。本課題では未開拓の空域をフィールドとした野外生物学を実施する。
|
研究実績の概要 |
本研究では、脊椎動物の中でもっとも幅広い環境に適応し、特に空域での資源利用を積極的におこなう鳥類を対象として、空域の生態学という開拓的課題を遂行する。空域の食物資源に完全依存し、空中採食に高度に専門化したハリオアマツバメを研究対象とし、本種が繁殖期に食物とする羽蟻などの小型飛翔昆虫資源の利用のあり方を解明する。 当該年度は (1) 空のニッチ計測システムの実装、(2) ハリオアマツバメの局所スケールでの移動と獲得食物の把握、(3) 空のニッチの時間・空間分布の定量的把握、(4) 空のニッチを規定する局所環境要因の把握、(5) ハリオアマツバメが有する超感覚の特性把握、(6) 地球スケールでの移動と環境要因の解明を研究計画項目とした。 (1) についてこれまで重ねた試作が実り、飛翔性昆虫を効果的に捕獲できるドローンシステムを実用化することができた。ハリオアマツバメの行動圏内において様々な時期と気象条件で複数回のサンプリングをおこない、得たサンプルの同定を進め、成果報告を準備中である。(2) について過去の年度と同様に順調に移動追跡とヒナに持ち帰った食物の一部をサンプルとして得ており、データが蓄積されている。(3) については、(1) と (2) で得たデータを統合して解析する予定であるが、現在予備解析段階であり、最終年度のサンプルと合わせて解析をする予定である。(4) については局所気象データが入手可能な状態である。(5) については実験を実施することができ、データを蓄積することができた。2022 年度はコロナ禍で野外調査ができず、データが不足しているため、最終年度を延長し 2023 年度に実験をさらに実施する計画である。(6) について引き続きデータを収集している。また越冬地であるオーストラリアの研究者とも情報交換を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した事項の多くは順調に実施することができた。ただし、ハリオアマツバメの超感覚を把握するための実験はさらにサンプルを得る必要があり追加実験が求められる。また局所的な気象データや土地、植生データなどと統合した空間利用、食物資源分布に関する解析は予備にとどまっており、最終年度とした 2023 年のデータも合わせて統合的に解析する必要がある。全体として、コロナ禍と実施期間が完全に重複した本研究課題の進捗は概ね順調とはいえやや立ち遅れている面もあり、1 年間の期間延長を余儀なくされた。
|
今後の研究の推進方策 |
期間を延長した 2023 年度が最終年度となり、とりまとめに向かうことになる。まず野外調査を引き続き実施し、データの蓄積を目指す。具体的には実装することができたドローンシステムで引き続き飛翔性昆虫のサンプリングを実施する。また開発したシステムとそのパフォーマンスに関する技術報告を学会発表および学術論文として公表する。また、繁殖期のハリオアマツバメの移動と獲得した食物資源の関係、それを規定する気象条件・土地・植生との関係を解析し、本研究課題の中核的な成果として公表する。さらに、ハリオアマツバメが有する超感覚の特性について把握する実験を完了させ、成果を公表する。地球スケールでの移動と環境要因の解明については越冬地の研究者とも情報交換を進めながら、地域スケールから地球スケールでの解析を進める。 これらに加えて、副産物的に得られたデータが多くあるので、それらの公表を各分担者が順次進めていく。
|