研究課題
挑戦的研究(開拓)
本研究では、以下の3つを行う。1)核内脂質の分析 本研究で詳細な質量分析を行い、核内核脂質成分を同定する。2)細胞の変化による脂質成分変動の把握 C2C12細胞は、力学刺激によって骨格筋細胞や脂肪細胞にも分化する。未分化C2C12、分化Type IIa/IIb骨格筋細胞、脂肪細胞について、細胞質/核脂質の質量分析を行う。3)生理的意義の解明 骨格筋のエネルギー代謝、脂肪細胞分化に関与する核内受容体について、細胞質/核内脂質がagonist活性を持つかを検証する。同定された脂質は、マウス個体にに応用する。また、廃用性萎縮骨格筋の核脂質の組成差、若いマウスと老齢マウスの組成差なども解析する。
本研究では、細胞に力刺激を加えてどんな反応が起こるかを解析し、力刺激で細胞質から核内に移行する因子を同定し、早い核内移行を示す脂質代謝酵素があることを見つけた。そして、核内にグリセロリン脂質代謝系があり、エネルギー代謝に関与することがわかった。すなわち、複数の核内脂質代謝系が核内受容体のリガンドをin situ合成して代謝を制御している。さまざまな核内脂質代謝系を構成する核内酵素を数多く同定し,また,核内脂質を質量分析で半網羅的に解析した。その結果,核内には,独自の脂質代謝系,脂質が存在し,核内受容体内在リガンドをin situ生成して代謝を調節するユニークなシステムがあることがわかった。
核内受容体のリガンドは,ホルモンとして異なる組織で生成され,血流で運ばれて標的組織の受容体を活性化すると考えられてきた。しかし,基本的に水溶性の低い脂質様リガンドが,このようなステップで動いているのか,多くの疑問があった。今回の研究成果から,核内にも脂質代謝系が存在し,核内受容体リガンドとなる脂質を生成できること,核と細胞質の脂質に大きな違いがあることがわかり,肥満,糖尿病の発症にも関与する核内リガンドの見解に新しい局面を開いた。核内にユニークな脂質代謝系があること自体,大きな発見であり,この学術的意義はきわめて大きく,内在性核内受容体リガンドの研究に大きな一石を投じることとなった。
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Science
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