研究課題/領域番号 |
20K20611
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分57:口腔科学およびその関連分野
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
滝川 正春 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (20112063)
|
研究分担者 |
青山 絵理子 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10432650)
星島 光博 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (30736567)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (90221936)
西田 崇 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (30322233)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (20457229)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2023年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | 軟骨 / CCNタンパク質 / CCN2 / S-アデノシルメチオニン / GDF-5 / ポリアミン / 分化機能 / 遺伝子発現 / 軟骨細胞 / 解糖 / 細胞分化 / 細胞増殖 / 細胞生存 / コンドロニュートリゲノミクス / CCN2/CTGF / ニュートリジェネティクス / GDF5 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、軟骨研究にニュートリゲノミクスという概念を導入し、分子生物学的研究に偏重している昨今の軟骨研究の流れに変革をもたらし、コンドロニュートリゲノミクスという新研究領域を開拓する。即ち、内軟骨性骨化促進因子CCN2/CTGFや関節軟骨形成因子GDF5を主たる対象として糖質、アミノ酸、脂質の3大栄養素及びその代謝産物が情報物質となり作用すること、また、その逆の経路の存在も明らかにする。次いで、GDF5作用を増強するCCN2の発現を増強する栄養・代謝物を用いてGDF5のSNPによる変形性関節症高感受性を克服する一例を示し、未だ具体例の乏しいコンドロニュートリジェネティクス研究に先鞭を付ける。
|
研究実績の概要 |
昨年度アミノ酸代謝産物s-アデノシルメチオニン(SAM)がヒト軟骨細胞様細胞HCS-2/8細胞において、CCN2と2型コラーゲンの発現を誘導し、アグリカンの蓄積を促進することを報告したが、さらにアグリカン、SOX9、オルニチン脱炭酸酵素(ODC)の遺伝子発現を促進することを確かめた。また、1つの培養細胞株では不十分と考え、ラット骨肉腫由来軟骨細胞株RCSを用い同様の実験を行ったところ、アグリカンの蓄積の増強がみられ、この増強作用がSAM合成酵素であるMAT2aの阻害剤PF9366で阻害された。また、SAM添加でポリアミンレベルが増加することをPolyamine RED染色で確認した。さらに、プトレッシンと縮合してポリアミンを生成するdcSAMをSAMから合成する酵素AMD1の阻害剤Sardomozideはアグリカンの蓄積を阻害した。さらに、プトレッシンを合成するODCの特異的阻害剤αDFMOもアグリカンの蓄積を阻害した。また、両細胞でSAMはコンドロイチン硫酸合成酵素chsy1とchsy2の遺伝子発現も促進した。さらに、軟骨前駆細胞ATDC5をITSの存在下で軟骨細胞へ分化させる系でSAMはアグリカン、2型コラーゲン、CCN2の遺伝子発現を促進した。我々は以前にポリアミンが軟骨細胞の分化機能の発現を亢進させることを報告していることから、SAMは単なるポリアミン合成の材料源なるだけでなく、種々の軟骨分化関連因子の遺伝子発現を促進することにより軟骨分化機能の発現を亢進させることが明らかとなった。本研究成果はコンドロニュートリゲノミクス研究の重要な一例となる。 コンドロニュートリジェネティクス研究では、当初からCCN2とGDF5との関連を追及する計画であり、CCN2が関節軟骨形成因子GDF5と結合するだけでなく、BMPRIIおよびBMPR1αと1βとも結合することを解明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンドロニュートリゲノミクス研究:一昨年度来アミノ酸代謝産物s-アデノシルメチオニン(SAM)が軟骨細胞の分化機能発現に重要な働きを示すそのメカニズムとして、SAMが単にポリアミン合成の材料源となるだけでなく、ポリアミン合成の律速酵素であるオルニチン脱炭酸酵素(ODC)、軟骨分化促進因子CCN2、軟骨2大分化マーカであるアグリカンやII型コラーゲン等の各種軟骨分化関連遺伝子の遺伝子発現を促進することを明らかにし、コンドロニュートリゲノミクス研究の重要な一例となることを明らかに出来たが未だ論文発表には到達できていない。コンドロニュートリジェネティクス関連ではCCN2とGDF5が結合するだけでなく、BMPRIIとR1αおよびR1βと結合することを見いだしたが、その生理的機能に至る情報伝達経路は解析中で、学会発表レベルに留まっている。 大きな要因は、新型コロナ感染が拡大し始めたころに、本研究課題が採択され、その後、研究期間4年のうち当初の3年間がコロナ禍にあったことがある。この間、実験時間の制約、臨床から研究に参加している大学院生の病院への動員によるマンパワーの減少、物流トラブルによる試薬等の納入時期の遅延、メタボローム解析等の外注環境の悪化等で研究の進行が大きく妨げられた。一方、このような不自由な実験環境におかれたため前年度同様に執筆活動に精を出し、本研究課題であるコンドロニュートリゲノミクス研究の中心分子となるCCNタンパク質に関する研究では、当初より蓄積してあったデータを中心に追加実験の結果を加えて纏め、学術論文13報を出版し、編著本1冊を出版した。 即ち、元々予備データの蓄積してあった周辺領域を含めると論文業績はそれなりに挙がったものの、当初計画していた実験計画に関する直接的成果としては未だ限定的で、総合的に判断するとやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
1.コンドロニュートリゲノミクス研究: コンドロニュートリゲノミクスの一例として、進捗状況に記載した如く、R4年度にアミノ酸代謝産物SAMの軟骨分化機能亢進作用の作用メカニズムがかなり明らかになったので、SAMが各種遺伝子の発現を誘導する分子メカニスム、特にメチル化との関連を調べるとともに軟骨内SAMレベルを上昇させる因子を探索して、論文化して発表する。また、糖質代謝物に関しては、メチルグリオキサール(MG)やグルコサミン(GlcN)のCCN2等の軟骨成長因子・分化マーカーの遺伝子発現に対する影響を調ベる。逆に、CCN2等の軟骨成長因子のMG代謝やアミノ糖代謝に対する影響を調べる。また、グリコサミノグリカン (GAG)オミックス、リピドミクス研究も行って軟骨ニュートリゲノミクスの研究成果例を3大栄養素にまで拡げ、新研究領域コントロニュートリゲノミクスを開拓する。 2.コンドロニュートリジェネティクス: R4年度にSAMの実験およびGDF5に関してはその受容体とCCN2の結合実験に注力していたため出来なかった以下の実験を施行する。即ち、R3年度の成果2から、CCN2の発現を増強すれはGDF5遺伝子のSNPによるGDF5蛋白質産生量の減少を、CCN2のGDF5機能増強作用で補完できることが期待出来る。また、成果3からCCN3の発現を阻害する分子は間接的にCCN2の発現を増強することが期待される。そこで、CCN2の発現を上昇させる(CCN3の発現を阻害する)栄養・代謝物を探索しそれを用いて、GDF5のSNPによる変形性関節症に罹りやすい体質を改善するか否かを、軟骨細胞培養系で調べる。次いで変形性関節症モテルマウス(GDF5ヘテロ欠損マウス)で確認して、コンドロニュートリジェネティクス研究の端緒を拓く一例とする。
|