研究課題/領域番号 |
20K20622
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
宮本 忠吉 大阪産業大学, スポーツ健康学部, 教授 (40294136)
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研究分担者 |
遠山 岳詩 九州大学, 大学病院, 医員 (00828197)
川田 徹 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30243752)
杉町 勝 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 非常勤研究員 (40250261)
朔 啓太 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (40567385)
上田 真也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (40616926)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,870千円 (直接経費: 19,900千円、間接経費: 5,970千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2020年度: 17,550千円 (直接経費: 13,500千円、間接経費: 4,050千円)
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キーワード | 運動適応学習 / 時系列予測モデル / 呼吸循環系 / フィードバック制御 / フィードフォワード制御 / 神経性調節 / 液性調節 / 交感神経活動 / 体液性調節 / 呼吸調節 / 循環調節 / 糖代謝 / 運動 / 呼気ガス分析 / 13C安定同位体 / システム定量解析 / 13C グルコース安定同位体 / 小動物 / エネルギー代謝 / 糖質代謝 / 呼吸 / 循環 / 高次脳機能 / 心拍数 / 血圧 / 脂質代謝 / 運動 運動 / 神経性・体液性調節 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はシステム生理学的研究手法を用いて、運動ストレスに対する骨格筋・末梢循環及 び糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムの解明に取り組む。 初年度は動物実験での検証 が難しい運動準備期におけるヒト高次脳機能を介する神経性・体液性調節メカニズムが骨 格筋末梢循環及び糖代謝機構に及ぼす影響をシステムレベルで明らかにする。 次年度以降は、我々が開発した小動物実験モデルを用いて運動時の骨格筋末梢循環及び糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムの解明に取り組み、生体恒常性の維持・変容・破綻機構をネットワーク的に理解することで、呼吸循環代謝性疾患などの病態生理機構の解明等に貢献することが期待される。
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研究実績の概要 |
我々はシステム生理学的なアプローチを用い、先行研究で開発した小動物モデルを用いて、運動時の骨格筋末梢循環と糖代謝の神経性および体液性調節メカニズムに焦点を当てた研究を行ってきた。今年度は、頸動脈洞への圧入力を制御する実験システムを構築し、コロナ禍による実験の遅れを補うための一連の取り組みを実施した。運動時の神経性調節と体液性調節の相互作用メカニズムの解明に取り組み、頸動脈洞への圧入力の変化に伴う交感神経由来の代謝反応、およびノルエピネフリンとエピネフリン投与による体液性由来の代謝反応の定量解析を行い、比較検討を進めた。また、代謝反応の時系列変化を定量化するための確認実験も実施した。 8週齢のオスSDラットを対象に、麻酔下で人工呼吸を行いながら、breath-by-breath法を用いて呼気流量と呼気ガスの分析を質量分析計で行った。さらに、糖質の代謝動態の定量評価のために、各条件下で13C標識グルコースを静脈投与し、代謝された基質の酸化量を算出した。その結果、頸動脈洞への圧入力の変化に伴う交感神経活動由来の代謝反応の変化は微小である一方、ノルエピネフリンおよびエピネフリン投与時には代謝量が著しく増加することが確認された。この変化はαブロッカーの投与により消失することが判明した。これらの実験結果は、高強度運動時の代謝量増大時には神経性調節と体液性調節の役割とその相互作用メカニズムが存在すること、また運動強度に応じた呼吸循環調節のメカニズムに関する新たな知見を提供するものと考えられる。 次年度も引き続きN数を増やし、運動に対する呼吸・循環・代謝動態を説明する新しいモデルの開発と生体恒常性維持のメカニズムに関する包括的な理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はシステム生理学的研究手法を用いて、運動ストレスに対する骨格筋・末梢循環および糖代謝の神経性・体液性調節メカニズムの解明に取り組んできた。 初年度は、運動準備期におけるヒト高次脳機能を介する調節メカニズムが骨格筋末梢循環および糖代謝機構に及ぼす影響をシステムレベルで明らかにした。 2年目は、小動物実験モデルを用いて、運動時の骨格筋末梢循環および糖代謝の調節メカニズムを解明した。安静状態で低濃度および高濃度の13C-グルコースを投与し、その代謝が濃度依存的に活性化することを確認した。また、運動刺激時には心拍数、血圧、酸素摂取量が強度依存的に増加し、13C-グルコース代謝も促進された。 3、4年目は、運動時の神経性および体液性調節の相互作用メカニズムを解明し、頸動脈洞への圧入力変化に伴う交感神経由来の代謝反応とノルエピネフリンおよびエピネフリン投与による代謝反応を定量解析した。8週齢のオスSDラットを用い、麻酔下で人工呼吸を行いながら、breath-by-breath法で呼気流量と呼気ガスの分析を実施し、各条件下で13C標識グルコースを静脈投与して代謝された基質の酸化量を算出した。その結果、頸動脈洞への圧入力変化による交感神経活動の代謝反応は微小である一方、ノルエピネフリンおよびエピネフリン投与時には代謝量が著しく増加し、この変化はαブロッカー投与で消失した。 昨年度が本研究の最終年度であったが、コロナ禍により実験システムの構築に遅れが生じ、延期申請に至った。今年度も被験動物数を増やし、運動に対する呼吸・循環・代謝動態を説明する新しいモデルの開発と生体恒常性維持のメカニズムの包括的理解を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の拡大は本研究に影響を及ぼし、特に最終年度の実験回数が計画通りに遂行できなかった。しかし、昨年度から運動時の神経性調節と体液性調節の相互作用メカニズムを解析するための頸動脈洞への圧入力を制御する実験システムが完成し、交感神経性の代謝反応とノルエピネフリンおよびエピネフリン投与による体液性の代謝反応の定量解析が順調に進められるようになった。現在、N数が不足しているため、研究期間の延長申請を行った。 今年度の目標は、実験結果の精度を高めるために実験回数を増やすことである。また、これまでの研究結果を再評価し、不足しているデータを補完するための追加実験も計画している。このアプローチは、未解決の研究課題に対する効果的な戦略であると捉えており、研究の質を向上させることを目指している。 さらに、本データをまとめて国内外の学会で研究成果を発表し、多くの研究者からの意見を基に論文を作成し、公表する予定である。以上の方策により、我々の研究は新たな進展を遂げることが期待される。これまでの成果を基に、さらに深い知見を得るための努力を続け、最終的には運動ストレスに対する生体の適応メカニズムの包括的な理解に貢献することを目指す。
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