研究課題/領域番号 |
20K20623
|
研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分59:スポーツ科学、体育、健康科学およびその関連分野
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
檜垣 靖樹 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
|
研究分担者 |
高橋 英幸 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 主任研究員 (00292540)
冨賀 裕貴 佐賀大学, 医学部, 助教 (50826394)
上原 吉就 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
川中 健太郎 福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (80339960)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2024年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2022年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2021年度: 6,890千円 (直接経費: 5,300千円、間接経費: 1,590千円)
2020年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | 筋サテライト細胞 / イノシン酸 / 糖取り込み / グリコーゲン / イノシン |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、骨格筋の培養実験に広く用いられているC2C12細胞の分化実験で、イノシン酸を細胞培養液中に添加すると顕著な細胞増殖を認めるとともに細胞内グリコーゲン量が増加することを発見した。イノシン酸は、うま味成分としてよく知られた組成物であり、カツオ節やあご出汁など、日本人の日々の食生活において欠かせないものである。鹿児島では茶節(カツオ節をお茶に混ぜて飲む)という食文化があり、疲労回復に効果があるとして昔から食され愛されてきた、という。イノシン酸を多く含むカツオ節を摂取すると疲労回復によい、という“暗黙知”を“形式知”化することに挑戦し、スポーツ界および食品業界への社会実装を図る。
|
研究実績の概要 |
我々は、骨格筋の培養実験に広く用いられているC2C12細胞の分化実験で、イノシン酸を細胞培養液中に添加すると顕著な細胞増殖を認めるとともに細胞内グリコーゲン量が増加することを発見した。グリコーゲンは、肝臓、骨格筋、腎臓、脳組織に貯蔵されている糖であり、エネルギー物質である。身体活動・運動+食事による筋グリコーゲン量の増加は持久的パフォーマンスを向上させることも知られている。そこで、我々は、「イノシン酸(IMP)摂取は、身体のエネルギー・チャージを促進する、さらに身体活動・運動との組み合わせは、相加的あるいは相乗的な効果をもたらす」、という作業仮説を立てた。 本年度は、マウス骨格筋から抽出したサテライト細胞をin vitroの培養系で分化誘導し、イノシン酸添加の有無による分化促進およびその背景にある遺伝子発現について検討した。その結果、イノシン酸投与により、明視野での顕著な分化促進作用は観察されなかった。また、DAPIおよびPax7染色画像においてもイノシン酸投与の有無により顕著な差を認めなかったが、細胞の分化マーカーである Myogeninの発現を増加させた。さらに細胞内の脂質酸化に関わる遺伝子Aおよび遺伝子Bの発現が低下するという興味深い結果を得た。筋菅への分化時にはエネルギー供給機構として酸化系から解糖系への移行が起こることが報告されており、本研究の結果はイノシン酸が筋芽細胞のエネルギー代謝の変化と分化促進に関与している可能性を示唆している。 以上より、細胞の分化過程によるイノシン酸投与は、分化促進を惹き起こす可能性があることが明らかとなった。今後、添加のタイミングや容量依存的な作用が観察されるか、実施する予定である。なお、昨年度から引き続き実施していたマウス骨格筋を用いたin vitroインキュベーション実験のデータをまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度に計画していたマウス骨格筋を用いたin vitroインキュベーション実験のデータをまとめることができた。ただし、COVID19の影響により、ヒトを対象とした実験には着手が困難であった。今後、動物モデルや筋サテライト細胞の実験データをもとに、引き続き、実験計画を修正しながら進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度では、培養4日目以降に分化誘導を開始し、イノシン酸の添加有無で細胞増殖の変化などを検討した。また、in vitroでの筋インキュベーション実験を用いてグルコースの取り込み促進について、インスリンやAICAR刺激との相互作用についての検討がほぼ、完了した。筋サテライト細胞の分化実験過程で、筋グリコーゲン促進作用以外の知見が得られたため、新たな視点で追加の実験計画を組み、進めていく予定である。 なお、COVID19の影響などを鑑み、実施への判断が厳しい状況であったが、今後の状況を見ながら、実施可能な計画について共同研究者とディスカッションを進めていく。
|