研究課題/領域番号 |
20K20634
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
北出 裕二郎 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (50281001)
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研究分担者 |
溝端 浩平 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (80586058)
長井 健容 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (90452044)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)
2020年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
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キーワード | 海洋観測 / 昇降式フロート誘導実験 / 昇降式フロート / AI化基礎実験 / 海洋学 / 環境監視 / 海洋観測AI化基礎実験 / AI観測システム化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、海洋ビッグデータを活用し、流れで受動的に移動する昇降式フロートによる観測を、計画的に流れに乗せて移動させ、能動的に観測するためのアルゴリズムの開発を行う基礎研究である。予定通りにフロートを移動させるには、高分解能・高精度の3次元流速情報が必要である。そこでまず、海面漂流ブイの追跡実験から衛星海面高度生データの最適補完法を開発し、その高分解能海面高度データと海洋観測ビッグデータを組込んだ数値モデルにより3次元流速場を推定する。次に、昇降式フロートを用いた3次元漂流実験を行い、流れ場の検証と移動予測を行う。さらに、適切な深度にフロートを待機させて目的地に導くためのアルゴリズムを開発する。
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研究実績の概要 |
本研究は、海洋ビックデータと海洋モデルを組み合わせた高解像度モデルの開発し、実海洋における昇降式フロートの漂流実験結果をモデルで再現することにより海洋内部の流れの精度を向上させ、適切な深度にフロートを待機させて目的地へとフロートを導くようにするアルゴリズム開発を目指した基礎研究である。本年度はフロートの現場実験からフロートの運動特性の確認を行った。また、3次元モデルによるフロートの動きの再現実験、移動制御アルゴリズムの開発を中心に実施した。R4年12月に、太平洋西部(北緯21.93度,東経131.88度)に投入した2台のフロートについて、フロートの昇降スケジュール、待機深度の変更などの制御を行い、フロートの追跡実験を行った。現在、沖縄の南東付近まで移動した。一方、数値モデルを用いたフロートの運動の再現性について検討した結果、亜熱帯循環北側のフロートについては3か月以内の追跡においておおむね本数値モデルが有効であることが確認できたが、南西部に設置したフロートの挙動ではモデルによる再現性が低いことが分かった。本研究で使用しているモデルの境界条件に問題があるため、今後、使用するモデルをより広域のモデルへ変更する必要があることが分かった。また、このモデル上でフロートを能動的に目的地まで移動させるアルゴリズムの改訂を行った。詳細は公表できないが、亜熱帯循環の北太平洋赤道海流域を対象として、東西に1000㎞離れた地点に移動させる基本的なアルゴリズムを構築した。海洋の流れ自体を用いた移動にはかなり時間を要するため、さらに新しいアルゴリズムの開発が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
基本的には、コロナ禍で、発注した昇降式フロートの入荷が遅れたこと、船舶の利用制限により予定していた現場観測ができなかったことにより全体的な遅れがある。前年度後半に、新たに導入した昇降式フロートの運用が始まり現場実験が始まっている。投入したフロートの動きをある程度再現できるモデルデータが使用できるようになったことから、昇降式フロートを能動的に目的地に移動させるためのアルゴリズムの開発研究を進めることはできている。機器の導入や航海計画など、現場観測の面で大幅に遅れていたが、観測およびアルゴリズムの開発とも、研究計画を随時見直すことで、予定していた結果へと近づきつつあり、計算結果が徐々に得られている。遅れは基本的には機器の納品と約2年間の現場観測の停止によるものであるが、全体的に1年程度の遅れを保ちつつ進めている。フロート移動のアルゴリズムは幾つかできているところではあるが、特許申請を念頭に進めているため、学会発表や論文発表を控えながら進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、最終的に漂流実証実験により計算通りにフロートを移動させる実験を行う必要があるが、フロートの納品が遅れたことから現場実験が大幅に遅れている。また、実海洋における昇降式フロートの運用実験はバーチャルではなく、現実の時間であるため、モデルの再現性の確認実験は数か月以上の実時間が必要となる。全体的に1年程度の遅れを持っていることから、研究期間を2024年度まで延長し研究を行うこととした。 昇降式フロートの移動のアルゴリズムは幾つかできているが、実海洋に投入させたフロートの運動の再現実験を進めていく中で、これまで本研究で用いてきたモデルの計算領域では十分ではないことが分かってきた。そこで、解像度は低下するが、境界条件として使用している広域モデルの計算結果自体を用いた再現実験、また、フロートの能動的移動のために開発したアルゴリズムの汎用性と妥当性についての検討を行う。実海域でのフロートの昇降実験については、亜熱帯循環南西部(沖縄南東沖)まで移動させたフロートの監視と制御を引き続き行っていく予定である。現時点で、モデル内でフロートを移動させるための基本的なアルゴリズムの幾つかは構築できているが、より海洋物理学的な知見と力学を取りいれることにより、フロートの移動にかかる所要時間をできるだけ短くするための改良や新たなアルゴリズムの開発を行う。 さらに、主たる研究成果について、年度後半に予定する学会発表に合わせて、特許申請できるように進める。
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