研究課題/領域番号 |
20K20636
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分63:環境解析評価およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
小西 輝昭 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (70443067)
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研究分担者 |
大澤 大輔 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, 主任技術員 (90324681)
劉 翠華 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 主任研究員 (00512427)
及川 将一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, 室長 (10391301)
小林 亜利紗 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 物理工学部, 主任研究員 (30773931)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,610千円 (直接経費: 19,700千円、間接経費: 5,910千円)
2023年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2022年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2021年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2020年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
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キーワード | クロモスリプシス / 細胞がん化 / 染色体粉砕 / マイクロビーム / 線量集中制 / 線量付与 / m-FISH / 微小核形成 / 陽子線 / 染色体構造 / マルチカラーFISH / 染色体異常 / プロトン / 細胞核 / 細胞質 / DNA二本鎖切断修復 / DNA損傷 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題は、マイクロビーム照射技術を活用し、細胞がん化プロセスの一つである染色体粉砕と再編成過程(クロモスリプシス)に対する細胞質損傷を起因とする防御的な細胞応答の寄与を明らかにする。陽子線マイクロビーム細胞照射装置を用いて、細胞核のみ、細胞質のみ、あるいは、細胞核と細胞質の両方への三通りの照準照射実験を実施し、異なる標的部位に対する細胞応答を独立して評価する。具体的には、ライブセル観察によるDNA二本鎖切断修復・経時的変化解析、生存率曲線による細胞致死効果の評価、微小核形成率による損傷誘発解析、そして、マルチカラーFISH法を用いたクロモスリプシスの検出・染色体構造解析を行う。
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研究実績の概要 |
細胞がん化プロセスの一つであるクロモスリプシスの発生機序は染色体における同時多発的な破砕および、その後の異常なDNA修復経路機構によると考えられている。本課題は、マイクロビームSPICEによる細胞核・細胞質への撃ち分け照射技術を活用し、クロモスリプシスに対する細胞質損傷を起因とする防御的な細胞応答の寄与を明らかにすることを目的とした。今年度は、細胞核のみ(N照射)、細胞質のみ(C照射)、細胞核+細胞質((N+C)照射)のマイクロビーム照射を行い、細胞内防御応答の解析、微小核(MN)形成率の取得、生存細胞のクローンの取得、m-FISH法による染色体構造解析を実施した。 まず、N照射において、リン酸化ATMはDSB部位に局在した。しかし、ATMを阻害するとNRF2の核移行が完全に抑制されたことから、NRF2はATMの活性化に強く依存していることを示した。一方で、C照射において、ATMリン酸化を確認できなかった。このことから、細胞質傷を起因とした防御応答ではATMを介さずにNRF2活性化とDSB修復タンパク質の発現が誘導されると考えらえた。細胞核と細胞質への損傷誘発に対する細胞応答経路が異なることを明らかにした。 MN形成率の測定において、N照射条件に加えて、C照射、(N+C)照射を開始した。N照射と(N+C)照射(Cに陽子線1000個)へのMN形成率を比較した。その結果、N照射では照射粒子数100個程度で最大を示したのに対して、N+C照射では、照射粒子数300個程度で最大を示した。細胞質損傷を起因とした細胞応答が防御的に寄与した結果と考えられた。MN形成率が最大を示したN照射(粒子数100個)のクローンのうち20個程度に対してm-FISH法による染色体構造解析を行った。しかし、クロモスリプシス構造を有するものの検出に成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
顕微鏡システムの故障、さらに必要な部品の供給不足により修理に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
微小核形成率が最大を示す照射粒子数がN照射では100個、N+C照射では300個であることを確認した。この照射粒子数で得られたクローン(20個程度)のm-FISH解析からはクロモスリプシス構造を検出できていない。まだ解析クローン数を今後増やす必要がある。一方で、クロモスリプシス形成は、MN形成過程介さない可能性もあり、むしろDNA損傷の複雑性が寄与している可能性もあることから、生存率5%以下を示す照射粒子数500以上のクローンのm-FISH解析を進める。
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