研究課題/領域番号 |
20K20646
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研究種目 |
挑戦的研究(開拓)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分90:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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研究分担者 |
神戸 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 上級研究員 (30747671)
佐藤 充 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 上級研究員 (90391565)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
25,740千円 (直接経費: 19,800千円、間接経費: 5,940千円)
2023年度: 6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2020年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | β2ミクログロブリン / DNCS / 一本鎖抗体 / ナビゲーター / 体外排泄 |
研究開始時の研究の概要 |
透析アミロイドーシスは,長期透析患者に発症する合併症でβ2ミクログロブリン(β2MG)を前駆タンパクとするアミロイド線維が沈着する疾患である。本研究では新たな概念,Drug-Navigated Clearance System(DNCS)による治療法を提案する.DNCSとは体内の病因物質を別の正常な代謝経路へと誘導することで,体内から除去する治療戦略である.標的捕捉分子と目的部位への誘導分子の複合分子からなるDNCS薬剤により,血中β2MGを捕捉し,腎臓とは異なる代謝経路である肝臓へと誘導するために,in vitroでの標的捕捉から、細胞取り込み,臓器への誘導を検証し非臨床POCを構築する。
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研究実績の概要 |
透析アミロイドーシスなど広範な疾患に対する新たな概念,Drug-Navigated Clearance System(DNCS)による治療法を提案している。透析アミロイドーシスに対するDNCS戦略では血中のβミクログロブリン(β2MG)を捕捉し、本来の代謝経路である腎臓とは異なる肝臓へと誘導する。In vitroでの標的捕捉から細胞取り込み、in vivoでの臓器への誘導を検証し非臨床POCを構築する。ナビゲーターの機能向上を目指して、β2MGの捕捉分子として、抗β2MGの一本鎖抗体(scFv), あるいは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスIα3ドメイン(MHC α3)を、肝臓への誘導分子として、アポリポタンパクEのN末端領域(ApoE NTD)を選定し、両者の融合タンパク(ナビゲータ)を合成し、ナビゲータと脂質(DMPC)とを混合し、得られた複合体を改良版ナビゲーターとした。昨年度までに、健常C57Blマウスでβ2MGの体内動態を評価し、肝臓、腎臓へのβ2MG蓄積量の変化を確認した。従来のナビゲータ(ApoE NTD-MHC α3)と比較して、改良ナビゲーターではβ2MGの腎臓蓄積が減少し肝臓蓄積が増加することを過人した。しかしながら、健常ラットでは、ナビゲーターの本来の効果が埋没していると考えられる。そこで、今年度は腎欠損モデルマウスを用いて改良版ナビゲータの有効性評価を行った。25I-b2mを血中投与した20分後の肝臓集積量は、125I-b2mのみを投与した条件で全投与量の10.0%、125I-b2mとナビゲータを共投与した条件で23.5%であり、ナビゲータ投与群で2.4倍の肝臓集積亢進を認め、さらに、消化管への局在が確認され、当初想定したDNCS作用機序に従って血中b2MGを、おそらく胆汁排泄を介して体外に排除する効果があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
β2MGの捕捉分子として、血清中でも標的分子を効果的に捕捉できると期待され、また、in vitro において検証された一本鎖抗体を用いた改良版ナビゲーターの評価を行った。ナビゲーターの改良により、β2MG代謝経路の切り替え能を亢進することに成功し、本成果をBiomaterials Science誌(IF6.84)にて発表した。ナビゲータの機能を評価する上でより適した評価系として、両腎欠損モデルマウスを用いた実験系を確立し、同モデルを用いたβ2MGの臓器蓄積を評価してきたが、これらの研究はR3年度の前倒し実験であったことから、R4年度には、腎機能欠損マウスを用いたナビーゲー他の効果を検証することができた。実際にはR2年より複数種類の腎機能欠損マウスを作成してきたが、生存率が低く、上手くいかなかった。今回、短期モデルではあるものの、安定的かつ重篤な腎機能欠損モデルマウスで評価できたことは、想定を上回る結果であった。
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今後の研究の推進方策 |
正常状態ではβ2MGは腎臓へ速やかにまた効率的に分布処理されることから、本モデルでは、(1)β2MGの正常な代謝に基づく腎臓での処理と(2)ナビゲーターによる肝臓への誘導が速度論的に競争することとなり、前者が極めて効率的であることが大きく影響していると考え、R3年度に両側腎臓切除モデルを作成した。健常マウスを用いた場合と比較して、ナビゲーターによるβ2MGの肝臓蓄積の亢進効果はより顕著となったものの、依然として数値的に十分な効率の実証には至ら無かった。そこで、特に、両腎欠損マウスでは消化器系への著明なβ2MG蓄積が観察されたことから、腎臓切除後も肝臓以外にβ2MG蓄積が競合する臓器があることが課題であり、病理条件下でのナビゲーター効果を検証するのに両腎欠損は最適なモデルでないことがわかった。そこで、あらたに構築した C57BL/6マウスの両側の腎臓基部を結紮するモデルが構築できたので、R5年度はこの藻でデルを用いて検討を進める。
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