研究課題/領域番号 |
20K20649
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
高度科学技術社会の新局面
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
船曳 康子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (80378744)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | メディア依存 / 不登校 / 発達障害 / ASD / ADHD / MAF / ひきこもり |
研究開始時の研究の概要 |
近年、ひきこもりは、増加するとともに高齢化も指摘されている。この背景要因として、人間関係、雇用問題、いじめや学業不振、精神疾患が指摘されているが、近年の増加を鑑みると、別要因の検討も必要と考えられる。本研究では、情報化社会の膨大な情報と速さに心がついていけず、社会不適応となる人が増加している可能性について検討する。特に、度重なる急な変化に弱い発達障害の傾向を持つ人が影響を受けやすいと考え、全国調査や臨床フィールドでの実態調査と、fNIRSや脳波、行動学的検査・観察を通して、人の気質や特性ごとの情報処理機構を解明する。
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研究実績の概要 |
本年度は、まず、発達障害の傾向とメディア利用状況との関係性について分析した。11~18歳児の親子300組の保護者にADHD-RS-IVとMSPA質問紙で、子の幼少期(生来特性として)と現在(状態像として)のADHD傾向を、本人にInternet Addiction Test(IAT)を回答してもらった。IATとADHD傾向との相関係数を小学校高学年、中学生、高校生に分けて検討した。その結果、幼少期に現れる生来的なADHD特性、特に不注意が強い人は、小学生よりも中学生、それよりも高校生とあとになってからインターネット依存になりやすいことが示された。 次に、発達障害傾向と不登校傾向について分析した。発達障害の指摘されたことがない240例のうち、平均して月に一日以上、風や発熱等の理由なく登校しなかった割合は13.8%(33名)であったのに対して、発達障害の指摘をされたことがある155例では24.8%(39名)であった。その理由としては、前者では「起きられない」が11名と最多であったが、後者では「気分がすぐれない」が17名であり、「不安である」が両群の偏りが最も大きかった。以上より、メディア依存、不登校ともに発達障害傾向を十分に配慮して、予防する必要があると考えられる。 また、成人に対しては、ASSQが19以上の自閉傾向の高い人(89名)と、それ未満の低い人(408名)、臨床群(50名)の3群で、ASEBAのASRとABCLにより自他によるPersonal strengthsとメンタルヘルスを比較検討した。非臨床のASD高群では、特に女性で他者から高く評価されるが、メンタルヘルスは悪い傾向にあった。臨床群では、他者から低く評価されており、他者評価が臨床化を防ぐ要因になっているかもしれないが、心の負担にもなっていることが伺えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染拡大により、データ収集を見合わせたり、時期をずらしたりした。一方で、コロナ前後のデータ収集を行うことができたため、少し時期をずらしながらも、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記のデータ分析を進め、発達障害の各特性と程度と、メディア依存や不登校との関連をその介在因子とともに見出し、予防ができないか検討する。特に、コロナウイルス感染症による影響も受けていると考えられるため、その前後のデータ比較も加えて、新たな社会における対策も検討する。メディア依存においては、メディアの種類や年齢による特徴を早期から対応できるようなシステムを目指し、不登校に関しては、個別学習やオンライン対応などの視点からも各種の利点を生かして、発達特性にも基づいて取り組む。 成人においては、臨床域に満たない発達特性からくる不適応やメンタルヘルスの問題に対して、強みを生かしていくことを検討しているが、それにはメンタルヘルスの低下という負担が付随していることが示唆されたため、負担を軽減しながらの社会適応についてさらに分析を進めていく。また、男女差も歴然とみられるため、生得的因子と社会環境因子双方の視点から、性別特有の問題を見落とさないように分析する。 これらの成果を学術論文に発表して、提言につなげることを目指す。
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