研究課題/領域番号 |
20K20676
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井上 智勝 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (10300972)
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研究分担者 |
松浦 清 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70192333)
岩佐 伸一 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 主任学芸員 (70393288)
平川 信幸 沖縄県立芸術大学, 芸術文化研究所, 研究員 (40840715)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 肖像画 / 天皇 / 琉球国王 / 文廟 / 三季天神像 / 泉涌寺 / 肖像 / 御後絵 / 天神 / 釈奠(釈典)(釈菜) / 儒教祭祀 / 影供 / 人麻呂 / 菅原道真 / 釈奠 / 祖先祭祀 / 琉球 / ベトナム / 朝鮮 / 中華 / 彫像 / 御真 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、 (1)日本の宗教文化史研究を、東アジア宗教文化史研究の舞台に引き出す。 (2)宗教思想を媒介に、歴史学・美術史学の壁を越える範型=方法論を構築する。 以上2点の達成を、前近代の東アジア諸国における影幀を用いた人霊祭祀を題材に試み、日本史・中国史等の地域的な歴史研究の区分を超越した研究の促進と、歴史学・美術史学・思想史学・宗教学に跨がる学際的・国際的な議論を喚起することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、日本国内の調査の深化に加え、海外調査を踏まえた研究の進展があった。Zoomを用いた研究会を7回開催したほか、琉球沖縄歴史学会と共催で研究報告会を行った。論稿3本、研究報告8本、博物館での展示(「神仏の姿、人の姿」2022年10月5日~12月12日 大阪歴史博物館 9階常設展示室)、普及記事2本などを通じて研究成果を発表した。 帝王画像については、特に日本についての研究が大きく進展した。泉涌寺に所蔵される天皇の肖像画の調査および高精細画像の撮影によってその全体像を把握するとともに、後水尾以降孝明に至る天皇実録や宮内庁書陵部蔵の天皇忌法要の指図を調査し、江戸時代の天皇画像の使用方法についての知見を得た。琉球については、平川がこれまでの研究成果をまとめ、台湾で行われた国際学術会議で報告した。 釈奠関係については、遅れていたベトナムでの調査を現地に赴いて進めた。国立図書館・漢喃研究院所蔵の文廟祭祀の関連文献の調査によって文廟祭祀の実態を把握するとともに、海防市建瑞県の春羅文廟の現地調査を行った。また、日本を対象に孔子祭祀と天神・人麻呂祭祀との可換性に関する研究報告を行った。天神画像については、正面向きで直立する特異な構図の天神画像のうち、新出の雲谷等起筆天神画像の検討を、『萩藩閥閲録』などの文献資料を踏まえながら進め、防府天満宮が所蔵する「三季天神像」との共通性を見出し、領主毛利家との関わりや防長地域における天神信仰について考察した。 このほか、当初の目的になかった庶人の画像に関する研究も充実の度を増してきた。朝鮮について『東国續三綱行實圖』孝子図に描かれた影幀祭祀や、子孫への遺言状をもった姿で描かれた琉球士族層の肖像画についての研究を進め、祖先祭祀との関連を考察した。ベトナムについては、1868年に制作された知識人層の寿像の存在を海外研究協力者を通じて得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
帝王画像については琉球・中国・朝鮮に関しては、現在知りうるものは概ね把握した。日本について泉涌寺が所蔵する天皇の肖像画をほぼ全点調査・撮影し、且つ文献調査が進展したことは大きな成果である。ベトナムについては帝王の画像は未だ把握できていない(阮朝皇帝の写真は把握している)が、これはベトナムの個性を表す可能性がある。帝王画像については、今後分析を深化させることで所期の目的を上回る成果が期待される。 釈奠については、COVID-19の収束によりベトナムの文献が一定程度得られたことで、比較検討の土台が整った。ベトナムでの孔子画像の例は現在のところ得られていないが、それらの欠如は、帝王画像の欠如とともにベトナムの個性を表す可能性があるため、木主や立体像による祭祀を視野に入れて検討を続けたい。日本の釈奠については、天神や人麻呂との可換性についての検討を通じて、東アジアにおける個性についての見通しが得られつつある。天神信仰についても新資料と新知見を得ることが出来た。 絵画資料と文献資料双方からの検討も各研究対象について果たされており、所期の研究目的の遂行に向かって、COVID-19による遅れを巻き返しすことができていると判断される。 ただCOVID-19の影響や韓国への入国に11月まで査証が必要であったことなどから、韓国の現地調査は未だ果たせていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はこれまでの調査・研究を踏まえ、成果を集成して報告する年度である。成果報告は個別の論稿・口頭報告によるものが主体になるが、他に以下の方法により、国際的な議論の喚起、学界・社会への研究成果の還元を行う。1.海外研究協力者を交えた研究組織による国際的な成果報告会の開催。2.大阪歴史博物館における特集展示「描かれた人たち―尊崇・憧憬・追憶―」(会期:令和6年1月10日―3月4日)(http://www.mus-his.city.osaka.jp/news/tokushu/index.html#)3.泉涌寺所蔵の天皇肖像画集成図録の制作 ただCOVID-19の影響により数次に亙って補助期間の延長をしてきたため研究費が目減りしていることに加え円安や物価の高騰の影響もあり、万全な形での開催については心許ないところもある。研究組織の構成員で議論して最善の着地点を目指したい。 また、果たせていない韓国の現地調査は、海外研究協力者との議論を含め、年度の前半までに行い、国際的な研究報告会に繋げたいと考えている。天皇肖像画以外の、本研究において蓄積された文献・絵画資料のデータの公開についても検討し、著作権等の問題が克服できれば刊行物等の形で社会・学界に還元する。
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