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「嘘」の実験心理学的分析を援用して倫理原則を「正義」から「善」へと組み替える試み

研究課題

研究課題/領域番号 20K20678
研究種目

挑戦的研究(萌芽)

配分区分基金
審査区分 中区分1:思想、芸術およびその関連分野
研究機関新潟大学

研究代表者

栗原 隆  新潟大学, 人文社会科学系, フェロー (30170088)

研究分担者 古田 徹也  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00710394)
白井 述  立教大学, 現代心理学部, 教授 (50554367)
研究期間 (年度) 2020-07-30 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
キーワード解釈 / 善 / 慈善 / 不完全義務 / 正義 / 嘘 / 虚構 / 創作 / 不完全義務の相互性 / 正しい解釈 / 倫理学の革新 / 正しさの虚構性 / 意志 / 解釈学 / 正義論 / 完全義務 / 世代間倫理
研究開始時の研究の概要

時には対立を招きかねない「正義」に代えて、善をもって完全義務とする理路を模索することを通して、倫理原則として明らかにする研究である。
相手のためを思って騙る「嘘」の発生機序を解明する心理学的実験の結果を援用しつつ、単に、相手の福利を考慮するだけではなく、その時の「利害」や「関心」に拠るのでもなく、それまでの「いきさつ」や、将来的な「展望」なり「見通し」なりに基づいて、「善し悪し」の判断がなされるものと見込まれる。そうであるなら、「善し悪し」の判断は、従来からの「いきさつ」と将来的な「見通し」を繋ぐ、私たちの「生」の営みと切り離すことのできない働きであることについて、明らかにすることを目指す。

研究実績の概要

東北哲学会第73回大会(2023年10月14日、弘前大学)にて栗原は、一般発表「『精神の現象学』と『精神の解釈学』――ヘーゲルの『精神哲学』にあって、『心理学』が『精神の現象学」よりも上位に位置づけられるのは何故か?――」を口頭発表した。これは、「精神の現象学」が いわば仮象の学であったのに対して、「心理学」は『精神哲学』にあって、「精神の解釈学」としての機能と役割を見込まれたため、「精神の現象学」より上位に位置づけられたことを解明するものであった。
2023年12月2日に東京大学で開催された「シェリング国際会議 Internationale Schelling-Tagung 2023 in Japan:Natur-Geschichte-Kunst. Schellings Philosophie im Zeitalter des Anthropozaens」にて、Takashi Kurihraは、「Der Zirkel bei der Auslegung und die Grundlegung des Idealismus.」を口頭発表した。
栗原隆は、論考「ヘーゲル『精神哲学』の豊かさとハイデルベルク」を、『比較宗教思想研究』(第24輯、2024年3月、19~51頁)にて発表した。ベルリン期で充実を見せたヘーゲルの『精神哲学』は、ハイデルベルクでの人的交流を介して得ることのできたことを実証、ティーデマンから、チェセルデンによる報告に由来する新生児における三次元知覚の獲得についての知見を得ることが出来た経緯、さらには、ベルリン期での「美学」の充実は、ハイデルベルクへのヘーゲルの招聘にあたって尽力したボアスレとの交流によるところが大きかったことを実証した。
なお、栗原隆は、単著『ヘーゲル「精神哲学」の基底と前哨』(知泉書館、2024年、全14章、印刷中)を刊行予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「『嘘』の実験心理学的分析を援用して倫理原則を『正義』から『善』へと組み替える試み」というテーマで研究を進めてきた中で、「正義」は制度に則って形式的に規定されるのに対して、「善」の判断には、「解釈」が介在しなければならない見極めに到った。これを承けて、2023年は、解釈の機序の究明に注力することになった。
2023年12月2日に東京大学で開催された、「シェリング国際会議」で発表した、「Der Zirkel bei der Auslegung und die Grundlegung des Idealismus.(解釈における循環と観念論の基礎付け)」では、チュービンゲン神学校における聖書解釈学に反発を覚えたシェリングは、ゲオルグ・フリードリヒ・マイアーの一般解釈学で基礎づけられた解釈学的循環が、ヨハン・ゲオルグ・ズルツァー、さらにはヨハン・アウグスト・エーベルハルトを経て、フィヒテに流入した「循環」の機序に触発されて、『超越論的観念論の体系』において、「知の根源的内容が根源的な形式を、そしてまた逆に、知るということの根源的形式が知の根源的内容を前提し、そして両者が相互に条件づけあっている」(Schelling.I-9-1,S.49f.)という「学問にとって避けられない循環」に立脚することになった。
2024年夏に刊行される、単著『ヘーゲル「精神哲学」の基底と前哨』(知泉書館、2024年、全14章)では、第一章「少年ヘーゲルと解釈学のモチーフ」、第二章「シェリングとチュービンゲン神学校での解釈学」、第三章「『導入教育』と心理学もしくは『精神哲学』への旅発ち」など、従来から言われてきたシュライエルマッハーが解釈学の祖ではなく、それよりも遡ってマイアー由来の解釈学が、ドイツ観念論として花開いたことを実証した。以上のような研究成果に鑑みて、「おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

「『嘘』の実験心理学的分析を援用して倫理原則を『正義』から『善』へと組み替える試み」については、「正義」が制度に則って形式的に規定することが出来るのに対して、「善」の判断には、当事者の状況や境遇、見通しについての第三者の「解釈」が介在しなければならないことが明らかになってきた。そこで2023年度は、「解釈」の機序を中心に研究を進展させてきた。今後は、「嘘」と「虚構」と「創作」の成り立ちと、それらを判定する尺度や基準を探究する方向へ、研究方向をシフトさせるとともに、新たな研究課題での科研費の申請も迫られるものと考えられる。

報告書

(4件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 2020 実施状況報告書
  • 研究成果

    (27件)

すべて 2024 2023 2022 2021 2020

すべて 雑誌論文 (11件) (うちオープンアクセス 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件) 図書 (5件)

  • [雑誌論文] ヘーゲル『精神哲学』の豊かさとハイデルベルク2024

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 24

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 〈正しいこと〉は〈善いこと〉か?――「正義は行われよ、世界が滅ぶとも」をめぐって――2023

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 23 ページ: 1-13

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Developmental changes in gaze patterns in response to radial optic flow in toddlerhood and childhood.2022

    • 著者名/発表者名
      Shirai, N. & Imura, T.
    • 雑誌名

      Scientific Reports, 12, 11566, 1-11.

      巻: 12 号: 1 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1038/s41598-022-15730-5

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Developmental Changes in the Magnitude of Representational Momentum Among Nursery School Children: A Longitudinal Study.2022

    • 著者名/発表者名
      Mori, S., Nakamoto, H., Shirai, N., & Imanaka, K.
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology, 13:882913, 1-11.

      巻: 13 ページ: 1-11

    • DOI

      10.3389/fpsyg.2022.882913

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] シェリングとチュービンゲン神学校での解釈学2022

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 22 ページ: 1-27

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 前期ウィトゲンシュタインにおける『意志』とは何か2022

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 2022年1月号 ページ: 105-116

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 自然の詩情と精神の忘恩――ヘーゲルにおける「精神哲学」と「自然哲学」の関係づけ2021

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      理想

      巻: 705 ページ: 57-70

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 生理学や心理学を呑みこみながら――湧き立つ精神哲学2021

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      比較宗教思想研究

      巻: 21 ページ: 1-30

    • NAID

      40022556065

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 学校場面における教育・学習への拡張現実技術の応用に関する研究動向 ――その現状と展望2021

    • 著者名/発表者名
      白井述
    • 雑誌名

      人文科学研究

      巻: 148 ページ: 103-120

    • NAID

      120007177221

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 変容(Metamorphose)と進展(Evolution)2020

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      シェリング年報

      巻: 28 号: 0 ページ: 74-86

    • DOI

      10.32297/schellingjahrbuch.28.0_74

    • NAID

      130007925793

    • ISSN
      0919-4622, 2434-8910
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 青年の出現と世界との疎隔――ヘーゲル『精神哲学』における世代論の展開2020

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 雑誌名

      思索

      巻: 53 ページ: 121-143

    • NAID

      120007174714

    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 「精神の現象学」と「精神の解釈学」――ヘーゲルの『精神哲学』にあって、「心理学」が「精神の現象学」よりも上位に位置づけられるのは何故か?2023

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 学会等名
      東北哲学会第73回大会(於、弘前大学、10月14日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Der Zirkel bei der Auslegung und die Grundlegung des Idealismus.2023

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 学会等名
      Internationale Schelling-Tagung 2023 in Japan. (於、東京大学、12月2日)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ヘーゲル『精神哲学』の豊かさとハイデルベルク2022

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 学会等名
      日本ヘーゲル学会第33回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 映像コンテンツへの子どもの選好に空中像表示のおよぼす影響2022

    • 著者名/発表者名
      白井述・近藤理沙・小泉直也・田中恒彦
    • 学会等名
      日本心理学会第86回大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 少年ヘーゲルと解釈学のモチーフ2021

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 学会等名
      日本シェリング協会第30回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 青年シェリングと解釈学のモチーフ2021

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 学会等名
      東北哲学会第71回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 前期ウィトゲンシュタインにおける『意志』とは何か2021

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 学会等名
      日本哲学会第80回大会学協会シンポジウム
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 偶然とアイロニー――英米圏の現代哲学の一断面をめぐって2021

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 学会等名
      比較思想学会第48回大会シンポジウム
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 幼児・児童を対象としたリモート視覚発達実験の有効性 ―トライポフォビアの発達実験2021

    • 著者名/発表者名
      白井述(+笠原舞・鈴木千春・佐々木恭志郎・山田祐樹・伊村知子)
    • 学会等名
      日本視覚学会2021年度夏季大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 反復的な聴覚刺激が時間間隔知覚に及ぼす影響の再検討2021

    • 著者名/発表者名
      白井述(+益田佳卓)
    • 学会等名
      日本心理学会第85回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] オンデマンド遠隔方式による乳児の視知覚機能評価手法の開発2021

    • 著者名/発表者名
      白井述(+河合瑞季・伊村知子・大塚由美子)
    • 学会等名
      日本心理学会第85回大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] ヘーゲル『精神哲学』の基底と前哨(印刷中)2024

    • 著者名/発表者名
      栗原隆
    • 総ページ数
      319
    • 出版者
      知泉書館
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 英米哲学の挑戦 : 文学と懐疑2023

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 総ページ数
      259
    • 出版者
      放送大学教育振興会
    • ISBN
      9784595323911
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] このゲームにはゴールがない : ひとの心の哲学2022

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      筑摩書房
    • ISBN
      9784480843272
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 図説 視覚の事典2022

    • 著者名/発表者名
      日本視覚学会
    • 総ページ数
      360
    • 出版者
      朝倉書店
    • ISBN
      4254102941
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] はじめてのウィトゲンシュタイン2020

    • 著者名/発表者名
      古田徹也
    • 総ページ数
      320
    • 出版者
      NHK出版
    • ISBN
      4140912669
    • 関連する報告書
      2020 実施状況報告書

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公開日: 2020-08-03   更新日: 2024-12-25  

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