研究課題/領域番号 |
20K20684
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
長谷 千代子 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (20450207)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 菜食主義 / 仏教 / 中国 / 日本 / 台湾 / 倫理 / 環境主義 / 宗教文化 / アニミズム / 健康 / 積徳 / 道徳 / 宗教 |
研究開始時の研究の概要 |
現代アジアに広まる菜食実践の実態を調査し、その背後にある多様な思想の系譜を明らかにし、現在進行形で人々が編み出しつつある新たな道徳がなにを目指しているかについて考察する。本研究では、現代アジアにおける菜食実践の広がり、その背景にある仏教や動物愛護、アニミズムなどの思想状況、菜食実践者の動機や思想、それらの動向が社会に与える影響について調査・考察する。具体的には、文献研究によって基本的情報を収集しながら、菜食実践者らのライフヒストリーを収集・分析する。その調査結果をもとに、菜食産業の経済学・農学・生態学との学際研究の可能性を探りつつ、実践的な道徳研究の方向性を確立する。
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研究実績の概要 |
2022年度の主な研究実績は、下記のとおりである。 ・2022年6月5日 学会発表「経験と宗教:離見の見から考える」文化人類学会(明治大学)/・2022年9月12日 白老で菜食レストランの店主にインタビュー/・2022年12月2~8日 東京佛光山寺、法水寺などで菜食者にインタビュー/・2023年12月 『岩田慶治を読む』(「第3章 岩田慶治の「宗教」と「宗教文化」」を執筆)出版/・2023年1月9~11日 東京佛光山寺で菜食者にインタビュー/・2023年1月26日 海外学術雑誌Open Theologyに論文「Autoethnographic Analysis on the Religious Experience of the Mizuko」を投稿/・2023年3月2~9日 台北で一貫道の菜食者にインタビュー、菜食レストラン見学/・2023年3月14~18日 シンガポールで佛光山寺の菜食者にインタビュー。菜食レストラン見学。 2022年度は、特にインタビュー調査に力を入れた。特に台北とシンガポールでは、台湾系宗教関係の菜食者のインタビュー調査を実施することができた。台北でのインタビュー及び菜食レストラン見学では、菜食主義のタイプの分類において、日本とはやや異なる傾向が見られたので、早急に違いを整理したいと考えている。 6月で学会発表した内容を踏まえて、英語論文にしたものを2023年1月に、海外の雑誌に投稿した。水子に関する印象的な出来事が個人のなかでどのように経験され、理解されるかを論じた理論的研究で、菜食者の経験談を分析するための観点や手法についての考察の基礎となるものである。12月に出版された本の1章は、同様の考察を岩田慶治の読解に適用したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍が収束に向かってきたため、2年前に行う予定だったシンガポールと台湾での調査をようやく実施することができた。インタビュー調査も順調に蓄積出来ている。ただし、分析のための時間が十分に確保できなかったこと、2019年に学会発表を終えてあとは論文にするだけの材料が、未だに論文化できなかったことが心残りである。コロナ禍でいままで滞っていた実地調査を優先させたため、やむを得ない面もあるが、慢性的な研究時間不足に悩まされている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については、本科研の延長が認められたのと、本科研を発展させたテーマでの基盤(C)が採択されたため、資金面はかなり恵まれた状況にある。台湾、シンガポール、香港など、菜食主義が盛んな地域での海外調査を積極的に行いたいと考えている。それと同時に、2023年度中には、2019年までの研究成果に基づく論文を英語で発表したい。この論文は香港大学の王向華氏、東北大学の川口幸大氏らと出版する書籍の一章として執筆する予定である。また、インタビュー資料がある程度量的(20名弱)に蓄積できたので、分析に本腰を入れて、どのような契機が菜食を促進するのか、菜食の開始と心身や思考の変化がどのように相互作用するのか、彼らに共通して見られる要素(思想傾向、社会的影響など)はあるか、といった点についての仮説を立てる作業を行いたい。2023年度と24年度くらいまでは、引き続きインタビュー調査と観察調査の蓄積を行い、菜食が広まる背景にある人々の倫理観の変化や社会変化の分析につなげていきたい。
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