研究課題/領域番号 |
20K20688
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分1:思想、芸術およびその関連分野
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 修司 立命館大学, 映像学部, 教授 (90469164)
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研究分担者 |
飯田 和敏 立命館大学, 映像学部, 教授 (10757032)
竹田 章作 立命館大学, 映像学部, 教授 (30756185)
斎藤 進也 立命館大学, 映像学部, 准教授 (70516830)
奥出 成希 立命館大学, 映像学部, 教授 (80756792)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
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キーワード | 伝統玩具 / ゲーム / 遊び / デジタルゲーム / ZOOM / コロナ禍 / ファミリーコンピュータ / TVゲーム / 作家 / 倫理 / アニメーション / 芸術 / アーカイブ / 難易度工学 |
研究開始時の研究の概要 |
アニメーションとゲームは、すでに社会に浸透し、文化・芸術と捉えられつつある。一方でこれらは巨大な消費者層に支えられた大衆芸術であり、消費者主導で産業としては大きな成功を収めている。 しかしこうした拡大路線の中で、それぞれの産業黎明期に作り手に存在していた「消費者の育成意識」や「子供たちへのメッセージ性」などの文化・芸術的意識は軽視され続けている。 本研究では、アニメ・ゲーム作家と消費者の新たな関係に着目し、作家側に求められる「大衆芸術における倫理観・社会的責任観」を内側から調査しアーカイブする。また、アニメーションとゲームの世界に与える影響に鑑み、この啓蒙を目的とした作品を制作し発信を行う。
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研究実績の概要 |
23年度の取り組みとして作品展示と発信と次なる研究への情報収集を行った。これまでは、ゲーム制作研究の到達として具体的な作品制作のアプローチを行ってきており、過年度においても複数作品でのゲーム実装と受賞を行っている。本年度は特にデジタルゲーム研究の場での発信を行った。 とくにゲーム制作者の倫理を作品に落とし込むためのメソッドとして「玩具」を用いたデジタルゲームに着目した取り組みを行っている。これは、古くから存在する伝統玩具や、実際に子供時代に体験したことがあるプラスチック製玩具などをモチーフに、デジタルゲーム化を行うことで以下に2点を見出すという意図となっている。1)制作者自身におけるゲームのコアデザインの発見をデジタル作品以外から見出す点。2)体験者自身に新たな環境をもたらし親子でゲームを楽しめる環境を掲示する点。以下にそれぞれの研究成果発表の具体的な内容を記載する。 1)Replaying Japan 2023で発表した"Japanese Sumo game with center-of-gravity feedback dev"は、相撲に着目した研究である。一方でこれをデジタル化するときに、すでに伝統玩具として存在する複数の相撲玩具に着目したうえで「重心」を操作するコアデザインに着目し、これを新たなデジタル化を行うことで、その制作経緯とユーザー評価を発表した。 2)日本デジタルゲーム学会14回年次大会では2つの研究発表を行った。一つはデバイスにサイコロを用いたデジタルゲーム作品を用いた研究であり、サイコロの「運が可視化される要素」をデジタルゲームで実装したものとなる。もう一つは、バネ状の玩具である「スリンキー」を用いたデジタルゲーム作品を用いた研究であり、手によるダイレクトな「スリンキー」の操作と、ゲームでよくモチーフとされる「ジャンプ」を同期させる研究となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度では、3つの作品制作と研究発表を行うことができた。特にこれまでの研究成果から、「玩具」を用いた操作という注目点が「親子でのゲーム体験」をもたらすことが発見されたため、これに注力した作品作りと、研究発表を行っている。 また、これまでの取り組みも含めて、「ゲームのコアデザイン」を生み出す取り組みは、ゲーム産業最大手であるテンセントグループに注目されている。次年度においては研究制作支援という形で、ゲームとアートの祭典である「artbit展」への出展とワークショップ支援という形態で、支援を得るための準備を行っている。 また、京都という地場において混在していた、デジタルゲーム制作教育を行っている3つの大学と共に共同ワークショップなどを開催し、本研究の研究テーマの実装を行った。すなわち、アルドゥイーノなどの制御基板を使ったワークショップや、AIなどを使ったデジタルゲーム制作のワークショップである。共にこれまでの伝統と新たな潮流を、坩堝とする環境を提供し、学生にデジタルゲーム教育面での多様性を担保するための実装として評価できる。本研究では、実装面としてインキュベーション型の取り組みも行うと共に、ここから多様な作品制作が発信できる環境を構築しつつある。 一方で、昨年度に示した計画には「ゲームオリジン世代のインタビュー」を実現したいとしていた。しかし対象者や所属企業からの許諾といった点があり、公開段階をゴールとするのは現実的ではないと判断した。これは本予算申請時において当初より想定していた部分もあり、本研究の目的にはオリジン世代の言葉ではなく、思想をエッセンスに凝縮し「現代のゲーム制作教育に落とし込む」ものとしている。その具体的成果が、作品発表と研究発表であり、今年度においては、改めてこうした評価基準においての進展と考えている
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度として、研究発表と作品展示、および企業連携を含めた実装を行う。 【作品展示】本研究の最終成果として、これまで複数年度に渡って行われてきた作品や、新たなゲーム制作教育によって実現した作品を複数展示することで、本研究の成果として実現する。このとき会場としては大学内のラボを中心にしつつも、毎年京都で行われている、ゲームとアートの融合展示である「artbit展」会場などでもこれを実現する。 【次研究への伝搬】ニューヨークで行われるReplayingJapanに参加し、海外の研究者と交流を行うことで、これまでの取り組みを振り返りつつ、次の研究に発展させる。また、国内の学会において研究発表を継続するとともに、これまで発見したメソッド「伝統玩具のゲーム化」という方法論の意義を研究面でも広範に伝搬するようにしていく。 【産業面との協力と融合】ゲーム産業では、テンセントをはじめとしたグローバルゲーム企業のみならず、国内でも新たなコアデザインの必要性が高まっている。本研究の意義として、古くから存在する思想をどのように現代ゲームに援用していくかは、こうした商業的な実装にも結び付くことがわかってきた。企業との協力も得ながら、最終年度として企業との連携を強めていくことを推進していく。
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