研究課題/領域番号 |
20K20704
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
竹内 史郎 成城大学, 文芸学部, 准教授 (70455947)
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研究分担者 |
松丸 真大 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30379218)
中川 奈津子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究系, 准教授 (50757870)
小西 いずみ 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (60315736)
下地 理則 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80570621)
林 由華 神戸大学, 人文学研究科, 助教 (90744483)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 日琉諸方言 / 格配列 / 相互識別 / ハダカ減少 / 示差的目的語標示 / 名詞句階層 / デフォルト解釈 / 文法化 / 日琉諸語 / 他動詞文 / 格標示 / 語順 / 有生性効果 / 無生性 / 文脈 / 格 / ハダカ現象 / 脱主題化 / ハダガ現象 |
研究開始時の研究の概要 |
述語の項がハダカであることを「ハダカ格」と称し,抽象的な「格」を認めるかのように言い表されることがある。このことは,述語と項の関係が一律に「格」という文法的手段によって定まるという考えが支配的であることを示している。本研究では,日琉諸語を広く調査・観察し,述語と項の関係を定める手段が多様であることを明らかにする。また,ハダカ現象は格標示の省略ではなく、それに取って代わる手段(語順,有生性効果,無生性,文脈など)があることにより生じていることを確かめる。格という文法カテゴリーにおける文法化の度合いが様々に異なることが予想されるが,この点をふまえ日琉諸語の格カテゴリーについてのモデルを構築する。
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研究実績の概要 |
今年度の研究において見いだされた一つの結論は以下の通りである。文法記述を行う研究者の間には、述語と項の関係は「格」という文法的な手段によって一律に定まるという暗黙の了解があり、長らく対案のないままこの暗黙の了解を前提として研究が行われてきた。しかし、この暗黙の了解から距離を置かなければ統語記述が甚だ不十分になってしまう言語があり、そして文文法のレベルにおける説明に終始するだけでは不十分な言語があることが明らかとなった。有生性効果、無生性といった項名詞の意味特徴による相互識別の手段や、文脈や世界知識といった語用論的な相互識別の手段を広く包摂し、格という文法カテゴリーにおける文法化のメカニズムを捉えていくような理論が望まれることが確認された。よりいっそう統語記述が改善されるような理論的な考察を深めていかなければならない。 研究代表者、研究分担者らが中心になって日琉諸方言における情報構造と文法現象をテーマとした論文集を刊行する計画が進行している。出版社も決まっており今年度中の刊行を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、方言調査のためのフィールドワークをほとんど行うことができなかった。こうした状況が3年もの間続くことは予想しておらず、本研究課題の進捗状況に大きく影響することとなった。これにより、当初の計画通りに研究を行うことをあきらめざるを得ず、方向の転換を余儀なくされた。各地に在住する方言話者の方々の承諾を得、ようやく調査を行うことができるようになったのは2023年の3月に入ってからである。そして2023年3月末に本研究科課題の研究期間が終了した。以上が研究期間を1年延長した主な理由であり、また、上に「やや遅れている」と答えた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新たに見出された研究課題について記す。研究の進展により、現代東北諸方言と古典語(上代奈良方言、中古京都方言)の格配列には、有標対格性(主語はもっぱらハダカであるのに対し、目的語の方は有形格標示されうる)が認められるわけであるが、現代東北諸方言と古典語における格配列の共通する基盤についての研究が進んでいきそうである。すなわち、有標対格性が生じる談話的基盤が明らかになりそうである。 上代と中古の文献を調査してみると、他動詞文において、主語である項より目的語である項が圧倒的に出現しやすい(主語である項だけが出現する割合は16.60%、目的語だけが出現する割合は73.15%、そして両者が共に出現する割合は10.24%)。ここから、有標対格が生じる談話的な基盤として、出現しにくい項の標示はせず、最も突出して出現しやすい項の内在的な性質についてその標示を行うといった仮説が成り立ちそうである。なお、この仮説には項のデフォルト解釈と格標示の関係を見定めることが不可欠である。以上は、今後の本件課題における重要な観点になると考えられる。
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