研究課題/領域番号 |
20K20707
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分2:文学、言語学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋学芸大学 |
研究代表者 |
赤嶺 亜紀 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 教授 (20308745)
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研究分担者 |
上宮 愛 金沢大学, 人間科学系, 講師 (50555232)
仲 真紀子 立命館大学, OIC総合研究機構, 教授 (00172255)
水野 真木子 金城学院大学, 文学部, 教授 (90388687)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 多文化共生 / 日本語話者 / 子どもの司法面接 / 外国語通訳 / 証言の信憑性 / 日本語弱者 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では外国語通訳を必要とする子どもの司法面接(虐待の被害事実確認の面接)を精査し,実用的な面接法を提供することを目指す。 そのために日本語話者の児童を対象に面接実験を行い,外国語通訳を介する条件と通訳を必要としない条件を比較する(研究1)。また通訳者の訳出表現(丁寧さなど)が証言の信用性に及ぼす影響を検討するために,司法面接の実務家(児童相談所職員,警察官,検察官)と大学生を対象に実験を行う(研究2)。それらの成果をもとに,子どもの発達を考慮した外国語通訳のいる司法面接法と,証言の信用性を損なわない通訳ガイドラインを案出する。そして外国人児童を対象に面接を行い,その実用性を確める(研究3)。
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研究実績の概要 |
1)子どもを対象とする外国語通訳の課題に関する研究:水野は金城学院論集社会科学編に「通訳を介した子どもの司法面接の問題―子どもの話し方、特殊な語彙の訳出についてー」を発表した。大人とは異なる,子どもに特異的な外国語通訳の課題を指摘した。この成果は研究2「通訳者の発話スタイルと子どもの証言の信憑性の評価」の実験刺激作成と,研究3「外国語通訳を必要とする日本語弱者の司法面接ガイドラインの草案と社会実装に向けた検証」におけるガイドライン作成に有益な知見を含むものと考えている。 2)母語と第二言語による目撃証言に関する研究:仲は(Hu, Z.と共著)Psychology, Crime & Law誌に ”Eyewitness testimony in native and second languages” を発表した。中国語と日本語のバイリンガル話者にビデオクリップを提示し,その内容を聴取し,母語条件と第二言語条件の報告の量と質を比較したところ,母語条件で正確な報告が多かったが,不正確な情報も多かった。この研究の対象は子どもではなく,外国語通訳を介した面接ではないが,使用する言語が目撃証言の信憑性に及ぼす影響を示したものであり,研究3において,外国語通訳の協力を要請する/しない判断の基準を検討する際,重要なエビデンスのひとつと考えている。 3)子どもの被害事実確認における多職種連携に関する報告:日本法社会学会2023度大会 (名古屋大学)において,赤嶺は「法と心理学の接点:依頼者中心の法律相談と司法面接、心的ケアの面接の比較」を報告した。事件・事故の被害を聴く支援者が大きな心的負担を感じることは稀ではなく,その対処の必要性を指摘した。子どもの司法面接においては,通訳者が同様の深刻な事態を体験することが懸念されるため,この点を研究3のガイドライン作成に反映させたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)研究1「外国語通訳を介した模擬司法面接」:上宮が司法面接のトレーニングをした立命館大学大学院の学生2名の協力を得て,日本語話者児童の面接6ケース,非日本語話者(ウズベク語を第一言語とする)児童の面接3ケースを実施した。なお,ウズベク語話者の面接は,本課題の研究協力者・アシューロバ(金城学院大学)が担当した。これまでに水野らと録画データを視聴し,子どもの応答と通訳が困難であった点等を確認し,子どもの通訳の課題を議論した。これらについては,水野とアシューロバ,佐藤(本課題の研究協力者)が今秋の学会報告(2題)にむけて,さらなる分析に取り組んでいる。 2)外国語通訳を介した子どもの模擬司法面接の再分析:研究2「通訳者の発話スタイルと子どもの証言の信憑性の評価」の刺激映像を作成するために,上宮と赤嶺が2018-2020年に行った模擬面接17ケースについて,改めて発話の種類(「はい/いいえ」だけの応答,文による応答など)と発話の長さを分析した。子どもの応答の内容の分類(人物/事物/場所/時間に関する情報など)は現在進めている最中であるが,この発話の分析は作為的にならないよう,面接者とは異なる2名に依頼した。これらの成果の学会誌投稿に向けて,原稿の執筆に着手している。 3)外国語通訳の専門書の出版:水野は今年度末(2月)刊行に向けて,外国語通訳の実際と課題について専門書の執筆に取り組んでいる。 4)研究1実験参加者の募集:赤嶺が同僚(米国出身)の協力を得て,愛知県内のインターナショナルスクールに,児童生徒の研究1の模擬面接への参加を相談中である。新学期(秋)に実験を始められるよう,学校の理解を得られるよう調整を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
1)研究1「外国語通訳を介した模擬司法面接」:上宮から司法面接のトレーニングを受け,昨年度の実験で面接者を務めてくれた立命館大学大学院の学生2名に引き続き協力を要請する。通訳者は,2017,2018年に徳山大学(当時)・羽渕由子先生と上宮,赤嶺らが実施した「通訳介入が必要な外国人を対象とした司法面接ワークショップ」の参加者から協力の承諾を得ている。被面接者の子どもは,あらためて愛知県(赤嶺の所属大学の近隣)の小学校や関西地区に加えて名古屋市近郊のインターナショナルスクール等に協力を要請する。実験は大学の授業期間外だけでなく,授業期間の土曜日にも実施できるようスケジュールを調整する。 2)研究2「通訳者の発話スタイルと子どもの証言の信憑性の評価」:上宮と赤嶺が2018-2020年に行った外国語通訳を介した子どもの面接データと,昨年度実施した外国人児童(ウズベク語話者)の面接データを基に刺激映像を作成する(通訳者が①子どもの年齢相応の表現,②不相応に丁寧な表現,③不自然な幼児語を使用)。完成した映像を大学生や教育・福祉の専門職者(保育士・幼稚園教諭)らに提示し,子どもの証言の信憑性について評価を求める。またインターネットを利用した実験・データ収集も検討する。 3)研究3「外国語通訳を必要とする日本語弱者の司法面接ガイドラインの草案と社会実装に向けた検証」:上宮は昨年度の「警察トレーナーを対象としたフォローアップ研修」等を通して司法面接の実務を支援してきたが,石川県警と協力して,今秋に「外国語通訳を必要とする司法面接の研修」を企画している。この研修では,水野らが通訳の専門的知見を提供し,子どもの面接の通訳の問題について参加者と意見交換をする。そこで得た情報も総合して,司法面接における外国語通訳者との共同について検討する。
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