研究課題/領域番号 |
20K20716
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 英男 富山大学, 理学部, 客員教授 (30134993)
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研究分担者 |
竜田 尚希 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 助教 (30521314)
泉 吉紀 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60793669)
高橋 浩二 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (10322108)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2021年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2020年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 土器・陶磁器の破片 / 磁化 / 帯磁率 / 年代推定 / 製品復元 |
研究開始時の研究の概要 |
遺構の焼土の熱残留磁化が過去の地磁気を記録する特性を利用する年代研究が考古学で活用されている.土器,陶磁器は,焼土より安定な磁化を持っているが,焼成後に移動するので地磁気方向の研究には使えないとされてきた.しかし焼成時に水平に置かれておれば,磁化は地磁気伏角を記録している.本研究では,土器・陶磁器の底部片の磁化から伏角を求める方法を検討し,精度を高めて年代・産地研究に利用する.磁化利用はまた,土器・陶磁器の破片の製品復元にも利用できる.考古学に貢献する,土器・陶磁器の破片を用いる磁化研究法を開発し,方法を役立てられる国内外の試料で研究を行う.
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研究実績の概要 |
焼土,土器・陶磁器は生成時(焼成時)に地磁気(ベクトル)の記録となる残留磁化を獲得する.土器・陶磁器は生成後に移動するので,残留磁化の偏角は不明になるが,伏角は焼成時の水平面がわかれば復元できる.またテリエ法等の実験により地磁気強度も求められる.本研究では,土器・陶磁器の破片の特に,水平面が推定可能な底部片を用いる地磁気の復元,それによる年代や製法の研究方法の開発を一つの目的としている.また磁性の別パラメータである帯磁率による土器・陶磁器の新規研究も目指して研究を進めている. 北海道の遺跡焼土と擦文土器片の磁化研究を進めた.土器底部片の研究では,考古学年代が曖昧なものもあったが,磁化伏角について良好な結果が得られた.そして焼土の研究も併せて,北海道でも考古地磁気が遺構・遺物の年代研究に有用と示された. 土器・陶磁器の破片の研究として,泉氏(共同研究者)は現代の器を用いる研究を実施した.各地で製作された資料の測定の結果,非破壊の磁化測定による地磁気伏角(緯度)推定の有効性が示された.故意に破片にした器の,破片の磁化による復元も行えた.従来行った盃での研究とも比較して研究方法の改善も検討している.また,関連研究として,研究協力者の菅頭氏(青山学院大)は,三鷹市の遺跡の敷石について,磁化測定と消磁による再加熱の影響を認める成果もあげている. 以上の本年度の研究結果について,整理して公表の準備を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
擦文土器片の磁化研究では,土器の底部片を用いる磁化伏角の研究の有用性もわかり,遺跡の焼土の研究と併せて,北海道でも考古地磁気が遺構・遺物の年代等の研究に利用できる可能性が示された.研究協力者の菅頭氏は,遺跡から出土された敷石の被熱を研究して,磁化測定と消磁実験から敷石がその場で加熱されていることを明らかにする成果もあげている. また土器・陶磁器の破片の研究では,現代の各地の器について非破壊の磁化測定による地磁気伏角(緯度)推定の有効性が示され,破片資料からの磁化による製品復元の研究も行えた.併行して,既に実施していた青銅製品の破片の磁化研究と年代研究への適用で得た成果を学会誌論文として投稿し採択された. 前年度に実施した陶磁器の帯磁率研究(非破壊測定)において認めた,陶磁器によっては,途中で胎土を変えて強度を保つ製法が行われた可能性について更なる検討を予定していたが,測定機器の故障があり中断した. 上述の様に,多くの研究を進めて良好な結果を得ることができたが,機器故障で一部の研究が滞った.また発表を予定していた学会の中止もあり,成果のまとめと公表は次年度にすることになった.以上より,研究はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
多くの研究を進めて良好な結果を得ることができたが,測定機器の故障で一部の研究が滞った.特に,珠洲焼き壺の携帯型帯磁率による測定が途中で中断しており,新たに購入した機器での追加実験を行う.また北海道の焼土,遺物での磁化測定のデータを整理し,考古地磁気の解析を詳細に行って,結果をまとめる. 発表を予定していた学会の中止もあり,本研究の成果のまとめと公表は次年度にすることになった.研究分担者,協力者との結果の検討も行って,成果をまとめ,学会発表および論文での公表を行う.
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