研究課題/領域番号 |
20K20723
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分3:歴史学、考古学、博物館学およびその関連分野
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研究機関 | 奈良県立橿原考古学研究所 |
研究代表者 |
河崎 衣美 奈良県立橿原考古学研究所, 企画学芸部資料課, 主任研究員 (60732419)
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研究分担者 |
原 光二郎 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (10325938)
原田 浩 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (60250148)
大西 貴夫 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 課長 (80260371)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2020年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 石造文化財 / 地衣類 / 生物劣化 / 遺伝子解析 / 劣化予測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は地衣類を対象とした文化財保存科学と分子生物学、分類学との融合研究である。文化財保存の立場から、地衣類による石材の化学的劣化の可能性を定量的に把握し、それらの遺伝的系統を探求することによって、将来的に、石造文化財の地衣類による劣化予測に役立てるための手がかりを得る。石材劣化リスクの高い微生物(地衣類)を識別し、その遺伝的系統から劣化の予測を立て、文化財の保存において理想的な保存対策といえる、定着を防ぐという予防のための診断方法提案を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は地衣類を対象とした文化財保存科学と分子生物学、分類学との融合研究である。地衣類は菌類と藻類が共生した生物であり、分類上は菌類に属し、その 特徴は菌類の種が決定している。文化財保存科学の分野において地衣類は、基物への機械的な穿入、代謝産物として有機酸を分泌し石材を変質させること等の劣 化要因として挙げられるが、その影響は文化財の他の劣化要因と比較して認識されにくいものである。地衣類による石材劣化のうち特に認識が困難である化学的 劣化に関わる物質として、シュウ酸カルシウム等のバイオミネラル(生体鉱物)を生成する地衣類種があることが知られており、このシュウ酸塩鉱物は地衣類の 代謝産物であるシュウ酸とカチオン成分との二次的生成物である。そこで本研究では、文化財保存の立場から、地衣体内におけるシュウ酸の含有量とその生成に 関わる遺伝子との関わりを探ることにより、地衣類による石材劣化機構の一端を明らかにする。地衣類による石材の化学的劣化の可能性を定量的に把握し、それ に関わる遺伝的系統を探求することによって、石造文化財の地衣類による劣化の予測とその予防に役立てるための手がかりを得る。当該年度は基礎研究として定めた、岩上生地衣類の有機酸分析方法の検討、文献調査を実施した。加えて昨年度に引き続き,Pertusaria laeviganda 培養地衣菌にシュウ酸関連化合物を添加した場合の遺伝子発現の変動を解析した。その結果,シュウ酸やグリコール酸と比較して,オキサル酢酸の添加が最も遺伝子発現への影響が大きいことより,代謝経路での鍵となっていることが予想された。また,様々な分類群に属する地衣化菌類のゲノムを比較するための一連のデータ解析が実施できるLinux環境を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過年の感染症流行の影響により調整が進行していなかったため、研究グループとしてまとまった調査ができなかったが、初年度に実施した調査から研究者が各自で研究を深めたため。
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今後の研究の推進方策 |
石造文化財における地衣類叢調査を行い、主要な岩上生地衣類の有機酸の含有量を調査し、有機酸の生成に関与する遺伝子の探索として シュウ酸代謝関連酵素遺伝子の特定を試みる。地衣化菌類の比較ゲノム解析を実施し、石材劣化リスクの高い地衣類の識別とその遺伝的系統に関して検討を行う。
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