研究課題/領域番号 |
20K20750
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分6:政治学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡田 勇 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (00650649)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 手続的公正 / 迷惑施設 / 鉱山紛争 / ラテンアメリカ / ペルー / 手続き的公正 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、紛争解決において手続き的公正が果たしうる役割について、途上国の事例から実証的に探索するものである。手続き的公正とは、仮に決定結果がもたらす便益が当事者にとって不利な場合でも、当事者に決定作成プロセスに参加する機会を与えた方が決定結果の正当性が高まると想定する理論である。本研究では、ラテンアメリカにおいて、鉱山開発、汚水処理場、巨大インフラ建設などの迷惑施設(Not In My Back Yard=NIMBY)紛争を対象として、手続き的公正が果たす役割を実証的に問う。具体的には、仮に手続き的公正が改善された場合に不利益の受容度がどの程度異なるかを、サーベイ実験を用いて明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は昨年度に続き、研究課題の遂行が遅れる状況となったが、いくつかの点で大きな進展が得られた。まず、2022年5月に「名古屋大学大学院国際開発研究科における人間を対象とする調査・実験に関する研究倫理内規」を制定し、合わせて研究倫理審査委員会を発足させた。これにより、実験的手法を用いた研究においては特に国際ジャーナルへの投稿の際に必須条件になりつつある研究倫理審査を行う制度的体制が整った。 また、ペルーでのサーベイ実験実施に向けた準備を整えることができた。2022年上半期にはペルー研究者の磯田沙織氏(神田外語大学)とペルーの地方政治家の政治キャリアについての研究を進め、国内外の学会で発表した。またサーベイ実験の調査計画と実験デザインを組み立て、2022年10月に神戸大学のワークショップで、同12月にラテンアメリカ政治研究者の研究会で、2023年3月にはペルーの社会学者や政治学者に対して発表を行い、議論をすることができた。とりわけ2023年3月のペルー現地での出張では、サーベイ実験の理論的アプローチや調査実施手法について具体的かつ集中的な議論を行うことができ、本研究課題の遂行に大きな前進となった。 さらには、サーベイ実施機関との打ち合わせも進めることができた。2023年3月にはペルー・リマにて、IPSOSの担当者と打ち合わせを行ったほか、代替案としてペルー問題研究所(Instituto de Estudios Peruanos)の関係者とも接触した。 このように、研究課題の遂行に遅れは見られ、後述のようにその理由は不可抗力によるところも大きいが、調査実施の準備作業はほぼ完了しており、質問票の最終化、サーベイ実施機関との最終調整、研究倫理審査の実施、サーベイの実施まで残り僅かのプロセスを残すのみとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由はいくつかある。 第1に、研究倫理審査について本務校の制度環境が整っていなかったため、ルール作成、制度設計、研究科内の意見集約と調整、そして委員会の立ち上げと初期対応などに研究代表者自らが率先して取り組まなければならなかったことがある。この制度環境の整備が不足していると、国際ジャーナルへの投稿が難しくなるため、大変な手間がかかるが必須の作業であった。これは上述のとおり、2022年5月頃までにほぼ完了した。 第2に、サーベイ実施環境について情報収集と計画設計に時間がかかったことがある。当初、コロナ禍で対面サーベイがラテンアメリカにおいて可能であるかどうかを精査する必要があったが、2022年5月にIPSOSペルー事務所とコンタクトをとり、実施可能であるとの回答が得られた。そこで見積の取りつけを行ったが、2022年下半期は折からの円安傾向により、当初の見積では予算不足となる気配が濃厚となった。サンプルサイズを減らすことは分析能力に支障を来すため、為替動向を注視しながら最適な調査実施のタイミングを見極める必要があった。それと並行して、対面サーベイの実施に向けた理論的・方法論的な検討を進めた。 第3に、2022年12月にペルーで政変があり、大統領が罷免されたのち、国内各地で大規模な抗議が数か月にわたって継続したことがある。これは全く予期しなかった事態であり、サーベイ内容が政治的な問いに関するものであることから、サーベイ実施のタイミングを改めて注視する必要が生じた。その後、2023年3月にペルー現地に渡航し、現地状況の確認、有識者との意見交換、サーベイ実施機関との調整を行った。結果、2023年中の調査は十分可能であるとの認識に至ったが、当初予定していた年度内の調査実施は困難となった。
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今後の研究の推進方策 |
既にサーベイ実験の実施に向けた準備は大詰めを迎えており、理論・方法論・サーベイ実施についての検討はほぼ終わっている。そのため、2023年度に持ち越しとはなったが、不測の極端な事態が起きない限りは、2023年度中に調査を終え、論文も執筆可能となる予定である。すでに調査企画との調整は進行中であり、複数の研究者からサーベイーの実施内容について意見聴取を終えている。そのため、準備状況はほぼ確実な体制に至っている。 今後の計画としては、2023年4月中に調査実施機関と契約を結び、5-7月にかけて研究倫理審査を行う。その後2023年8月に現地渡航し、サーベイ実験のパイロット調査を複数回行ったうえで、本調査を実施する。10月以降に論文執筆を行い、2023年12月~2024年1月には国際ジャーナルに投稿する予定である。
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