研究課題/領域番号 |
20K20762
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大沼 あゆみ 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (60203874)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2021年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 下級財 / 自然資源 / 発展途上国 / グリーンインフラ / 効用関数 / 自然資源利用 / 国立公園 / ギッフェン財 |
研究開始時の研究の概要 |
下級財は多くの種類の財・サービスに見られるきわめて日常的な存在である。しかしながら、下級財に関連する経済理論的研究はきわめて少ないものであった。それは下級財の重要性が低いと考えられているからではなく、むしろ分析を行うための利用可能な理論ツールが存在しなかったためであると考えられる。本研究では、所得が減少すると需要が増加する「下級財」を導出する効用関数を構築する。また、下級財が関わる可能性の大きい環境問題を取り上げ、構築した効用関数をもとに分析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では、下級財モデルの適用として自然資源利用を考えている。この自然資源利用の研究として、自然資源(生物多様性)保護を司る国立公園の管理について研究を行った。この研究では、2つの異なる経営スタイル(すなわち、非営利機関と営利機関)の下で管理されている国立公園において、地域住民を観光事業に参加させることが、野生生物の保全にどの程度影響するかを調査するために、生物経済モデルを開発した。一般に、国立公園は非営利機関であるが、南アフリカなどでは、土地所有者による観光事業も行われている。すなわち、後者においては営利機関であると考えられる。 このモデルにおいては、地域住民は国立公園の観光事業に従事する一方で、農業生産活動とのトレードオフを持つ。地域住民は、国立公園との労働の需給関係において決まる賃金率にもとづき、国立公園事業に参加を自発的に決定する。また、野生生物は、正または負の影響を農業活動に与えるものとする。分析の結果、野生生物の保護が農業生産性を低下させない場合、非営利機関は営利機関よりも地元住民の効用を高め、野生生物の保護を促進することを証明した。一方、野生生物の保護が農業生産性を低下させる場合、非営利機関は営利機関と比較して、必ずしも地元民の効用を高めず、保全も改善しないことも示された。両者における均衡を社会的最適の観点から比較し、両者が一般に社会最適を達成しないことが示された。この研究は共同論文として英文国際誌に公刊された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論研究では、自然資源に関する論文を公刊することができた。下級財の基本モデルと論文はほぼ完成しており、投稿準備中である。実証研究面では、コロナ禍で長らく海外を訪れることができなかったが、ようやくマレーシアでの調査を実際に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
下級財についての理論研究を投稿し、公刊する予定である。この研究は、純粋理論研究であるが、マレーシアの事例を盛り込む形で、より下級財と自然資源の関係を表すことを計画している。
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