研究課題/領域番号 |
20K20766
|
研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
石川 竜一郎 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (80345454)
|
研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
6,240千円 (直接経費: 4,800千円、間接経費: 1,440千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
|
キーワード | 帰納的推論 / ムカデゲーム / 交渉 / 高次予測 / 戦略的不確実性 / 経験 / 経験財 / 選好形成 / 推薦システム / 資産価格取引実験 / 量的緩和政策 / ベイジアン自白剤 / NPS / 推奨意向 / 帰納的学習 / 集合知 / メカニズムデザイン |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、経済主体が保有する私的情報や知識を集約し体系化するメカニズムを「集合知メカニズム」と呼び、そのメカニズムを適切に機能させるための理論分析を行う。さらに被験者実験と計算機シミュレーションを用いてメカニズムの検証を重ね、実用化のための問題点を抽出する。理論分析においては、「帰納的学習理論」を用い、経済主体の「限定合理性」に起因する認識の変化や誤謬の形成を考慮し、集合知メカニズムが収集する情報の健全性を検証する。その上で、メカニズムがどのような情報を社会に提示するべきかという問題を「情報設計問題」として定式化し分析する。
|
研究実績の概要 |
本年度は、有限期間の動的ゲームにおける、後ろ向き帰納法に焦点を当てた分析を行った。そのために、(1) 帰納的推論に基づく後向き帰納法の理論構築、(2)後向き帰納法を用いた交渉問題、(3)後向き帰納法を用いた高次推論について考察した。 (1)については、ムカデゲームのパラドックスの解決を試みることで、新しい理論を構築した。後向き帰納法では(P1)完全なペイオフの比較可能性、(P2)過去忘却、(P3)数学的帰納法という3つの基礎的仮定に分類し、(P1)(P2)を弱め、認知能力の限界により利得が完全に比較できないことを許容し、慣性的行動という概念を導入することで、比較不可能な利得に直面した場合の慣性的な行動を描写した。これにより、主体の認知能力が低い場合に、ムカデゲームのパラドックスでいわれる、後向き帰納法によって導出される理論的行動指針の乖離が生じないことを示した。 (2)については、交渉能力が異なる主体間のナッシュ交渉問題を、ベルトラン価格競争と同時的に扱うことで、交渉と競争の異なる二つの価格形成メカニズムの比較を統一モデルで分析した。そこでは、価格交渉能力の変化が、価格競争に影響することで、かならずしも交渉能力が高いことが企業の利潤を増やすことにつながらないことを示した。 (3)については、資産市場取引実験による実験により検証を行った。資産取引実験では、取引終了期から後向き帰納法を用いた現在価格の予測を行うとされているが、本実験では被験者から将来の価格に関する長期的な信念を引き出し、それを公的情報として提示することで、信念情報の共通認識化を図った。結果、被験者の信念が、市場予測の中央値に向かって調整する強い傾向があることを示した。また、将来の時間軸全体に対する価格予測の中央値を共通認識とすることで、ミスプライシングが解消されることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験を行うためのフィールドのデータ収集が一部困難な状況があったため、フィールドにおける経済実験及びそのシミュレーション分析に遅れが生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
不完備情報ゲームにおける他者の戦略的行動の高次予測に関する実験をさらに進め、個々人のリスク態度との関係を追究する。特にこれらの予測においては、過去の高次予測と実現値との乖離の情報をもとに、どのようにその予測を改訂し、正しい予測ができるように修正できるかの定式化を行い、行動モデルを構築する。そのモデルのパラメータ推定を行うことで、個人の認識能力を定量的に表し、 個人間の比較を可能にする。
|