研究課題/領域番号 |
20K20771
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研究種目 |
挑戦的研究(萌芽)
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
中区分7:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
野村 友和 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (30507207)
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研究分担者 |
森 大輔 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(法), 准教授 (40436499)
武田 芳樹 山梨学院大学, 法学部, 教授 (00546327)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
5,720千円 (直接経費: 4,400千円、間接経費: 1,320千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 内部告発 / サーベイ実験 / 公務員 / 汚職 / 不正 / 犯罪 / 警察 / パネル・データ / 実験 / 立法事実 / EBPM |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は,公職に就くものの犯罪や不正行為の発生要因を分析し,犯罪抑止のための政策や法制度について提言を行うことである。日本ではこれまで犯罪についてエビデンス(科学的根拠)にもとづいた分析や検証が十分に行われてこなかった。本研究では,統計データを用いた分析と,犯罪や不正が行われる可能性がある状況を再現して被験者の行動を分析する経済ゲーム実験とを補完的に用いることで,犯罪の発生要因や犯罪を抑止するための政策や制度の効果を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は,おもに昨年度に実施したサーベイ実験の結果についての検討と論文の執筆を行った。この研究では,インターネットモニタ調査を利用して,公務員と会社員を対象に,職場において不正や犯罪を目撃した際に内部告発を行う意思があるかどうかを調査した。その際に,質問文にいくつかのバリエーションを設けることで,内部告発行動に影響を与える要因を探るサーベイ実験を行った。実験の結果,公務員は会社員よりも不正を告発すると答える人の割合が大きいことや,軽微な不正よりも深刻な不正の方が内部告発を行うと答える人の割合が大きいことが明らかとなった。また,多くの人は不正を目撃した当初は告発を行う意思をもっていても,同僚や上司などから告発を思いとどまるよう忠告された場合には,告発することをやめる可能性があることがわかった。さらに,内部告発を行わないと回答した被験者に対しては,公益通報者保護もしくは公務員の告発義務についての情報のいずれか一方を示して,それでも内部告発を行わないかを質問したところ,公益通報者保護よりも告発義務についての情報を示した方が,内部告発の意思を示す人の割合が大きかった。 研究結果は,「公務員の不正と内部告発-サーベイ実験によるアプローチ-」と題した論文にまとめ,10月に行われた「法と経済学会2023年度全国大会」で報告した。その後,内容を拡張して英文で執筆し,海外の査読付きジャーナルに投稿した。現在は査読中である。 また,昨年度に投稿した論文 "Policing, Labor Market, and Crime in Japan: Evidence from Prefectural Panel Data"は査読付き英文雑誌Asian Journal of Criminologyに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究計画では,実験室実験を計画していたが,新型コロナウィルス感染症の影響により,代替的にサーベイ実験を行うことになった。研究計画が遅れているのは,実験室実験からサーベイ実験を中心とした研究手法をとることに変更したことによる部分が大きい。とくに,サーベイ実験は費用が高額なこともあり,実験室実験をサーベイ実験に置き換える際にどのようなメリット・デメリットがあるかを慎重に検討してきたことが影響している。 また,これまでのところ海外の査読付き英文雑誌に2本の論文を投稿したが,査読の期間が想定していた以上に長くなり,また査読後の改訂にも時間をとられたことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,すでに実施したサーベイ実験についての論文を,5月に日本経済政策学会全国大会 (熊本学園大学),7月にAsian Law and Economics Association Annual Conference 2024 (台湾 成功大学)で報告する予定である。 職場における相互のモニタリングは,公職者の不正や犯罪を白日の下にさらす上でも,それらを未然に防ぐ上でも有効であり,内部告発が行われやすい環境を整備することが重要である。しかし,日本における内部通報者保護法はあまり知られておらず,また内部通報者がこの法律による保護を受けるための要件は必要以上に厳しいといえる。とくに保護される通報対象事実が犯罪行為に限定されていることや,組織の外部に通報する際の方が保護を受けるために通報者に課される要件が厳しくなることは,不正や犯罪を通報することのリスクを高める。このように善意からの通報が保護されない可能性があることは,内部通報を抑制していると考えられる。これまでの研究ではこうした制度上の要因について検討が不十分であった。今年度は,公益通報者保護に関する上述のような問題がどの程度内部告発を抑制しているかを明らかにすることを目的としたい。 上記の目的のために,新たなサーベイ実験を実施する。次年度は研究計画の最終年度となるため,これまでの研究成果を活用しながら,公職者の不正や犯罪について,より包括的な知見や,政策提言を行うことができるようサーベイ実験の計画を進めていきたい。
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